散り桜 #2
【 1 僕の姿(続き) 】
空から舞う桜に覚えた違和感。
それは、2013年にオーストラリアから始まった奇妙な現象。いや、事件だ。
13年の事件は、僕が警察のおじさんと親交をもつ前であったが、この事件の続きとされている2018年で起きた同様の事件への解決に僕は携わったことがある。
因みに、”事件の続き”と表現したが、言葉の通り、同じような現象を引き起こした事件は1度だけではない。
2013年 夏 オーストラリア
2014年 秋 シンガポール
2015年 冬 デンマーク
2016年 夏 フィジー
2017年 秋 ドイツ
2018年 冬 ハイチ
そして、2019 夏 日本。この夜、起きた。
僕は、新潟へ飛ぶ飛行機をキャンセルし、タクシーを拾った。空港を後にして捜査本部が置かれている警視庁へ向かった。
今回、桜が舞っていたのは羽田上空ではなく、銀座、お台場、品川の3ヶ所であったらしい。そのため、まだ僕は実際にその状況を目にできていないため、急がなくては…と思いながらも霞ヶ関に行く前に、お台場に寄り道をした。
交通規制がかかり、どんな様子なんだ…と、興味を示す野次馬も多くタクシーでは現場付近まで寄ることはできなかったが、辺り一帯がピンクで染まっていることが遠目でも確認することができた。
…これまで通りでいくと、桜が舞った街のどこかで人が死んでいるはずだ。
そう、これまで世界6ヶ所で起きている同様の事件。どの街でも、死者が発見されている。そして、どの死者も桜に覆い被されていた。
「遅れてすいません。実際に現場を確認したく、ちょっと近くまで行っていました。」
僕は、警視庁の中に臨時に置かれた捜査本部に着き、おじさんに挨拶をした。
「やあ、実家へ向かおうとしていたっていうのに申し訳ないね。いや、それにしても、すごいよ。君の推測の通りに、2019年、夏、日本、東京で起きたね。」
「そうですね。でもまだ夏も半ばで、僕の予想では9月末、夏の終わりに起きると考えていたんですけどね。」
そう。僕は、連続して起こる奇妙な事件は、今年の夏に日本の首都 東京 で起こると解っていた。しかし、2013年・2016年に夏で起きた事件はどちらも9月の終わりに起きていたため、その事実通り起こるであろうと安易に考えてしまったために、本件では夏のどのタイミングで起きるか…というポイントについては誤った予測を立ててしまっていた。
ん?じゃあ、僕がなんで、「2019年」「夏」「日本」「東京」。ここまで絞れたかって?
それは、去年の冬におじさんにも聞かれたよ。
(続く)