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第6話 日常

投稿までに日が空いてしまい、申し訳ありません。話も少し短めです。

 僕は執務室で本を読んでいた。


 マナに魔法に関する話を聞いてから、魔法については何となく分かった気がする。

 それからも必要な知識を得ようと考えて、午前中は本を読んで過ごしている。


 マナからすれば、魔法を発動するときに使用している魔法陣は魔法の補助のためのものだそうだ。

 しかし、それは魔導士のため、つまりは意思持つ存在が魔力を使用として魔法を発動させるためのものであり、意思やイメージと魔力で発動する魔法を助けるためのものだ。つまりはそれだけで世界に干渉する力はないらしい。


 だが、魔導士でなくとも魔法を使用できる例を僕は知っている。

 過程も結果も知らないが、魔力さえあれば発動できる物を知っている。


 魔法道具と呼ばれる物だ。

 魔力さえあれば、発動する人を選ばず魔法を発動できる道具。もっと言えば人なんかでなくとも魔力さえ流すことができれば良いため、魔石と呼ばれる魔力の結晶体でさえ魔法の発動ができてしまう。

 そこには、意思もイメージも関係ない。


 あれはどうやって発動しているのか。

 そこまではマナも答えられなかった。


 だからこそ、そこに希望を見出し、いくつかの仮定を立ててみた。


 一つは、魔法道具の魔法陣が完璧なものである可能性。意思やイメージなんて必要としない完全な魔法陣である可能性だ。

 もう一つは、残留思念のようなものが物に宿っている可能性だ。素材となった物自体にか、作られる過程で製作者の意思が宿ったか。

 最後にその物にやどる特性である可能性。


 どの仮定も外れている可能性もあるがそのことは考えても仕方ないので考えないことにした。


 仮定の確認なんかも含めて、いろいろな本を読み漁っている。

 また、魔法以外の手段もないかと、書庫や禁書庫の本は一通り目を通そうと思っている。


 しかし、本を読むのは午前中だけにした。午後も時間があれば読むこともあるが、午後には他のことをすることにした。

 魔法の勉強と言えば、そうとも言えるかもしれないが。


 午後になると外に出て、


「シロツキ、今日もよろしく」

「はい!」


 シロツキと向かい合って、杖を構える。愛用のタクトの形状の杖ではなく、ステッキと呼ばれるような杖だ。

 そして、シロツキも刀を構える。刃は潰している模擬専用だ。


 そう、模擬戦。もしくは、訓練を午後に行っていた。


 その杖を剣のようにもしくは、棍棒のように構える。

 魔法も発動できる状態ではあるが、魔法を発動させる意思はない。


この訓練の目的は三つ。


 一つ目は僕が近接戦闘を覚えること。

 魔導士と言え、近づかれれば何もできないではいけない。この世界で戦闘するようなことがあるかは分からないが、自衛手段は多いに越したことはないだろう。

 それに魔法に頼っている戦闘ではMPの消費があり、MPが枯渇してしまえば一気に弱体化してしまう。それを軽減するためにも近接攻撃の手段はあったほうが良い。


 二つ目はスキルを取得すること。

 この世界に来てからスキル取得に関する制限がなくなったようだ。そうであるならば、ゲーム時代は取らなかった近接系のスキルを取得しても良いだろう。そして、属性技のようなアーツを覚えることができれば、魔法についてなにか分かるかもしれない。

 シロツキたちが何となくといった感覚を知ることができれば、新しい魔法も創れるかもしれない。


 三つ目は腕を鈍らせないようにするためだ。

 ゲームであれば、しばらく戦闘しないと弱くなるなんてことはなかった。しかし、現在の非常に現実的な状況であれば、何もしなければ筋肉の衰えなどもあるかもしれない。


 ちなみに、戦闘訓練はシロツキ以外とも行っているが、やはり、回数はシロツキが多くなってしまう傾向がある。別にシロツキとの戦闘がし易いというわけではなく、他の者と模擬戦をすると露骨に残念そうな顔をシロツキがするためだ。


「じゃあ、いくぞ」


 僕はそう言ってから杖をシロツキに叩きつけようとする。


 当然、敵の攻撃が当たらない後衛から魔法を放つ僕と前衛で敵を切り伏せるシロツキとでは、普通に戦っても勝機はない。魔法を織り交ぜれば、シロツキ相手にも勝つことは容易い(・・・)。しかし、それは今回の目的とは異なる。


 シロツキは僕の攻撃を危なげなく捌く。


 シロツキに対して僕が近接戦で勝負をするためには、隙を作ってはならない。

 どんな時でも堅実に大技なんて使用せずに、相手からの反撃を想定しながら攻撃をしなければならない。そのためにも、視界は広く保ち、振りは小さく、相手の攻撃を想定する。


 僕は攻撃の手を緩めず果敢に攻める。その時も相手からの攻撃への警戒は解かない。

 それをシロツキは受け流したり、弾いたりなど様々な方法で僕の攻撃を防ぐ。


 僕の杖は魔力の通りが良い木を加工したものであり、シロツキが使っている刀は安全のために刃は潰していても金属を使用している。刃を潰していても普通にこれほど打ち合えば杖が折れてしまう。

 しかし、そうなっていないのは杖の素材が良いこともあるが、僕が【魔力撃】のスキルを使用しているからだ。【魔力撃】は武器を魔力で覆うことで攻撃力を高めるスキルだが、武器を守る効果もある。だから、こうして打ち合ってもそう簡単に折れたりしない。


 ある程度、僕が攻めている時間が過ぎるとシロツキが僕の杖を強めに弾いた。

 半ば強引に僕に隙を作らせたのだろう。ただし、想定の範囲なので距離を取ろうと足に力を籠める。その時に嫌な予感がした。


 僕がシロツキの攻撃を警戒しているのはシロツキも解っているはずだ。それなら、こうして強引に隙を作らされれば、僕が攻撃を来ると考えるのは当然のことだ。そしてシロツキは僕がそれに対処しようとすると考えて攻撃してくるはずだ。

 そうであるなら、安直に下がるのは危険であろう。

 直感的なものだが、後ろに下がるべきではないと思った。


 足に力を入れているし、思い切って弾かれた勢いを利用するように回し蹴りを放ってみた。失敗しても訓練なので構わないだろう。少し痛い目を見るかもしれないが。


 シロツキが驚いているような顔が見えた。

 そして、その次の瞬間、足に痛みが奔った。


「弁慶っ!」


 別に弁慶に恨みがあるわけではない。脛の部分であるいわゆる弁慶の泣き所に痛みが奔ったのだ。


 何が起こったのかはシロツキに確認することもなく理解できる。

 蹴りを防御されたのだ。それも刀で、脛に当たるように。


「カナデ様、攻撃に格闘を織り交ぜるのは悪くはないですが、使うタイミングは考えた方が良いですね。そのように相手の防御の仕方次第では、攻撃を受けるのが自分になりますので」

「ああ。身に染みて理解できた」


 こうして、痛みで覚えれば馬鹿でも嫌なことが分かる。


「いいえ、もう少し言わせて下さい。今回、私が使っていた刀は、訓練用に刃を潰していましたが本来の私の武器であれば、今頃足とはお別れになっていました。理解していましたか」


 確かにその通りだ。普通の刀では、足を切断するのはそう簡単ではないだろうが、シロツキが所有している刀であれば、僕の足を斬り落とすことは木の枝を斬るかの如くできてしまうだろう。


「注意する」


「それでは、もう一度立ち合いますか?」

「ああ、頼む。『ヒール』」


 足に回復魔法をかけてから立ち上がり、もう一度シロツキに向かい合う。

 その数秒後か数十秒後かに地に伏している自分を幻視しながら。


 当然のことのように一度も勝つことなく、訓練は終了する。


 その後、食事を取り、風呂に入り、睡眠を取る。


 夜の寝室で休む時間だけは、一人の時間だ。

 シロツキが常に側にいてくれるだけで、余り考えずに済んでいるが、一人になると途端に不安が思考を覆ってくる。


 もしもこのままの変化のない日常で一生が終わってしまうのではという漠然とした不安。

 自分が今していることは無駄ではないのか。そういった考えが消えはしない。いや、日に日に強くなっていく。

 そのことにどうにかしなければと焦りを覚える。


 そういった負の思考に陥りながら、意識が落ちていき、また今日という日が終わる。


 明日は、何か変化がある日でありますように。

訓練とはいえ、戦闘の描写は難しいです。

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