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丸腰でエンカウントは詰んだかなって!☆

美少女を乗せた馬になって砂漠をさまようゲーム……なんですかこのゲーム? by主人公

「何処なんだよここは…?」

「もうその質問には聞き飽きたよ~。たぶんゲームの砂漠ステージとかじゃないの?」

「お前もなんで場所が分かってないんだよ」


何回目か俺も数えられなくなった質問にリヴが辟易へきえきした様子で投げやりに答える。

でも俺、リヴに拉致られてこの良く分からない場所まで連れてこられてるからね?何度だって質問してやるからね?


「少なくとも日本じゃないよ」


 …いくら現実味がないと否定しても、リヴの説明が自然と説得力を増してきている。

リヴが言う、『ここは暴走したゲームの世界』という説明を、もちろん俺は信じたわけではない。


――リヴ曰く、


『リヴは、俺からしたらとても遠い未来から来た女の子』で、

『リヴの時代に存在していたタイムマシンと仮想現実ゲームが同時に暴走』し、

『過去も未来もひっくるめて、世界中がゲームと融合した状態』になり、

『リヴがはゲームに浸食されてしまった世界を取り戻すためがんばっていたところ』、

『ゲームのシナリオシステムに同化した世界から明らかに異質な存在である人間を発見し』……―――


「引っぱりあげたってわけさ!それがゴロウ、キミなんだよ!」

「俺の回想にいきなり入ってこないでくんない…?」


俺の控えめな抗議は風に流され、リヴは俺の肩の上で元気におちょくってくる。

この意味の分からない場所に放り出されて何時間か経っているけど、リヴの能天気さのおかげでパニックにならず、だいぶ冷静になれている自覚はある。

その点では、リヴには感謝しないといけないかな。

あいかわらず俺の上で素足をぷらぷらさせているリヴに向かって俺はふと気になっていたことを訪ねてみた。


「ところでリヴさん」

「なぁにゴロウくん」

「ここがゲームの世界だっていう話だが、どうなって現実と混ざったんだ?」

「リヴも詳しい仕組みとかは分からないんだけど、複合現実ゲームっていう、まぁゴロウの時代にあったARとかVRゲームの進化版みたいなもんなんだけど、それと近くにあったタイムマシンの機能が混ざりあって、なんか世界がぐにょーんってなって気が付いたら世界中がこんな状態になっちゃってまして…」

「こんな状態って具体的にどんな状態になってたの」

「リヴだけがあの洞窟の中にいて、世界は中近世に近い時代感に……」

「現代じゃないんだ……」

「まぁ、タイムマシンかゲーム機を見つければすぐ解決するんだよ!簡単簡単!」

「それはどこにあるんだ?」


俺の質問ににっこり笑顔を返す。


「いや、俺が欲しいのはスマイルじゃなくてですね…?」

「………」

「…リヴさん……?」

「………」

「あ………」


すべてを察してしまった俺とすべてを知っている少女は、肩を落として並んで砂漠を歩き続けた。


―――「まぁタイムマシンもゲーム機もこの時代の人たちにははじめて見るめっずらしいものだから、きっと貴族とかお金持ちの家に保管されてるよ!」


リヴが「あ、そうだ!」と思いつき感バリバリで言い放ったものだけど、他に考えつくこともないし、当面俺たちは人のいる町を目指すことにした。


―――コイツと会ってまだ一日も経っていないけど、何度思い返しても人生で一番意味不明な出会いだった―――。


『……』

『あ、起きた?」

『?ここ何処?俺の部屋は…?』

『ここはリヴが寝泊まりしている洞窟のなかだよ!』

『え?君は誰です?』

『ボクはリヴっていうんだ!よろしくね!』

『なんで俺、洞窟のなかにいるの…?』

『そんな細かいこと気にしちゃイクナイヨ!ゴロウはこれからリヴと一緒に世界を救うんだよ!』

『…………は?』


―――回想終わり。意思伝達コミュニケーションってなんだっけ…?


「なぁリヴさんや」

「なんだねゴロウくん」

「この旅が終わったら小学校でもう一度会話の仕方を勉強しような。お兄さんも手伝うから…」


ついでに常識と基本的な法律もできるだけ教えとこう。主に他人おれを拉致するのは立派な犯罪であるとか…。


「会話の仕方なんてボクもうだいがくれべるまで完璧にマスターしてるもん!失礼だゾ」

「大学で会話の仕方を教えてるってそれもう教育制度が破綻してませんかね?」


未来の最先端学問が掛け算割り算になってそうな社会だ。

一億総のび太化してるじゃねぇか。


「それでのび太くん、本当にこっちに進んで大丈夫か?」

「誰なんだよその男の子!知らない男子だけどなんかバカにされてるってボクも分かるんだよ!」


ぷりぷり怒っててちょっとおもしろい。


「ん、大丈夫。こっちの方向で間違いないよ」


一通り俺に文句を言ったあと、仕切り直すようにリヴはこちらの不安に答えた。

当てどもなく砂漠を彷徨っているかと思ったけどちゃんと目的があったみたいだ。


「どこを目指してるんだ?」

「どこというか、ゴロウに出会う前にこっちの方角から人が来てたのを見たことがあるの」

「お前洞窟の外まで出たの?どんな格好してた?」

「洞窟入口で砂漠に驚いて引っ込んじゃったけどね。こう、体に白い布を巻き付けてた」


リヴが自分の体をひねりながら説明する。深い藍色のショートヘアが風になびいている。


「ゴロウ聞いてる?」

「ん?あぁ、悪い悪いぼーっといしてた」

「ゴロウが聞いてきたんだからしっかり聞いてなくちゃダメだよ!」

「まったくおっしゃる通りで。ところでそろそろまた休憩してもいい?」

「いいよ!」


元気な返事を聞いて俺はリヴをゆっくり降ろす。

リヴの体重が軽くてもさすがに何時間も肩車し続けられないので、ちょくちょく休憩を挟んで移動していたのだ。


「ゴロウ、ずっとリヴを肩車してて疲れたでしょ?大丈夫?ボクも歩こうか?」

「お前なにも履くもの持ってなかっただろ?さすがに女の子を裸足で歩かせられんわ。」

「…う、うん…」


リヴがうつむいて静かになってしまった。顔は隠して手をモジモジとよく分からない動きをさせている。


「なにしてんだリヴ?」

「う、ううん!なんでもないよ!」

「そうか?じゃあ、そろそろ行くとするか。待たせて悪かったな」


詫びながら俺はリヴをまた肩車しようと手を伸ばした。


「ふ、ふわっ!」


なぜか回避運動を取られた。なぜに?


「い、いや、なんか今は歩いてみたい気分だなぁと思っておりまして」


リヴが顔を赤くしながらしどろもどろになって弁明する。


「これは決して、リヴがなんか変に恥ずかしくなってしまったとかではなくてですね、純粋な好奇心に基づく知的好奇心といいますかなんといいますか…」


リヴがいろいろと述べているが俺の耳にはほとんど入ってこない。

なぜなら俺の優秀な頭脳はリヴの真意をすでに理解していたからだ……!


「…嘘だ!俺に触られるのがイヤになったんでしょ!?」


俺は慟哭どうこくしながら叫んだ。

そうだ。そうに違いない。「冷静になってみたらコイツキモくね?」とリヴが思い当ってしまったんだ。だから俺は今、触られることを拒否られているんだ…!


「あわわわわ違うよ違うよ!ゴロウ凄い勘違いしてるよ!ボクはあのなんというか…」

「やっぱり俺がキモいって気づいちゃったんでしょ?!」

「ゴ、ゴロウがテンパりすぎてオネェ口調になってる…」

「そうなのねっ?!」

「大丈夫だよ!ゴロウは普通の顔だよ!」

「普通!?女子は処世術に長けていてどんな男でも褒めてフォローするって聞いてたけど、それなのに普通って言われた俺はどんなってんだ」

「ゴロウに間違った知識がインプットされてる…。ゴロウは何もおかしい所はないよ。安心して?」

「ほんと?」

「ホントホント!」

「じゃあ…」

「い、いやぁ、ちょっとリヴ散歩したい気分になりまして」


伸ばした手を掻いくぐるリヴ。同時に顔がまた赤くなっている。


「うう…顔が赤くなるのなんとかしたいんだよ」


確定だ…リヴは俺が嫌いだということが確定的に明らかになってしまった。


「ふぐぅぅぅ…!!でも、やっぱり裸足だと危ないから、めちゃくちゃイヤだろうけど我慢して俺に捕まってください」


出会ってから間もないがどこか妹みたいに接していたので、拒絶されたショックが半端なかった。

泣きながら頼み込む俺。もはや土下座せんばかりの勢いになってる。


「どうか、どうか…」

「手の伸ばしかたがゾンビみたいで怖いよ!」

「うぅぅぅリヴぅ…」


絵面がたいへんよろしくない状況が出来上がってしまった。まるで俺が人さらいみたいな図だ。


「ひぃぃ…!」


ほら、リヴが泣きそうな顔になってる。ここが日本だったら誰かに見つかって俺の人生終了だったなぁ。


「そこで何をしている!」


振り向くと、純白の布を身体に巻き付けたような服装で馬上から鋭く俺を睨みつけている男がいた。

……日本じゃなくても終わったわ。

主人公の現在;未成年者略取誘拐(容疑)

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