第八話 魔術師の思惑
今回はノイリー視点です。
目を覚ますと目の前に大きな鍋をかき混ぜる大きなドラゴンの背中が見えました。確かエルメアとミノタウロスの群れの討伐に来て、土砂に巻き込まれて・・・。気がついたらこの状況でした。軽くパニックになった私は、隣で気持ち良さそうに眠っているエルメアを叩き起こして状況を説明しました。きっとあのドラゴンは私たちをおいしくいただくつもりです。わたしはおいしいものを食べるのは好きですが食べられるのはごめんです。何とか逃げなければ。
そう考えているとドラゴンがこちらを向きました。鋭い黄金の瞳がこちらに視線を向けます。その瞬間に死を悟りました。短い人生でした、もっとおいしいものをたくさん食べたかった…。私が最後の言葉を綴っているとドラゴンが食べ物の入った器を差し出してきました。まさかあの鍋のものでしょうか。とても良い匂いがしています。最後の晩餐にはいささか地味なようですがいただくことにしましょう。
なんですかこの料理は!!こんなにおいしいスープは食べたことがありません!!思わず4杯もお代わりをしてしまいました。こんなにおいしい料理を振る舞ってくれるなんてきっと良いドラゴンに違いありません。そうに決まっています。
名残惜しくもドラゴンの元から帰路に着きました。渡されたリュックの中に入っていたサンドウィッチも絶品でした。エルメアがまた会いに行くと言っていたので、その時は私もご同伴にあずかりましょう。あわよくばまたおいしいご飯をごちそうしていただければ良いのですが。
どうやら領主様の話によると最近魔物の行動がおかしいみたいです。クロが原因ではと思ったのですが、どうやらエルメアも同じ考えみたいです。そして私は素晴らしい考えを思いつきました。クロを仲間に迎え入れればいいのです。そうすれば毎日あのおいしいご飯が食べられます。
次はどんな料理を食べられるのでしょう、今から楽しみです。
クロの作ったサンドウィッチ
野菜と燻製肉が挟まれたもの。パンはふわふわで肉は程良い塩加減で、ピリ辛のソースがかかっておりノイリー曰く最高の一品。