病室に咲く向日葵
1月26日。
白で統一された清潔感あふれるエントランス。無駄なものは一切ない、静かな空間に、一見すると大学生に見えるほど長身の__実際は高校1年生なのだが__痩せた少年が立っていた。
外から見ると大きな潜水艦のような、不思議な形で、外観も内装も豪華、でも飾りすぎないホテルのような総合病院。
ナースが4人ほど並んだカウンターで通行証をもらい、エレベーターの前に設置されたゲートにかざす。
すると隣の壁のボタンが自動的に押され、エレベーターが降りてくる。
静かに、ポーン、と鳴って1階についたことを告げたそれに、彼は迷うことなく乗り込む。
今日彼がここに来たのには、ちゃんと理由がある。別に、彼自身が診察してもらいに来たのではない。
16階建の中の、15階。1番奥の10号室へ向かう彼は、たくさんの医者や看護師に静かに挨拶する。エレベーターの音も響かずに消え、聞こえるのは足跡、服が擦れる音と、ドアを開けるスーッという音のみ。でも、そのドアを開けた先では。
「こんにちは、神谷くん!」
ドアを開けた少年の名前を呼ぶ少女の声。そこにはにっこりと笑ったその少女の顔があった。
ああ、素敵な笑顔。
よく人は、このような笑みを"向日葵のよう"だとか、"太陽のよう"と表現する。
だがしかし、この少女の笑顔はそれ以上。太陽よりも明るく、周りにコロナが見えるのではないかというくらい。
この笑顔を毎日見ることができる僕は、明らかに他の人よりも幸せだ、と言える。
僕、神谷光希はこの笑顔を見に病院へ来たと言っていい。
1人部屋にしては広すぎる空間。赤が基調となった壁紙、面会者用なのに高級そうなソファや大型テレビが丁寧に置かれている。その部屋の、窓からの光が差し込んでスポットライトが当たっているベッド。
少女は頭だけを起こしてこちらを向いている。
「ごめんね、今日も調子悪くて。ここまでしか起きれなかった」
てへへ、という笑いで、ものすごい勢いで自分を襲っているはずの痛みをごまかす彼女と出会ったのは、今から1年前。今思えば、本当に、少女漫画のような運命的な出会い方だった。