第二十三話 報告書
今回はクロ視点ではありません。
冒険者組合の執務室で深いため息の音が響いた。組合長である私には、様々な報告書が届けられる。冒険者からであったり、貴族や国内の情勢であったりだ。そんな中で、今私の手には一枚の報告書が握られている。書かれている報告は信じがたいものであった。内容を要約すると
[森にドラゴンがいる。おそらく私では手も足も出ないだろう。しかし、理性的で友好的だったので、おそらく害はないだろう]
といった内容だった。
普通ならば何を馬鹿なと一蹴していたであろう。王国近辺の森にドラゴンなど居るはずもない、しかも理知的で友好的なドラゴンなどほとんど確認されていない。しかし報告書に書いてある名前が問題だ。
[レイン・エクスポーズ]
最上位冒険者の一人で〈魔剣〉の異名で呼ばれている女だ。そんな人物が寄こした報告書だから信憑性が高い。しかしこの報告書が本当であった場合、非常に厄介である。なぜなら最上位冒険者が手も足も出ないと判断したのだ。冒険者組合でトップクラスの戦闘能力を持つ者がだ。幸い無差別に暴れまわる魔物ではなさそうなのが救いではある。
頭の痛い問題だ。正直手の出しようが無い。このまま静観するしかないだろう。何かあればまた報告が上がるだろうし、その時には迅速に対応できるように準備だけしておこう。そう思い、他の報告書に目を通そうとした時、執務室の扉が勢いよく開けられた。
「何事だ!!」
勢いよく扉を開け放って入ってきた職員は、息を切らしながら私に向かい話し始めた。
「た、大変です!!〈天断〉が、傷だらけで、ば、化け物と対峙したと!!」
先ほどの報告書を一瞥し、どうやら静観はできないようだと悟った私は、話を詳しく聞くために彼の元へ向かうのだった。
レイン・エクスポーズ
最上位冒険者の一人、〈魔剣〉の異名を持つ。魔法と剣術の両方を使いこなすことからその異名が付けられた。王都を中心に活動をしており、冒険者や組合からの信頼は厚い。




