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第8話 頼み

 座禅を組んで、最初に集中が切れたのはお腹が空腹を訴えたときだった。

 途中、雑念が入ることはあっても最初からやり直すことはできた。しかし、空腹を認識してしまうとそちらに意識がいき、雑念を払えない。

 そして、その日はそこで座禅を終了した。その後、食事をとってから、普段と同じように過ごした。


 シロツキに二三日かもとか言った自分が恥ずかしくなる。一日どころか半日集中が持つかどうかといったところだ。

 ただ、何かが掴めそうではある。





 何かが掴めそうで何も掴めずにいるもどかしい日々を過ごしながらも魔法道具の勉強は着実に進んでいた。


 書庫だけでなく、禁書庫の本も読み、ときに魔法道具をばらしたりしながら法則なんかがないか考えながら過ごしていた。

 最初は、魔法陣のことを知るつもりだったはずなのに、魔法道具を作りたくなっている自分がいた。


「魔法道具を作るなら親方とイオに聞くべきだろうな」


 親方と言うのは、グレンというドワーフだ。親方やおやっさんなんて呼ばれているという設定を作っていたらシロツキたちから本当に呼ばれていて驚いた。グレンというカッコいい名前で呼んでいるのは、セバスくらいだろう。

 親方は、鍛冶師であり、僕たちの武器を主に作っている。ただ、僕の杖に関しては、鉱石系のアイテムを主体としていないため、イオが担当している。


 イオは、親方が扱わない素材を扱う生産職の人造人間(ホムンクルス)だ。

 容姿に関してもこだわっており、美形の青年である。戦闘時のスタイルも【歌】という演奏系のスキルを使用する補助的な役割を担っており、何ともモテそうな優男だ。


 二人が僕の城にいる中で主な生産職であることは間違いない。では、どちらが魔法道具の製作に精通しているか。これに関してはどちらもそうであるし、どちらも違うと言える。

 と言うのも、魔法道具作成に当たり、【魔法道具作成】なんてスキルがあるわけではない。ゲームで魔法道具を作るためには、製法(レシピ)とその中に記載されている材料にその材料を適切に加工できる対応したスキルとレベルがあれば良い。

 そのため、二人とも魔法道具を作ったことはある。しかし、それを主にしている生産職でないのも確かである。

 そのため、とりあえず相談をする上で二人に尋ねることにしたのだ。


「無理だな」

「無理ですね」


 二人ともが匙を投げるかのように無理だと言い切った。

 完全なオリジナルでなくとも既存の魔法道具から少し改変を加えた魔法道具すら作れはしないかという問いに一言で切って捨てたのだ。


「主様よ、俺たちは発明家じゃない。これが、剣や防具だって言うんなら、どうにかしてみようとも思うが、魔法道具となりゃ話は別だ。

 俺たちには、魔法道具に刻み込んでいる魔法陣の意味どころか必要な素材がなぜ必要なのかすら分からない。でも、製法と違うように作りゃあ、動作しない。それを経験として知ってるんだ」

「カナデ様。頼って頂いたのはとても光栄に思います。そして、その信頼に答えることができず申し訳ないのですが」


 彼らの主張はもっともなのだろう。僕は実際に作ったわけではないから分からないが、彼らが経験として知っていると言い切ったのだからその通りなのだと思う。


「うん。分かった」

「分かっていただけましたか」

「じゃあ、一緒に考えようか」

「へ?」


 イオが理解できないというような素っ頓狂な表情で僕を見る。

 彼らからすれば、僕は彼らの主張を理解したと言いながら、逆のことを言いだしたようなものだろう。


「ですから、できないと——」

「別に君たちだけで作れというわけじゃないよ。一緒に考えようって言ったでしょう? 何もこんな魔法道具がほしいと要求したらできるなんて思っていない。それができるなら、僕がこの最近している勉強は何だったんだとなるしね」


 まあ、最近している勉強は魔法道具と言うよりも魔法陣の勉強だが。


「僕が頭を悩ませて、机上の空論を積み重ねて製法を考えたとする。でも、その製法なんかでそんな形になるわけがないという生産者としての意見があるかもしれない」


 僕は、拙いながらも言葉を重ねる。僕は、別に経営者でも何でもない。プレゼンなんて授業でやったぐらいだから、相手にどういう言い方をしたら上手く伝わるのかが分からない。

 親方もイオも僕の言葉を真剣に聞いて考えてくれているのだ。何か上手い言い方はないだろうか。


「言い方を変えてみようか。僕が魔法道具を作るのに手を貸してくれないかな?」


 そう言うと、僕の中でしっくりときた。そうだ、別に彼らに作って欲しくて魔法道具作りをしたかったわけではない。僕が作りたかったから彼らの経験(ちえ)を借りにきたのだ。


「僕だけじゃ、魔法道具は作れないから、あなたたちの知恵と技と経験とを僕に貸して下さい」


 僕は、そこまで言い切って頭を下げる。


「そんなふうに頼まれたら、断れねえな」

「はい。微力ながらお手伝いさせていただきます」

「ありがとう」


 これから、僕の魔法道具作りが成功するかどうかは、分からない。

 でも、きっとこれからは順風満帆とはいかず、仮説と実証、そして失敗の繰り返しになるだろうが、それでも少しは何かを得られるだろう。


「それじゃあ、今までに僕が勉強して、考えたことの検討からしたいと思うんだ」

途中、保存せずに閉じてしまって、書いてた文が消えてしまいました。思い出せない部分が良かった気がしてしまうのは何故なのだろう?

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