第二十一話 豚とキノコのトマトソース煮込み
今私の目の前にオークが転がっていた。すでにこと切れており、血抜きも終わっているようだった。
「クロ、今日はこいつで何か作ってくれよ!!」
満面の笑みでそう言ったのは少し傷ついた様子のアリーだった。どうやらこの男、肉が食べたいがために、自ら肉を調達してきたようだ。
『・・・どれだけ食べるつもりだ?』
そう、私の目の前にはオークが20体ほど転がっていたのだ。どうやら群れをそのまま討伐してきたようだ。
「食べれられるだけ!!」
嬉しそうにそう言いのけた男に苦笑いを浮かべながら何を作るかを考える。ちょうど数日前にツツジが山菜やキノコを採取してきてくれたのでそれを使うとしよう。
まずはオークを解体していく。今回は脂身の少ない部分を使うとしよう。解体を終え、切り分けた肉に塩と胡椒を擦り込んでいく。そして火にかけたフライパンに油を引いて、肉の表面を軽く焼いていったん引き揚げる。
次に同じフライパンにバターを加え、薄切りにしたタマネギとツツジが採ってきてくれた白カラダケを炒める。ある程度炒めたところでトマトソースと特製のスープの素を加えて軽く煮込んで、そこへ先ほど焼き目を付けたオークの肉を入れてさらに煮込んで完成だ。
「やっぱクロの作る肉はうめーな!!」
勢いよく肉をかき込んでいく様子は相変わらず豪快なものだ。私も鍋から料理をよそって食べ始める。トマト風味のコクのあるスープでよく煮込まれたオークの肉はとても柔らかくなっており、一緒に煮込んだキノコとタマネギが絡みついてしっかりとした味を醸し出している。
「やっぱりアリーだったんだね」
食後のお茶を飲んでいると街から帰ったエルメアがそう声を掛けてきた。どうやらオークの集団の討伐隊が組まれていたが、忽然とその群れが姿を消したためにその行方を追っていたようだ。オークの群れはオークの上位種が率いているために、厄介な集団となるために、その集団を消し去った者が何者かと少し緊迫した様子だったみたいだ。
そんな街の冒険者たちが、肉が食べたいという理由だけで群れを全滅させたと聞いたらどんな顔をするだろうか。そんなことを思い浮かべながら食後のお茶を楽しむのであった。
白カラダケ
森で枯れているように生えている細長いキノコ。摘み取ると一気にみずみずしくなる。




