第三十五話 再会
『あの時の少女か』
「やっぱり!!まさかとは思ったけどあの時のドラゴンさんだね」
『そうだ、しかしよく分かったな』
「特徴的な気配だからすぐ分かったよ。前も言ったけどこう見えて腕利きだからね」
そう言って笑いかけてくる少女を目の前に、気配は殺しているのだがと疑問に思いつつ知り合いに会えたことによる安心により、その疑問はすぐに忘れる。
「人の姿にもなれたんだ、びっくりしたよ」
『最近覚えてな』
「せっかくだからお茶でも飲みながら話そうよ、なんだか困ってるようだし」
その言葉のまま店に連れて行かれ、お茶を飲みながら少女に事情を話した。出てきたお茶は飲んだことが無い種類で少し苦みが強く、それに合わせて出てきた茶菓子は正直甘すぎるものだったが二つを一緒にすると不思議なことに丁度良く味が広がって行く。普段は一つの料理を一つの形に完成させるように作っている私からすれば、その手があったかと思わせられる驚きの組み合わせであった。
そんなことを考えながら話していると目の前の少女に笑われてしまった。
「いや、ごめんごめん。まさか迷子だとは思わなくて。しかもはしゃぎすぎてだなんて」
『・・・むう』
不満を顔に出しながら、しかし少女の言うことに言い返すことができず思わずうなり声を上げる。ひとしきり笑った後に少女は未だ不満げな顔をする私に話しかけてきた。
「もしよかったら一緒に探そうか?街の地理も詳しくないんでしょう?」
『そうしてもらえると助かるが、いいのか?』
「今日は特にやることもないし暇してたから丁度良いよ」
『そうか、助かる』
「いえいえ、それじゃあさっそく探しに行こうか」
そう言って立ち上がろうとした少女はふとこちらに目を合わせハッとした表情を浮かべる。
「そういえばまだ名前言ってなかったね。私はレイン・エクスポーズだよ」
『そうか、私はクロだ。よろしく頼む』
「こちらこそよろしく、クロさん」
少し遅くなった自己紹介を終えた私たちは、店を出て歩き始めた。探している者、エルメア達の名前を出すと、レインは納得した様な顔を浮かべた。
「なるほど〈勇者〉が、クロさんみたいなドラゴンと一緒に旅をしている人ってどんな人かと思っていたけど納得いったよ」
『有名なのか?』
「そりゃそうだよ、〈勇者〉と言ったらみんなの憧れだから。というか探してるのが勇者だったら下手に動き回るよりじっとしてた方がすぐに見つかりそうだね」
そう言ってにやりと笑みを浮かべたレインに連れられて私は周りに比べて少し大きな建物に入った。
「ようこそ、冒険者本部に」
その言葉は喧騒に包まれていた建物の中に響いた。




