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愛する人は桜色に  作者: Halka
愛する人は桜色に
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桜色の笑顔

ブルーシートを敷いた桜の木の下。

予想通り、桜は散り始めていたが、その代わりとても空いていた。

ミナクはおばさんに持たされた、と言ってコーラだったりカルピスだったりの飲み物をクーラーボックスに入れて持ってきていた。


「やったー! 焼きそばだっ! もしかして私の好きなもの知ってたのー?!」


一方僕は、前日の夜に作った焼きそばをタッパーに入れて持ってきていた。


「いや、おば_看護婦長に聞いた」


おばさん、と言おうとしてそういえばこのことは話してない、と思って言い換える。でもミナクはそんなことには気づかずに話を続けた。


「そこは嘘でもうんと言うべきとこだよ、神谷くん。まだまだだねえ」

「なっ_」

「嘘嘘。知り合いに聞いてでも私を喜ばせようとするその心構えはしっかり評価してあげようじゃないか、ふふ」


芝居掛かった表情とセリフとともに人差し指で僕のおでこをコツンとつくと、車椅子のまま、膝にタッパーを乗せて豪快に焼きそばを食べ始めた。


「んー!!んまいれ!はいほうだよ!!」


口いっぱいに野菜と麺を詰め込んで、もぐもぐしながらしゃべるミナクも、いつもとは一味違ってとても可愛くて。


「ミナク、飲み込んでから話さないとなに言ってるかわからない」


お腹が空いているのかすごいスピードで箸と口を動かすミナクにそう言うと、ちゃんと飲み込んでから同じ言葉を繰り返した。


「んー!!うまいね!最高だよ!!」

「それならよかった。じゃあ僕も、いただきます」


手を合わせてからクーラーボックスを開け、麦茶のペットボトルを取る。自分の分のタッパーの蓋を開けて、割り箸を持つ手に力を入れるとパキンと綺麗な音を立てた。それは、僕とミナクの気持ちを表すようにまっすぐ、綺麗に割れた。


「その、焼肉は今度食べようね」


ミナクは食べることに夢中で無言になったので、ちょっとは会話しようかとそんな風に話しかける。


「ううん、もう焼肉はいいよ」


なぜかミナクは首を横に降った。


「え?だって食べたかったんじゃないの?」


僕が聞くと、ミナクは彼女の口の中でシャキシャキ言っていたキャベツを喉に押し込んで


「もう食べれたもん」


と笑った。

ミナクがなに言ってるかわからなかった僕は首をかしげて、ブルーシートの上に並んだものを順番に見る。飲み物に、焼きそば。肉はどこにもないが、いつ食べたんだろう。答えの出なかった僕を見て、彼女は自分が食べていた焼きそばのタッパーをなぜか僕に差し出して、言った。


「ほら神谷くん、焼きそばにお肉入れてくれたでしょ?」


その麺の上には、小さく切った豚肉があった。


「焼肉、なのかな」

「肉が焼いてあったら焼肉でしょ。まあまあ、細かいことは気にせずに。神谷くんと食べるご飯ならなんでも美味しいんからいいの」


そう言って肉を四切れくらい麺の中から探し出してきて、一気に頬張ると、またもぐもぐと無言で食べ始めた。


「うん!美味しい!美味しいし綺麗!桜ってこんなに綺麗なんだね」

「桜くらい見たことあるでしょ」

「ううん、神谷くんと桜を見るのは初めてだもん。2人で見る桜はすごーく綺麗だね」


少し涙を浮かべて、首を傾けてにっこりと最高の笑顔を見せるミナク。それが、どこかのアニメヒロインみたいな言い方で、とても可愛かった。

そんな僕らに、心地よい風が吹く。寒いはずなのに、心の奥まで温めてくれる風。桜の木の枝を揺らし、たくさんの花びらを巻き込んで、浮かせて、飛ばせていく。


「あ、神谷くん、見て!」


ミナクが僕の手元を指差すので見ると、焼きそばの上に一枚の花びら。

ほんのりピンクがかった白いそれは、純粋なミナクの笑顔のように透き通っていた。


「なあ、ミナク」

「なあに、神谷くん」


また、そんなやりとりで始まった。


「これ、受け取ってくれないかな」


僕は、焼きそばと一緒に買ったものを、ミナクに差し出した。僕の顔は、ミナクに初めて出会ったときと同じくらいに赤くなっていた。


「え……?」


困惑するミナク。

僕の手には、桜をかたどった髪飾り。僕らの上で散っている本物の桜にそっくりな、薄いピンクの花びらと、垂れ下がって揺れる透明な雫型のビーズ。


「これ、私のために?」


僕は目を見開いて見る彼女のサラサラの黒い髪に、それをそっと差し込んだ。


「うん」


それはミナクの綺麗な顔にぴったり合って、一つになっていた。


「ありがとう、神谷くん!」


僕の愛するミナクは、桜色に笑っていた。

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