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イケメンに護送されています。捕虜として…

客人という名の囚人として砂漠を歩いております。

「安心してくれ、別に君たちをとって喰おうというわけじゃないさ。鉱脈発見の礼がしたいという我々の気持ちは信じてくれて本物だ」

「ほ、ほんとなんですかね…?」


リヴを後ろに隠しながら俺はおどおどと尋ねた。


「そ、そんな怯えないでくれよ…。それと、ここからは魔導伝達石のペンダントを掛けていてくれ。鉱脈から離れれば会話ができなくなるのでな」


紐で括ってペンダントにされた魔導伝達石マナ・スピーカーを俺とリヴがそれぞれ受け取っているときに説明された。

向こうの態度も敵対的ではないし、どうやらひとまず身の安全は確保されていると考えてよさそうだ。


「すまないがこの馬に乗ってくれ」


そう促されて、俺とリヴは騎馬隊の人たちが予備で持っていた小柄な馬に一緒に乗せられた。

小さいがとてもおとなしく、乗馬なんて経験したことない俺たちが相手でもまったく不安を感じさせない優雅な歩きだった。


「その馬とってもいいだろう?安定感はあるが足が遅いから、逃げられたくない人間を乗せるのに最適な馬なんだよ。ガハハ!」


筋骨隆々な壮年の騎馬戦士が、俺たちの横を通り過ぎるときに不穏なこと言っていたが忘れよう。

つまりこれって捕虜運搬用の馬なんじゃ…とか思っても考えないようにしようそうしよう。


           ※


「俺たち、これからどうなるんだ?」


自分だけで考えていると鬱々としてくるし、何よりこの状況を聞くなら俺をゲーム(?)に拉致した張本人に直接聞いたほうが早いと思い至り、俺は目の前で座っているリヴに小声で話しかけた。


「さぁ?ボクも何がなんだか分からないよ」

「ゲームがどうこう言ってたのお前じゃねぇか。なんかのイベントじゃないの?」


リヴは俺を一瞥すると、唇をツンと尖らせて不機嫌そうな様子を見せてきた。


「現実の歴史がゲームに影響されてめちゃくちゃになるってことで、そこにいる人たちがゲームのキャラになるわけじゃないと思うよ。常識的に考えて」

「最後の言葉にトゲがあるのですが」

「ふーんダ!ゴロウ最初はボクの言うこと信じてくれてなかったもんね!」

「いや、誰だって最初にいきなりあんな事言われても信じないだろ」

「今は?」


リヴがこちらに向き直った。その目には、どこかしら期待に満ちた輝きを放っていた。


「今?まぁ…、とりあえずここが日本でもなければ現代でもなさそうだってのは理解できた。あんな魔法のアイテムっぽいのまで出てきたら自分の考えも変わってくるさ」

「…ふ、ふーん!つまりボクが正しかったということが証明されたってことね!リヴちゃんはいつも正しいってことなんだよ!」


リヴの機嫌が一気によくなった。

髪の一部を短いみつあみにしてるのだが、それがブンブン左右に揺れていて犬の気持ちを代弁してるぐらい分かりやすいカッコだった。


「ふふん、ふん!ようやくゴロウの石頭もボクを認めたってことだね。これからはボクの言うことをよく聞いてちゃあんと従うのですよ?」

「え?いや無理だろ?」


素で答えてしまった。

俺の無慈悲な返答にリヴはショックを受けたらしく(?)、「ムキー!」と奇声をあげながら俺を馬から落とそうと突き出してきた。


「ぬおおおおおお?!ばかばかやめろ落ちるわ!」

「ボクの言うことは絶対なのです!それが分からないゴロウのおたんこなすには馬に乗る資格はないのです!」

「何言ってんだお前やめろおおおおおおおおおおお?!」


俺の絶叫がむなしく空に響き渡った…。

―――死闘の後。俺たちはいったん今の状況を整理することにした。


「んー、推測になるけど、世界がゲームになるわけじゃなくて、ゲームの世界観が現実の歴史に影響を与えている状態なんじゃないかな?」


小さくて形のいい唇に人差し指を当てながらリヴは自分の考えをトツトツ語る。


「つまりゲームに影響を受けた歴史がこれからも続いていくと…?」

「さっきの魔導伝達石も、ゲームの影響で生まれたものだと思うの」

「そういえば電話・翻訳機能付きの石が自然と産出されるって意味分からなすぎるもんな。それで、リヴの予定ではこれからどうするつもりなんだ?」

「………」

「…リヴさん?」

「………」

「リヴさんお願いこっち向いて」


明後日のほうに顔を背けているリヴの顔をサンドイッチみたいに両手で挟んでなんとかこっちに向かせようと奮闘する俺と、それに抵抗するリヴ。


「ふぎぎ…!リヴにだって分からないこともあるんだよ!」


モチみたいに膨らんだリヴの頬から逆切れしたリヴの反論が飛んできた。


「俺と同じぐらい何も知らないことが判明したんだぞ今!世界を一緒に救おうとかなんとか言ってなかった?」

「とにかくタイムマシンかゲームの電源を切ればなんとかなるんだよ。たぶん!」

「不安になる部分を強調しないで!」

「ふんふん!とにかくゴロウは安心してリヴについてくればいいの!リヴがまるっとズバッと解決してあげるんだから!」


売れないマジシャンと同じようなキメ台詞を高らかに謳いあげてご満悦になるリヴを見て俺は天を仰いだ。


「か、解決への道筋が見えねぇ…」


俺の嘆きにずんぐりむっくりした俺たちの馬が「ブヒヒン」と一声いなないただけだった。


「そぉら、もう少しで俺たちの街に着くぞ!」


隊の一人が俺たちにそう言って注意を引いた。

さて、と。これから本当の意味で、なにも知らない街に入るんだ。気を引き締めていかないと……。

気合を入れ直した俺の耳に、リヴの緊張感のない声が届いてきた。


「ねぇねぇゴロウ!ボクここに来たのはじめてだから遊んでいい?!」


……目的達成するの、ダメかもしれないなぁ。

俺は人知れず、再度天を仰いでいた。

ようやく街に着きました!

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