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勇者パーティーの料理番  作者: ゴン太
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第二十八話 おにぎり


ノイリーに〈変身〉の魔法を教わり始めて一カ月が経った。魔法自体はすぐに使えるようになった。ノイリー曰く「そこまで大きさと形を変えるのは普通無理なんですが…」との事らしいがすんなりとできた。少し窮屈に感じるがそれだけだ。


しかし私は未だに街へ行けずにいた。問題は〈変身〉の魔法を使った後だったのだ。簡単に言うと、人間の体で動き回るのが至難の業なのだ。最大の難関は二足歩行だ。ドラゴンは基本的に四足歩行で例に漏れず私もそうだ。しかし人間は二本の足で動き回るのだ。私も立ち上がったり、少しの間移動することはできるがずっとは無理だ。そもそも立ち上がったりするときも尻尾を使うのだが、人間はその尻尾もないのだ。


人間の姿になれて浮かれた瞬間に地べたに這いずる事になった私は茫然とした。そこから人間の姿に慣れるために、毎日二足歩行の練習を行っていた。その甲斐あってか今では真っ直ぐ歩けるようになっていた。走ったりはまだ無理だが、この姿でまともに動き回れるようにはなってきた。


もう少し練習を行えば、街にも繰り出せるだろう。まだ見ぬ街に思いを馳せながら、歩行の練習を再開しようとすると後ろから声を掛けられた。


「お昼御飯作ったよ!!」


ケフォルが私の腰に抱きついてきた。普段ならばビクともしないのだが、人間の姿をしている今では支えきれるはずもなく、勢いそのまま地面に倒れ込んだ。


「私もお手伝いしたんだよ!!」

『そうか、それは楽しみだ』


起き上がりながら元の姿に戻り、ケフォルとともに昼食に向かう。


「あ、来たね」

「歩くのには慣れたか?」


料理をテーブルに並べているエルメアと、椅子に座りこちらに笑みを浮かべているアリーが声を掛けてきた。


『そうだな、歩くのは大丈夫だが走るにはもう少しかかりそうだ』

「ひと月でまともに歩けるようになったんなら上出来だろ」

「そうだよね、私ひと月で四足歩行をできるようになれって言われても無理そうだもん」


そんな会話をしながら席に着くとツツジが料理を運んできた。


「はい、これで最後よ」

『すまんな』

「いいのよ、クロには毎日作ってもらってるんだから」


最近はたまにこうやってツツジが料理を作ってくれる。二足歩行に四苦八苦していたら代わりに作ると言ってくれたのだ。どうやら今日はエルメアとケフォルも手伝ったようだ。


昼ご飯はおにぎりと卵焼きであった。おにぎりは大きさがバラバラで、中身がはみ出ているものもあった。おにぎりは塩味がほんのりきいており、中身は漬物や昆布、焼き魚など豊富な種類があり、飽きずに食べられる。卵焼きは私が作るあまじょっぱいものとは違い、出汁の味がするシンプルなもので箸休めに丁度良いおいしさだった。


食後のお茶を楽しんでいるとケフォルに味の感想を迫られてとてもおいしかったと言うと、満足そうにしていた。エルメアにも同じように伝えると少し嬉しそうにはにかんでいた。さて、もうひと練習しようか。そうしてまた人の姿になり、二足歩行の練習に戻るのだった。


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