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勇者パーティーの料理番  作者: ゴン太
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第三十七話 組合長


組合長と呼ばれた男は私に鋭い視線を向けていた。名前の通りならば冒険者組合のお偉いさんと言ったところだろうか。


「こちらは?」

「クロさんだよ、さっき街中で会ってお仲間さんとはぐれたみたいだから探してあげようと思って」

『クロだ』

「探してると言う割には楽しそうに飯を食ってるだけに見えるが」

「探してる相手が〈勇者〉だからね。下手に探し回るよりも待ってる方が早そうだから」

「!! なるほど・・・〈勇者〉の」


そう言って黙りこんだ男は少しして私に話しかけてきた。


「自己紹介がまだだったな、私は冒険者組合の組合長だ。よろしくな」


そう男が自己紹介をすると静かに私たちのやり取りを見守っていた者たちが少しざわつき始めた。おそらく組織のトップが居ることが珍しいのだろう。


「探してるのが〈勇者〉ということなら話は早い。良ければこちらでも探そうか?」

『いいのか?』

「ああ、レインの知り合いでもあるし、顔を売っておいて損は無いからな」

『そうか、ではよろしく頼む』

「待ってる間よければ部屋を貸せるが」

「いやだよ、かたっ苦しい部屋に押し込められるなんて」


そう言って新しく飲み物を追加したレインに苦笑いを浮かべ、こちらを一瞬見据えた組合長はそのまま職員たちの方に向かっていった。最初は少し歓迎されていないような雰囲気だったがどうやら考えすぎだったようだ。とても親切にしてもらったな、もし可能ならば礼でもできればいいのだが。


「そういえばクロさん冒険者登録はしないの?」

『うむ、身分証明書はもう作ったからな』

「そうじゃなくて、冒険者登録してたら組合が関わってる店だったら割引がきいたり受付で色々情報がもらえたり便利だよ?」


なるほど、冒険者組合はどうやら手広くやっているようだ。話を聞いているとどうやら食材を売っている店もあるらしく少し惹かれる。登録するのも悪くないな、そう思っているとどなり声が室内に響き渡った。


「レイン・エクスポーズ!!俺様と勝負をしろ!!」


辺りが一瞬で静まり返り、声をあげた男はしたり顔でこちらへ近づいてくる。


「俺様と勝負をしろ、レイン・エクスポーズ。てめえみたいな女が最上位冒険者なんて何かの間違いだ。俺様が化けの皮を剥いでやるぜ」

「あっそ」


そう言って冷たく言い放ったレイン。どうやら知り合いではなさそうだ。すると男は机を蹴り上げた。


「何だ何だ?ビビってんのか?最上位冒険者様がよう!!」


蹴り上げられた机の上には料理や飲み物が乗っていた。食べていたホルスタウロスの肉とマッシュポテトは地べたに無残にもぶちまけられた。一瞬何が起きたのか分からなかった。今まで料理を作り人に振る舞い食べてきた。カレンと初めて料理を作り始めた時はうまくいかず、失敗の連続だった。まずい料理もたくさん作った。それでも無駄にすることは無かった。たとえどれだけ不味かろうとすべて平らげた。


「食べるからには責任を持たないとな」


カレンとそう言いながら無駄にすることはなかった。それからもエルメア達と旅を始めてからも誰ひとり決して残したり捨てたりしたことは無かった。だから初めてだったのだ、目の前で作られた料理が無駄にされるのは。


ああ、いつ振りだろうか、これだけ怒りを覚えたのは。


数千年前国が一つ滅びるという出来事が一匹の黒龍によってもたらされた。狂ったように咆哮を上げながら暴れまわる黒龍になすすべもなく一晩で滅び、跡には何も残らなかったという。

--国の歴史 第六章 国の最後 第三節 外的要因により滅びた国--より抜粋

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