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勇者パーティーの料理番  作者: ゴン太
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第三十三話 侍女の遭遇

今回は侍女視点です。


本日は私がヘレン様の身の回りのお世話をする当番だ。基本的に一日付きっきりになるのは一人だけで、それ以外は食事やお着替え、入浴の時にお手伝いをする。それ以外の時間は他の業務を行っている。ヘレン様は少し行動的なところがあるが、公務をきちんとこなすしっかりとしたお方である。そんなお方の身の回りのお世話をさせていただくのは大変光栄なことだ。


そうしてお傍に控えていると勇者様がお見えになられた。ヘレン様に頼まれ、勇者様たちのお茶の用意をしているとヘレン様とともにお部屋にお見えになった。長くのばされた茶色い髪は一つに束ねられ、青く透き通った大きな瞳がこちらに向けられ吸い込まれそうになる。見た目はかわいらしい少女だが、彼女が纏う凛とした空気はまさしく勇者と呼ばれるものであろう。


そんな彼女の後ろからもう一人部屋へと入ってきた。浅黒い肌、くすんだ銀髪、鋭い金色の瞳を携えた整った顔立ちの青年だ。私自身勇者様のパーティーの方々とは一通り面識があるが、あの青年は初めて見る。誰だろうと話を聞いているとなんと〈料理番〉クロ様であると判明した。目の前の青年がなんとあの正体不明のクロ様であるとは驚きだった。噂では色々な憶測が飛び交っていたが、実物はイケメンだったのだ。


そんなクロ様にヘレン様は料理を御所望された。勇者様がハンバーガーを御所望された時はさすがにヘレン様に手で食べさせるのはまずいと思い頭を悩ませた。そんなこと許容してしまったら後で絶対に侍女長の雷が私に落ちるだろう。後でナイフとフォークを取りに行こうと決断した。


私もあの噂の絶品が食べられないかなーと思いつつ調理場に向かうと小さくて使えないとおっしゃられた。城の調理場は控えめに言ってもとても広い。それこそ街中にある酒場などに比べても何倍、下手をすると何十倍もの大きさである。普段どのような場所で料理をされているのだろうと疑問を抱いていると中庭で作られることになった。そして中庭に着くと目の前に巨大なドラゴンが現れて私は意識を失った。




・・・はっ!!目を覚ますと私は中庭で倒れていた。一緒に護衛に着いていたレーブン君に起こされて、彼があのドラゴンの説明をしてくれた。なんとあのドラゴンが〈料理番〉クロ様の本来の姿なのだそうだ。私の中での〈料理番〉クロ様イケメン説の立証が早くも崩れ去った瞬間だった。


料理が完成したようでクロ様がテーブルに並べ、私はそっとヘレン様にフォークとナイフを渡すことに成功した。それを使いおいしそうに食べる様子にホッとすると同時にうらやましく思う。するとクロ様が近付いてきて、なんと私にハンバーガーを渡してくれたのだ。正直ドラゴンに料理を渡されるというシチュエーションに固まってしまったが、目の前から漂ってくる食欲を誘う香りに我に返り、受け取って口にする。その瞬間に思わず目を見開く。こんなにおいしく、上品なハンバーガーは食べたことが無い。隣のレーブン君もおいしそうに頬張っている。


またたく間に食べ終え、余韻に浸りつつお茶を淹れているとクロ様と目があった。


「とてもおいしかったです!!」

『そうか、それは良かった』


黒い鱗におおわれ金色に光る鋭い瞳が、優しく微笑んだように見えた。




その夜、職務が終わるとどこからか私がヘレン様のお世話の途中で気絶してしまった事が侍女長にばれてしまい、こっぴどく叱られた。だが言い訳をさせてほしい。ただの侍女の前にドラゴンが現れたら気絶もするだろう。しかしそんな言い訳は通用せず、一時間こってりと叱られるのであった。


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