壊れた世界1-4
「ふう……」
そしてものの数分も経たないうちに、非常階段の下までたどり着ける。
そこで「ふう」と一息ついて呼吸を整えてから、俺は非常階段の上の方を見上げた。
視界に入る空は、すっかり真っ暗闇になっている。
典型的な緑のペンキ色に塗りたくられた階段を、まじまじと見つめる。
…………
上の方までは見えないが、とりあえず下の方には半ゾンビはいないみたいだった。
でも、肝心の上の方は……? もしまた道をふさぐように大量の半ゾンビがいたら、俺は……
「……考えても、仕方ないか」
それに、半ゾンビがいたとしても死角の多い校舎内で出合い頭に襲われるよりはマシだろう。
そう考えて俺は鉄製の非常階段の一段目に足をかけた。
カンッ、カンッ、カンッ、と、一段上るごとに鉄製の階段が金属音をあげる。
半ゾンビがそれを聞きつけて非常階段に群がってくるんじゃないかビクビクしながら、なお上に進む。
しかし、ちょうど三階にたどり着いた時だった。
はあ、はあ、と肩で息をしながら上を見ると、よりによって三階と四階の間に二人の半ゾンビがいたのだ。
「うう……」
女生徒だ。
髪の長い女生徒と、短い女生徒。
髪の長い方は無傷にもかかわらず、短い方の女生徒には顔と腕に傷があって血が流れ出ている。……おそらく、髪の長い方はもともとの感染者(?)で、短い方はそれに襲われてしまったのだろう。
だが今考えるべきはそこじゃない……
どうする……?
ここまで来て、引き返すか、それとも突破するか。
……いや、引き返す選択肢は実質ないか。
だとしても、どうやって突破する?
「ううぅ……ああ」
女生徒の細い身体に目線が行く。
おと……せるか?
例えば思い切り走って体当たりして、そのまま階段の外へと――
「でもそれは……」
――人殺し。
仮に相手が正気を失い、無差別に人を襲うゾンビのようなものだとしても、それを殺してしまえば俺がその人を殺したことになるんじゃないか……?
増してや彼ら半ゾンビは眼こそ赤くなって正気は失っているものの、身体に外傷がないケースが多い。わかりやすく顔が腐っていたり、内臓が飛び出たりしていれば言い訳もつくが、現段階では彼女たちが本当に死んでいると、自信をもって断言できない。
もちろん襲われれば抵抗はするし、場合によっては結果的に殺してしまうこともあるだろうが、けれど自分からいくのは……
「があぁああ!!」
――などと、迷っていたのが、油断だった。
俺がぼうっと突っ立っている間に、なんと髪の長い方が俺めがけてダイブするかのごとく飛び掛かってきたのだった。
「うあっ!!」
俺はとっさに横にとびのいて彼女をよける。
そのおかげで彼女は「ぐあっ!」と鉄柵に向かってダイブすることになり、上半身から鉄柵にぶつかった彼女は「うぐぅ……うう」と悶絶し、気絶した。
――迷ってる暇は、ない。
俺は、気絶して鉄柵に横たわる長い髪の女生徒を避けて通ると、サッと階段を上って短い髪の女生徒の手を掴んだ。そのままぐいっと身体を入れ替えるようにして女生徒を下に投げ飛ばす。「ぐっ……あッ……」と、彼女は階段に何度か打ち付けられながら、長い髪の女生徒の近くに転がった。……死んではいないだろう。
俺は顔の向きを元に戻すと、急いで四階に向かった。
なんでもいいので、感想をもらえるとうれしいです




