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愛する人は桜色に  作者: Halka
君の笑顔は向日葵で
30/36

どうして私は嫌われたの?

評価をつけていただきました!

読んでくださり本当にありがとうございます!

「今日も朝早いね、ミナクちゃん!」


げっ。

今日は周りの女子たちの冷たい視線を受けないようにわざと早めに家を出たのだが、なぜか教室にはもうあの中江裕也がいた。


「い、いや、たまたまだよ。それに、中江さんだって早いじゃない?」


さすがに名前では呼べなかった。苗字で呼んだし「さん」も付けたし、これなら許してくれるでしょ。


「ぼくもたまたま今日は早く来たんだよ。すごい! 偶然が重なって、運命みたいだね!」


運命。その言葉をこんなに軽々しく言わないで欲しい。

恥ずかしい。大きい声で話しかけられて、声をみんなに聞かれて。穴があるなら今すぐ頭まで潜りたい。男子からも見られてるし。

こういうときに神谷くんがいたら私をあんなやつから守ってくれるのに。

って、だめだめ。私ももっと成長しなくちゃ。いつまでも光希に頼りすぎていたら迷惑だものね。


「そ、そうかな。ほら、予鈴鳴ってるよ、座らないの?」

「あ、うん! ミナクちゃんと話すと時間忘れちゃうな」


ゔえっ。

思わず声に出しそうになって喉の直前で止める。この人はなんで私に構ってくるんだろう。話しかけてくるところでは神谷くんとあまり変わらないのに、中江さんが来るとなんだか迷惑に感じる。何が違うんだろう。

神谷くんに優しい言葉をかけられたり心配されたりすると嬉しくて照れちゃってお互いに顔が赤くなるけど、中江さんにされても全然嬉しくないし照れないし、むしろ気持ち悪く思ってしまう。他の女子からの視線が怖くて私が窮屈にしてるからかな。


「あ、ごめんなさい」


席に戻る途中で気づかずに手が当たってしまった。クラスメイトの希望(のぞみ)さん。私なんかより可愛くて、クラスの人気者で、私が転入してきたときも学校を案内してくれたりした優しい人。


「ふん」


__え。

希望さんは、私に触れた手を制服に擦り付けるようにして、そっぽを向いて彼女の席に戻ってしまった。

私、無視された。手が触れてしまったことはちゃんと謝ったのに。そんなことで怒るかな。もしかして、私嫌われてるのかな。

入院してから友達という人と接してなかったから私はそうゆうのに鈍感だし、神谷くんは私の言葉すべてに反応してくれたから、こんなこと初めてだ。希望さんが私のことを嫌っているとして、なぜなんだろう。私、何か悪いことしちゃったのかな。

考えられない。

後で、家でじっくり考えよう。


「ねえねえ、ミナクちゃん。この問題わかる?」


前の席の中江さんが授業中に何度も話しかけてくる。

編入試験のための勉強は光希からしっかり教わったからいいが、これからの授業内容まで彼に聞いていたら彼自身の勉強ができなくなってしまう。この前も宿題が多くて大変そうだったし。ここからは私一人で頑張ってみると約束したんだから、静かに勉強させてくれないかな。


「ねえねえ、ミナクちゃん。ここどうやって解くの?」


でも、無視するのは嫌だから、答えてはあげる。


「私なんかより隣の人に聞いほうがいいんじゃない?」


強く言ったつもりはなかったんだけど、中江さんはすごくショックを受けたような顔をして顔を背けてしまった。


「そっか……」


ああ、なんでもっとうまく言えなかったのかな。なんて言えばよかったのかな。

そこからの授業は、なぜかあまり集中できなくて、ぼんやりと窓の外を見つめていた。


『名前、教えてくれないかなっ……?』

これは、最初に光希と出会った時、彼が話した言葉だ。ブランケットを取ってくれたから、お礼をしたらいきなりそんなことを言われてびっくりした。正直、名前を言おうか迷った。私と接した人は不幸になってばかりだから、この顔の赤い青年も不幸にしてしまうのかと不安になった。それに、自分の病気のこともあったし。あの時は、なぜか名前を教えなければと思った。突然出会った運命を手放したくなかったのかもしれない。

『君の周りなら、誰も、苦しまないよ』

自分の名前を嫌ってた私に、光希はそんなことを言った。この言葉を言われた時は、強張っていた全身の力が緩んだ感じがした。今まで誰にも言われなかったことを突然言われて、単純に嬉しかった。

きっと同じ言葉を中江さんに言われても、今の私の心はときめかないんだろうな。

と、ふと足元を見てペンが落ちていることに気づく。


「浅井さん、これ、落ちてますよ」


1番近くの席に座っていた浅井ほのかさんのものだと思って差し出すと、


「私のじゃないよー。それ、希望のじゃない?」


ほのかさんは首を振って言った。


「あ、そうなんだ、ありがとう。じゃあ__」


すると、


「ミナク!ちょっと待って、私が渡すよ」

ほのかさんはいきなりミナクの手を掴むと、ペンを抜き取った。


「え? ありがたいけど、どうして?」

「ミナクは今の希望に近づかないほうがいい。希望、ミナクの悪口ばっか言ってたから」


そう言ってから、はっと目をそらすほのかさん。

やっぱり悪口言われていたんだ。私、希望さんに嫌われていたんだ。


「え、ええと、これは、その……」


口ごもるほのかさんに、私は真剣な眼差しで言う。


「教えて」


今、自分が笑った気がした。なんでだろう。私、どんな顔してるのかな。

悲しくて笑ってるのかな。それとも、悲しいのを無理してごまかしてるのかな。


「いや、でも、口止めされてるし…」

「どうしてよ。私に関わることなんでしょ?私には教えてくれないの?私は仲間はずれなの?」

「……」

「私はどうして嫌われたの?」


もう私には悲しいことなんて来ないと思っていた。余命宣告されたこと、思い通りに体が動かせなかったこと、一生分の悲しみを体験した気になっていた。でも、今こうやって無理して笑おうとしている。もう作り笑いはしないと決めていたのに。

私にはまだ、わからないことがたくさんあったんだ。知らない世界はまだまだ広がっていて、全てが楽しいものではない。

そして、私はそこを避けてはいけないのだろう。

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