第三十二話 ハンバーガー
名残惜しいが調理場より中庭に移った私は早速調理を始めるために元の姿に戻った。さっそくブレスで火をおこし、バターを落とした鍋にみじん切りのタマネギを飴色になるまで炒め、それにコカトリス、ミノタウロス、オークのミンチ、ミルク、パンを細かくちぎったものを混ぜ合わせて、塩、コショウ、ニンニクで味付けを行う。
前回ハンバーグを作った時よりも薄く形を整えて、焼き上げていく。その間に丸く焼いたパンを風呂敷より取り出して、上下二つになるように切り、そこへ焼きあがったハンバーグを乗せて薄く切ったトマトとちぎったレタス、特製のトマトソースを塗って完成だ。
「うわー、良い匂いだね」
「素敵な色合いですわね」
「おいしそうですね」
出来上がったハンバーガーを中庭にセッティングされたテーブルに運ぶとそこには待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな顔をしたエルメア達が椅子に座っていた。なんとなく気配で分かってはいたのだが、ちゃっかりとノイリーも座っていた。
「おいしい!!」
「食べたことのない組み合わせですわ。すごく美味しいです」
「おいしいです!!おいしいです!!」
エルメアはハンバーガーをおいしそうに頬張りながら、ヘレンは侍女より渡されたフォークとナイフで切り分けて口に運び、ノイリーは一心不乱に食べ続けながらそれぞれが感想を口にする。側に控えている侍女と護衛の騎士にもハンバーガーを渡す。最初は困惑した様子だったが食べ始めたとたんに目を見開き皆おいしそうに食べ始めた。私もそれを横目に食べ始める。ふんわりと焼き上げたパンにジューシーな肉が合わさり、トマトソースの甘みと酸味が肉の味を引き立てレタスとトマトが後味をさっぱりとまとめる。
「おいしかった、私これ大好きなんだよね」
「クロ様の作るお料理はおいしいですわね」
「ふー、満足です」
『そうか、それは良かった』
全員が満足そうに食後の余韻に浸り、話をしていると身分証が出来上がったようで、ヘレンより渡された。
「王族より発行された特別な身分証になりますので、ほとんどの場所で有効ですわ。もちろん王城にも出入りできますのでまた訪ねてきてくださいね」
そう言って渡された身分証を私は風呂敷に大事にしまった。これで私も好きに街を出入りできるようになった。これからは行く先々で様々な食材を探すことができそうだ。ヘレンに礼を告げて、私たちは街の散策に戻るのであった。
クロの身分証明書
王国より発行された特殊な証明書。ヘレンの名が刻まれており、王族が保証する人であると記載してある。勇者であるエルメアも同じ証明書を持っている。




