世界の原理
序章
きっと誰もが思い浮かべたことがあるだろう。
この世界はどうなっているのか。人の生きる意味は何なのか。何も無いところからどうやってビックバンが起きたのか…。
時は2092年。世界はAIが特権を握り人々の存在価値も薄れかけていた。子供たちに対して義務教育を高校までとして、そこからは遊んでもよし、働いてもよし。なんて自由な世界になってしまったものだ。
もちろん働くと言ってもそれなりの対価は払われる。労働者に対してはサービス利用に置いて待遇が与えられる。これによって一定の労働者を保ちつつ、世界は上手く回っている。
「おはよー。」
髪の白い男子高校生が1人校門の前に現れた。挨拶した先には同じく5人の男子高校生が集まっていた。
「カイト。遅刻だぞ。何分待たせれば気が済むんだ。」
そう言ったのは茶髪の少年グランだった。今回の集合の企画者であるカイトが遅れたことに悪戯な柄にご立腹の様子であった。
「それで今回は何するんだ。」
「この前話してたあれを試そうと思う。」
その発言によって一瞬その場の雰囲気が凍りついた。
「あんな日記帳信じるのかよ。くだらない。」
日記帳というのは、今から約2週間前にたまたま学校の植林場で見つけたいかにもボロそうで書き主がブラウスと言うことだけが分かっているノートである。
ブラウスと言えば、我々はAIについて間違った認識をしていただとかなんとかで最近「AI撤廃論」を唱えて世間を騒がせていた科学者である。
しかも、その人物がつい先日行方不明となり、ネットでは様々な考察がなされ、それについての本も出るほど世間を2度も騒がしていた。
とは言っても、そんな本人が学校を訪れる訳もなく、ましてや日記帳を落とすなんてこともあるはずがないために偽物または悪戯であるということが少年たちの中で結論となっていた。
「とはいえ、書いてあれば気になるだろ?ジェイ。」
面倒くさそうにしていたジェイの顔には本当は少しワクワクすると言ったような感情が感じられた。
意味もないものを追求するのが少年心というものなのであろう。
その日記帳には以下のように記されていた。
"AIは監視する。人たるものの言動を。違ってはならない趣旨はあくまで使者である。全ては来吉高校の植林場を覗き、中心にある像を正面から-180、背面から+45にレバーのごとく回転させるとき全てのゲームは始まる。"
「ってことで、植林場に行くぞ!」
「とは言っても今日学校休みだろ。」
今日は土曜日。学校は休日であり、校門は閉まっている。
「これ飛び越えて侵入するに決まってるだろ。」
勿論見つかれば、反省文行きにはなるだろうが正直彼らの目にはそんなこと気にしてないように見えた。
あれから約10分、難なく門を飛び越えて小走りで植林場へと到着した。円形の植林場の門を開いて足を踏み入れた。
「思ったけどよ、中心に像なんてあったか?」
植林場は円形の形になっており、その形にそって木が植えてある。
「クロウはどう思う?」
カイトが尋ねると続いてこう答えた。
「とりあえず、中心にあるのはひとつの木だけだから、その周辺を探すか。」
約10分の間、6人相勢で探し回った。地面には感圧版やスイッチがないか探してみたり、木を捻じろうとしてみたり…。だけれども、見つけることは出来なかった。
「やっぱりあれは嘘だったんだよ。」
誰もが無駄足だと感じ、帰ることとなった。
「カイト。この無駄足と労力分は飯おごりだぞ。」
そうグランが言うと他も同調して奢りを要求してきた。正直そんなものないなんてことはみんな知っていた。どちらかと言うとなかった時の奢り目当てのことが多い。
「いつものゲームで俺が負けたら全員奢ったる。」
そんなこんなで植林場を出ようとした時、中心の木にひとつの人影がまだあった。
「みんな。これおかしくないか?」
ルビンがそう叫んだ。中心にある木の元を眺め、植えてある土を少し掘り出した。
「何してるんだ?」
誰もがそう思い、近くに駆けて言った。
「これ見ろよ。」
その木を指さすと皆が異変に気づき始めた。他の木を見てみると根が露出して生えているのに対して、この木は露出してないどころか、どれだけ掘っても根の欠片も見えなかった。
「この木に何かあるぞ。」
そう言って日記にカイトは目をやった。"レバーのごとく"という単語に目がいく。
もしかしてと思い、皆に指示をして木を前方に押してみた。
すると、30度程ではあるが木が軽く傾いた。皆の目が過ごし光った。もしかしたらに賭けてみたくなった。
「たぶん-は左回りだろう。それから右に回す。」
予想通り。木は重かったがなんとか回り指示通り回し終えた時、植林場の門が急にしまった。ガラスの天井を見あげてみると空の色が一瞬して明るくなったり暗くなったりしている。
「おい!どうなってるんだ。」
冷気が植林場に走り、その中でも特にソラは震えが止まらなくなった。元々怖がりでお化け屋敷など入れない人間であった。
カイトはソラのそばに行き軽く抱きしめて、声をかけた。
「ソラ大丈夫だ。俺がいる。他のみんなも大丈夫か。」
なんとか皆正気を保っているが、時間が経つにつれて、植林場ないの電球が点滅し始め、木々が揺れ始め、しまいには地面までもが揺れ始めた。
「とりあえずみんなで円になろう。」
1箇所にみんなで集まり、お互いが肩を組み、この異常な状況に屈しないという姿勢でたたずんだ。
その次の瞬間、ルビンが大きな声で叫び始めた。
「グレイ!どうした。起きろ。」
ルビンとジェイと肩を組んでいたグレイが手を離したと思ったらそのまま地面に倒れた。続いてジェイ、クロウ、ルビン、ソラ。
「みんな起きてくれ。一体何…」
最後にはカイトまでも倒れてしまった。誰もビクともせず、冷気が増し、風も吹き始め、遂に植林場内の電球は全て切れ、天井のガラスにはヒビがはえた。
「やっとこの時が来たか。今年の干渉波が私の屋敷に来るということは…」
奇妙な仮面をした黒装束の男が薄気味悪い笑いをしている男に、後方から大きな声で
「上物っすよ。都市に流れずに屋敷単体に飛ぶってことは調理しがいのあるペット達です。」
「はァァァ。楽しみだなぁ。研いでおいた方がいいよなあ。」
薄気味悪い笑いをした男はそう言うと、卓上の上にある巨大な豚肉を鋭いナイフで一刺しした。そのナイフは机を貫通し、えげつない音を引き立てた。




