ぎこちないカップル
久しぶりの更新になってしまいました、本当にお待たせして申し訳ありません。
おかしいところ、不自然なところ、ねじれなどありましたら報告してくださるとありがたいです。
確認はしているつもりなのですが、気づかないところもあるので……。
「どこ行きたい?」
あー、これならデートスポットとかちゃんと調べとけばよかったかな。
まあ行こうと思っていたところはあるけど、それは帰りに寄ればいい。今回はミナクの好きなところに行くってことがいっか。
「んー、遊園地行きたい」
「遊園地?」
予想外だな。この前テレビでやっていたCMを見て『怖そう!』と感想を漏らしていたミナクからは想像できないほど目が輝いているんだが。
「そう。ジェットコースター乗って、コーヒーカップでぐるぐる回って、観覧車乗ってみたい!」
楽しそうに話すミナク。多分、入院してた時に行けなかったところ、したかったことを今やりたいんだろうな。ならば僕もできるだけ協力したい。
遊園地っていうと、ここから30分くらいのところに有名なところがある。たくさん遊んでも夜までに帰ってこれるはずだ。一応おばさんにも連絡しておこう。
*
「わぁ〜! 一度は来たかったんだよ、 すっごく楽しみ! どこから乗ろうかな。やっぱり最初はジェットコースターだよね!」
「え?! あ、ちょっと、待てって! 早い早い!」
入場するなり手を引いて列ができている乗り場に急ぐミナク。その先では、
きゃー!!!!
とすごい叫び声。ちょうど一番高いポイントからコースターが落ちたところだった。
結構怖いかも。こう見えても絶叫系は苦手だ。高いところは苦手ではないんだが、あそこから落ちるとなると……。
「何か問題でもある? それとも、乗りたくないの?」
「あ、いや、乗りたくないわけじゃないんだけど、その、心の準備が……」
「何私より弱々しいこと言っちゃって。そんなの準備しなくても乗れるでしょ」
結局手を掴まれて並ばさせられる。
そういえば、結構自然に手、繋いじゃったな。さっき恥ずかしいのは乗り越えたはずなのに、まだちょっと照れくさいし実際に今顔とか赤くなってるし。
隣を見ると、それに気づいて同じく顔を赤くするミナクと目があう。
「あっ」
黙っているのもなんだかと思って話しかけようと口を開けると隣のミナクも同じように声を出す。
「ふふっ。私たち、端から見ればいかにも『新米カップル』って感じじゃない?」
「確かに。実際にもそうなんだけどね」
少し汗の滲んだ手をもう一度しっかり握りなおして、列に並ぶ。
日曜日だというのに思ったより人は少なく、あまり待たずに乗ることができた。これが遊園地離れか。
「うおおおおおわわぁぁぁぁ!!!」
「ひゃっほー! きーもちいー!!」
最初の急降下から限界だった僕と違って、ミナクは手をあげたり叫んだり、初めてジェットコースターに乗ったとは思えないほど楽しそうにしていた。
ミナクが楽しいならそれでいいかな。
「よーし、次は何に乗ろっかなー? やっぱりコーヒーカップ? あ、でも気持ち悪くなる前に別のに乗っておいたほうがいいかな」
「気持ち悪くなるほど回すのか?」
「あれは回して乗るものでしょ? 回さなくてどうするの?」
前に中学の卒業遠足で行かされた時は一緒の班だったクラスメイトがぐるぐる回しすぎて自分で気持ち悪くなってたな。ミナクはそんな間抜けなことはしないと思うけど。
「ほら、ぼーっとしてないで、早く早く!」
「あ、ああ。お手柔らかにお願いします……」
結局ほとんどすべてのアトラクションに乗った。というか乗らされた。
コーヒーカップでは他のどのカップよりもたくさん回してスタッフに止められ、
ゴーカートでもできるだけのスピードを出し、
バイキングでも一番外側のシートに座って大はしゃぎ、
その後は疲れたのか、メリーゴーランドはゆっくりと普通に乗った。
お化け屋敷で腕にしがみつかれたのはさすがに驚いたけど、可愛かったしまあいっか。
「最後に観覧車、乗ろっか」
「うん」
これだけたくさんのアトラクションに乗ってもっと時間が経っているかと思っていたが、まだ外は全く暗くなっていない。むしろ来たばかりの時より空が明るくなっている。
ゴンドラのなかに入ると、強めに効いたクーラーが汗ばんだ体を冷やした。
「なんか、このまんままっすぐ家に帰るの、もったいなくなっちゃうね。まだ遊んでたいって思うのは、楽しいからだよね」
ミナクが静かに言った時、最初に乗ったジェットコースターの一番高いところから、悲鳴が聞こえる。
乗っているとすごく早く感じる落下スピードは、ゴンドラから見るとなぜかゆっくりに感じた。
「……もうちょっと、遊んでから帰ろっか」
ちょっとした思いつきでつぶやいてみる。
「どこか、行くところあるの?」
「……うん。まあね」
「そっか。よかった。まだ、終わらないんだね。この楽しい時間、もうちょっと続くんだね。まだ帰らなくていいんだよね」
「ああ」
「光希に会ってから、本当にいろんなことがあって、私のやりたいこととか、すごくたくさんやらせてもらって、幸せだよ。出会えて、本当によかった」
一つ一つを噛みしめるように口にする彼女は、先ほどまではしゃぎまわっていた少女には見えない。
「うん」
不意に彼女の頬に垂れた水滴に、太陽が反射した。
「あ、あれ、なんでだろ……」
ミナクの瞳から流れる涙は、止まらなかった。
「素直に、泣いていいんだよ」
やさしく抱きしめる。
温かくて、ずっとこのままでいたくなるような。
いつのまにか観覧車のゴンドラは、一番上に達していたらしい。
互いの背中に回した両腕が解けるまで、燃える太陽が僕たちの姿を包み込んでいるように思えた。
次の話で2章は終わりになる予定です。




