記憶の中の夢
ふと、気になることがある。
叔母さんたちは僕の両親のもの、写真など、すべてを処分した、と言った。
一般家庭で、家族が突然いなくなった時、その家族の私物を勝手に捨てるだろうか。そもそも家族が突然いなくなることなんてあるのか。
部屋をそのままに、何も捨てずに残して、いつか帰ってくるのを待つ。そんな人が多いという研究結果を、この前テレビで誰かが言っていた。
では叔母さんは、帰ってきてほしくなかったのか。それとも、帰ってこないことがわかっていたのか。
それとも、まだ捨てていないのか。
やはり、叔母さんは理由を知っている。いきなり両親が僕の元から消え、僕が叔母さんの家で育つことになった原因を。
夕飯を食べ終わって、部屋でそんなことを考えていると、いつの間にか、椅子に座ったまま寝てしまっていた。
ふと寒気を感じて起き上がると、ずるりと落ちたのは、コート。帰ってきた時にベッドの上に放っておいたこれが、なぜ僕を覆っているのか。
なんて、考えなくてもわかるじゃないか。
叔母さんが風邪をひかないようにかけてくれたに決まっている。
勝手に部屋に入ってくるな、と言いたいが、ふと時計を見て気づいた。部屋に入ってきた時から、50分ほどが経過している。このコートがなければ、凍え死んでいたはず。
一度起きたのに眠気はそのままなので、コートをハンガーにかけてから今度はベッドに入った。
お母さんの顔、見てみたいな。