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愛する人は桜色に  作者: Halka
愛する人は桜色に
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桜の木の下のブルーシート

2週間が経った。

正確には、今日で2週間だ。


外では、例年より早咲きの桜が木の枝の上で楽しく踊っている。


まだ少し肌寒いのに、街はなぜか賑わっている。


彼女は3日前に病気の原因だった細胞を全滅させ、1日しっかり休んでからリハビリに入った。

さすがに5年以上も体を動かしていないので彼女の気分的に、リハビリにはあと1年くらいかかりそうだという。体調も変化なく、車椅子でなら外出許可が下りるようになった。病気が治ったことで今まで縛られていた反発のような感じで、はしゃいで騒いでリハビリも楽しんでいるように見える。

全ては、初めての花見のために。


去年僕と彼女が出会ったあの駅前広場の桜並木は、新たに大きなショッピングセンターを作ることになったとかで来年にはもう無い。

初めての思い出を作ったあの場所は、永遠に失われる。だから今年、最後の桜を見に行きたい、と言ったのは僕ではなくミナクだ。僕は正直言って、思い出すと恥ずかしいからあまり行きたくなかった。でも、最初の花見を、思い出のある懐かしい場所でやりたい、と熱弁したミナクを見て、かわいいな、と思ったから行くことにした。


その最初で最後の花見をするのは1週間後。もうすでに咲いている桜の木の下は多くのブルーシートと楽しげな家族でいっぱいになっていて、僕たちが入れる場所などなかった。だから少し時期を遅らせて、もっと満開の桜を、ゆっくりのんびり食べながら飲みながら見ることにしたのだ。さて、何を持って行こうか。今日は花見の下見ではなく、花見の席でミナクと食べるものを買いにきた。

病院で彼女が食事をするところを僕は一回も見ていないし、好き嫌いの話も聞かないから好みが全くわからない。それなら聞いてくればよかったのにと思うかもしれないが、それはやめたほうがいい。僕もそれを最初に考えた。しかしミナクはその質問に答えたのだ。

一言、「焼肉」と。

外でバーベキューでもやるつもりかよ。

残念ながら駅前でやるので焼肉は食べることができない。でもそれ以外に食べたいものがないらしく、だから今僕は困っているのだ。


「あ、おばさん」


電話をかけた先は料理が得意な叔母さん。


「あら、光希。そっちから電話して来るなんて珍しいわね、何かあった?」


今は仕事中だから出ないと思ってかけたのに、仕事本当にしているのかな、あの人。


「ミナクの好きな食べ物って知ってる?」


そう言うとミナクみたいにふふふ、と笑いながら言った。


「そんなのあなたの方がよく知ってるんじゃないの? まあいいわ。そうね、あの子は……焼肉、ね」

「……それ以外でお願いします」


なんだかんだで事情を知っていそうなおばさんはあっははは、と豪快に笑うと、少し考えてから言った。


「うーん、それ以外なら焼きそばが大好きよ。あー、懐かしいわ。前にミナクが病院食を全く食べない日にわざわざ私が作って持って行ってあげたのよ。すごい食欲だったわね」


焼いた物が好きなのか、ミナクは。

看護婦長がわざわざ焼きそばを作るって、すごい特別待遇な気がするけど。

でも、焼きそばならすぐに作れる。

これでも僕は料理が好きだ。おばさんが一日中ずっと仕事の時はしょうがないから自分で三食全て作っていたし、バレンタインにもらったチョコのお返しのクッキーも自分で焼いたりした。

こんな風に意外と役に立つスキルを習得させてくれたおばさんにはまあまあ感謝している。


ということで、スーパーにやってきた。行く前に確認した冷蔵庫の中身には、たしかニンジンとかキャベツとかの野菜が結構たくさんあったから、あとは麺。僕がそこまで麺にこだわらないので1番安い、ソース付きのやつをカゴに入れる。

帰る途中、女子中高生がよくいくような小物の売っている店の隣を通った。多分気の利いたモテる男の人はこうゆう店でプレゼントを買っていくんだろうな、僕はそんな人にはなれないな、と思いながらそのまま通り過ぎて……。

ふと、一つの髪飾りが目に入った。

目に入ったというか、光って見えた。


「はい、594円になります」


なんだか花見が楽しみになって、その日は家まで走って帰った。

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