二人の笑顔が咲くとき
「ねえねえ、どこに連れて行ってくれるの?」
電車の中で、まるで小学生のようにはしゃいで楽しみそうに足を動かすミナク。
「秘密。もうちょっと待ってろって」
「はーい。期待しかしてないからねー」
今日、バカみたいに楽しんでいる彼女を見て、一緒に行きたいと思った場所だ。
ちょっと季節が遅かったかなと思ったけど、さっきミナクがお手洗いに行ってる間に調べたら、まだちゃんと綺麗な状態だった。
電車に乗ってから30分ほど。
窓から見える景色も、だいぶ変わってきた。
「ほら、着いたよ」
初めの方はるんるんだった彼女も、途中から飽きてうとうとし始める。
本当、どれだけ寝るのが好きなんだよ。
まあ寝顔もかわいいからいいんだけど。
ミナクは数回瞬きした後、驚いたように立ち上がった。
「え? 着いた?! よし、行くよ光希!」
「あ、ちょっと、待って!」
電車から飛ぶように降りるミナクと、それを追いかける僕。
微笑ましい僕らの姿を、隣の席に座っていたおばあさんが静かに見ていた。
駅から出てすぐのところにある庭園。
おしゃれな門をくぐってしばらく歩くと、ついに目的地へ着いた。
「ひまわり、畑?」
「そうだよ」
ここは、地元では有名らしい花園。
たくさんのひまわりが並ぶなか、植物を傷つけなければ自由に走り回ったりしてもいい、という自由な場所だ。
「すごい、こんなところあったんだ! まだまだ綺麗に咲いてるね! それに、ほら、私たちだけだよ! 貸切〜!!」
そう言って誰もいない畑の中を、あっという間に走って行ってしまうミナク。
何本生えているんだろう。
1000本、10000本? わからない。数えられないほど生えていて、その全てが光り輝いく黄色の花を大きく咲かせている。
「光希も、ほら早く!」
「うん、今行く」
太陽が眩しくて、それ以上にこの咲き誇るひまわり達が眩しくて、思わず手を日差し代わりにかざす。
音楽はあまり詳しくないけれど、どこかの曲のミュージックビデオでこんな風景があったような気がする。
彼女に手を引かれて、背の高い草花の間をぬって走っていく。
気づけば僕も、ミナクに手を引かれていた。
「端から端まで走ってみようよ!」
さっと振り向いた彼女の笑顔と、なびく長い黒髪が、ここに咲いているひまわりよりも輝いて見えて、『綺麗だな』って思ってしまう。
「なにそれ、ダジャレのつもり?」
「ふふふっ! ひゃっほぉ〜!!」
ミナクは僕の照れ隠しに笑いながら、どんどん奥へと進んでいく。
他の誰もいない二人だけの世界で、一緒に笑顔を咲かせる。
なんて幸せな時間だろう。
ずっとこの時間が続けばいいのに。
あのとき、死ななくてよかった。
生きてて、よかった。
ベンチで肩を並べて座り、沈みかける燃えるような夕日と、それに照らされてオレンジ色に光るひまわりを見ながら、僕は改めてそんなことを心の中でつぶやいた。
花園の中に無数に落ちている向日葵の種を大事そうにハンカチに包んでお土産にするミナク。
家の庭にでも植えるのだろうか。
ここに咲いているものみたいな、大きくて立派な花が咲くといいな。
花と一緒に、僕たちも成長していけたらいいな。
また来年も、今度は季節真っ盛りの頃に、この場所で一緒に笑い合いたい。
帰りの電車の中で揺られながら、そう思った。
また苦しくて、悲しいことがあるかもしれない。
そんなときはここにきて、辛いことを吹っ飛ばすくらい笑って、楽しんで、二人でたくさん思い出を作っていくんだ。
これにて第2章は終わりになります。
しかし、いつもたくさんの方が読んでくださっているこのお話を終わらせるのがもったいなくなってしまい、
また、ここで終わらせるのも中途半端な気がしたので、
続きを書こうと考えています。
他のシリーズを進めたいので一旦お休みしますが、帰ってくるので待っていてください。お願いします。
追加:(2020.10.17)
申し訳ありません
私の個人的な事情で再開ができなくなってしまいました。
この物語はここで終わりとさせていただきます。
本当にすみません。ここまで読んでいただきありがとうございました。




