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愛する人は桜色に  作者: Halka
君の笑顔は向日葵で
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笑えない冗談

この前のミナク、どこかいつもと違かったけど、どうしたのかな。何か言いたそうな顔をしてた。結局昨日は何も聞けずに終わっちゃったから今日帰ったら言い出してみようか。


「ねえ、かーみん、聞いてるの?」


唐突に視界に何か入ってくる。


「__え?」

「ちゃんと聞いてよ、今大事なこと言ったんだから」


ああ、えっと……名前なんだっけ。確かナントカ彩音だったような。まあそれはどうでもいいや。とりあえず話進めとこう。


「あ、ごめん。で、大事なことって?」


ナントカさんは僕のすぐ左を当たり前のように歩いている。周りから見たらそうゆう関係に見えるのかな。違うから嫌なんだけど。なんだか時々腕に手が触れている気がする。


「あのね、今日、家の鍵を忘れちゃったの」

「へえ。それで?」


別にこのナントカさんの家事情はどうでも良かったから適当に相槌をうったつもりだったんだけど、ナントカさんはけろっとした表情でこっちを向くと


「それでって、これだけだけど」


と言った。

いやちょっと待ってよ、大事なことなんじゃないのか。"大事"っていうのは辞書では【物事の根本に関わるような重要なこと】とか、もっと深刻なことを指す言葉なんだけど、家の鍵を忘れただけで物事の根本には関わらないし深刻じゃないし、そもそも僕に関係ないし。


「ああ、そう。そんなに大事じゃないじゃないか」


言いたいことを1割ほどに削り、頑張って言葉を選んで言うと、


「え? 何言ってるの?」


と返ってきた。


「は?そっちこそ」


もうわけわかんないんだけど。


「いやいや、この流れで行くと、"じゃあ僕の家来る?"ってなるはずなんだけど。かーみん、それでも男?」


ナントカさんは全く似てない僕の声真似をして言った。なんで僕が「家来る?」って言う想像ができるの?まさか僕の家来たいの?


「いや、そっちの方がわけわからないんだけど、なんでこの流れでそんな話になるの?」

「まあいいや、てことで、家入れてくれない?」


無視するな。

やっぱり家に行きたいって願望だけじゃないか。家の鍵を忘れたっていうのも嘘だったりして。そこまでして家に入りたいとかストーカーかよ。ていうか、


「ごめん、無理。僕の可愛い彼女が家で待ってるから」


ナントカさんは一瞬ぽかんとする。

そして、大爆笑する。


「あっははははは!!笑える!かーみん、冗談言えるんだ!あっはは」

「……」


ごめん、冗談じゃなくて事実なんだけど。冗談だとしたらちょっとは笑えたかもしれないけど、ミナクを馬鹿にされた気分。


「ははは! ねえねえー、そんなに家に来て欲しくないの? かーみんの家、家庭訪問〜! 楽しそうじゃない?」


ナントカさんの笑いはまだ収まってないみたいだ。

家に来て欲しくないのはどの生徒でも同じだと思うけど。ちなみに、家庭訪問っていうのは学校の先生やカウンセラーが子供の家庭環境を確認するために行うものであって、ナントカさんが偉そうにやっていいものじゃない。

とにかく家にはミナクの方が先に帰っていると思うし、本気でこられたら困る。


「…来ないでくれ」


あまり強い言葉で人に言うのは得意じゃない。怒ったり、感情的になったりはほんのたまにしかないし、それで本当に怒れてるのかもわからない。が、勇気を出して少し怒った口調で言ってみる。


「かーみん、もしかして怒ってる?」

「……」


言いすぎたかな。日頃あまり感情を出さないようにしている僕はこうゆうときに加減がわからない。


「……あ」

「あっははは、かーみんでも怒ることあるんだ!おっもしろーい!」


この人を不快にさせたと思って発した音は、彼女自身の笑い声によって見事にかき消された。


「ほんと、今日のかーみんったら面白いんだから」


いや別に、狙ってそうしてるわけでもないし、そもそも全く面白くないし、なんで何も言ってないのにここまで笑えるんだろうと不思議に思う。それに今日の僕はいつもの僕と何も変わらないし。

駅に着いた時には結局、僕の家に来ることは諦めてもらえたらしく、反対方向の電車に乗って流れていった。すごい勢いで僕に向かって手を振っていたように見えたのは、見なかったことにした。

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