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第3話 確認指示

「さて、まず確認しないといけないのが、周囲の確認と城内の確認だよね。僕が見た感じ、周囲に海以外のものは見えなかったんだけど。みんなはどう? 島や船、魔物とか見なかった?」


 僕の質問に何かを見たって言う人はいなかった。


 しかし、全く何の発言がなかったわけでもなかった。


「………主様。………周囲の生物の反応は、魚ぐらい。………気配の大きさから見て、脅威となるような存在は近くにいないと思う。………私の察知を掻い潜るのがいたら、分からないけど」


 発言したのはヨルだった。


 ヨルはゲームにおける僕の種族と同じ混血種という種族のキャラである。混血種は人と容姿の面で大きな変化はない。

 見た目は忍者を意識して作ったおり、衣装は忍び装束を着ている黒髪黒目の小柄な少女である。口元を布で覆っているためかそれとも性格によるものかその声は聞き取れはするが少し小さい。

 スキルは自身の気配を消す【気配遮断】や周囲の気配を探る【気配察知】など、自身は隠れながら情報を集めることに向いているキャラである。


 ヨルについて考えたときに僕の種族としての扱いがどうなっているのかは、気になったけれどその確認は後にしよう。


 先ほど、ヨルが語っていた気配の話は、その【気配察知】のスキルによるものだろう。

 もし、ヨルの【気配察知】で分からないとなれば、気配を消すスキルがヨルと同等かそれ以上、もしくは精霊のような実体を持たないような存在だけだ。しかし、ヨルは【魔力察知】と呼ばれるスキルもあるため、レベルが同格程度なら精霊であれどその気配も見つけることができる。


 ヨルの察知を掻い潜れるのは僕の仲間でもマナくらいだろう。マナは基本的に実体化しているが、その存在は魔力の塊が神格を持ち意思を持ったものとされている。

 そのため、霊体化することができ、その魔力も自然のそれと変わらなくすることができるため、気付かれることがないらしい。


 しかし、そんな特異とも言うべき存在は考慮しても対策のしようもない。

 ここは、ヨルの能力と話を信じるべきだろう。


「ヨルがそう言うんなら、周囲に問題となるような存在はいないってことでいいだろうね。それじゃあ、次の確認。城内に異常は見られないかな? どんな些細なことでも気になった点は報告してほしい」


 次は、城内の確認だ。これから生活するこの城の確認は早急にしておきたい。


「カナデ様、いくつかの機能が使えないようでございます。私が確認したのは城内の転移と念話ですな」


 発言をしたのは、セバスであった。


 セバスは、老紳士のような見た目をして執事の服装を身に纏う少し優し気な雰囲気を持つキャラである。

 種族は普通に人族であり、執事のキャラ付けのためにゲームにおいて有用な場面がないと言われる【家事】などのスキルを持っており、戦闘においては武器を持たずに戦える格闘を主としている。

 そして、僕が作った数少ない男性型のキャラである。


 セバスが言った機能はゲームでのシステムとして存在していたものだ。転移は自身の城内を自由に移動するための手段であり、他のプレイヤーと戦闘中でなければ好きなところに一瞬で移動することができた。念話はプレイヤーから味方に対し指示を出すためのシステムであった。そのどちらのシステムもゲームにおいて、メニューから使える機能であるため、メニューが使えない現在使えなくて当然だと思っていた機能である。


 セバスの発言によると、あの二つのシステムは城に付随した機能ということになる。その機能の力の根源はメニューから使用できていたことと現在使えないことから神の力によるものだったのではないかと推測できる。


「そう。他の人でそういった城の機能で使えなくなっているのを確認した人はいるかな?」


 しかし、他に確認したと言う者はいなかった。


「城の機能の一部が使用できなくなっていると言うのは不安だね。何が使えて何が使えなくなっているのは正確に把握しておきたいな。一度、城内を見て回って確認する必要がありそうだね」

「ご命令いただければ、私たちが確認してきますが?」


 シロツキが命令してくるのを求めてくる。

 普通は誰からであろうと命令されるのは嫌だと思うのだが、指示に従うために作られた存在である彼女らには当てはまらないのだろうか。でも命令を求めているシロツキは確定的にないだろうけれど、ここにいる人たちでも命令はされたくないって人もいるかもしれないから、そう命令

 まあ、やってくれると言うのなら頼るべきだろう。人手が必要なのは確かだし。


「そうだね。じゃあ城の周囲と城内を分けて確認してきてもらおうか」


 城内の通常の設備は誰でも構わないけれど、城の周辺は海であるために確認できる人が限られてくる。


「城の周辺調査は、クロナに任せてもいい?」

「はい!」


 僕が周辺の調査を頼んだのはクロナと言う猫人って言う猫の獣人の少女だ。

 クロナはシロツキの次に作ったキャラであり、シロツキと対照的に黒髪黒目の容姿である。肌も黒くしようか悩んだが、白い肌の方が似合っていそうだったので肌はシロツキと同じく白い。シロツキが冷静沈着なキャラであるのに対してクロナは天真爛漫な活発なキャラである。


 クロナは海を泳げるっていうキャラではない。猫らしく水の中は苦手なキャラである。

 それなのにクロナを周辺調査、つまりは海の調査に選んだのは当然理由がある。

 クロナは魔物使い(テイマー)であり、騎乗兵でもある。この城内にいる魔物はマナを除いて彼女がテイムした魔物である。

 そして彼女がテイムした魔物の中には黒竜という種類のドラゴンがいる。戦場においては、空で戦い制空権を確保するのが基本的な彼女の役割であるわけだが、現在はその飛行能力で空から周辺を見てきてもらおうと考えたわけだ。


「クロナに周辺で見てきてほしいのが、島や大陸の陸地、他には船、または大きな生物や脅威になりそうな魔物なんかがいないかどうかを確認してほしい。注意してほしいのが、この城の位置が分からなくならないようにすることかな。見失うと帰ってくるのが大変だからね。見つからなかったらそれで良いから、無茶だけはしないでね」

「はい! 分かりました!」


 元気なキャラっていうのは何とも馬鹿っぽく感じてしまうから不安になる。実際はそんなことないのだが。

 まあ、黒竜は知能も高かったはずだから大丈夫だろう。


「あと、海中も探索してもらいたいんだけど、何かいい案ないかな?」


 城を支えているであろう地面はどうなっているのか、海の中に危険そうな生物はいないのか確認しておきたい。【水泳】のようなスキルを保持していて、そのレベルがある程度高かったら任せられるのだが、そんなキャラはこの城にいない。

 スキルを保有してなくても能力があれば、スキルを使えるのは【魔力撃】の件で確認できているが、いきなり海と言うのは、リスクが大きすぎるだろう。


「私が確認するのがよろしいかと」

「フィアナが?」

「はい」


 海中の確認を申し出たのは、フィアナだった。


 フィアナは金髪に翡翠色の眼に長い耳を持つ典型的なエルフであり、精霊魔法を行使する精霊魔導士である。

 精霊魔法とは、精霊と契約して魔力を対価に精霊の力で世界に干渉する魔法である。

 フィアナが契約している精霊は魚の姿をしている水の精霊であったはずだ。その精霊の力で海の中を見てくると言うことだろうか。


「ヌイに頼んで水中でも息をできるようにしてもらいます。具体的には泡のようなもので顔の周りを囲んで空気を確保します。ヌイの力であれば、水中でも攻撃手段くらいはありますし」


 ヌイと言うのはフィアナが契約している精霊の名だ。

 予想通り、精霊魔法によって対策するらしい。しかし、そんな魔法を僕は知らない。少なくともゲームでは存在しなかったはずだ。

 精霊魔法はゲームの設定では自由度が高い魔法とされているが、実際には種類が違う魔法でしかなかったはずなのだが、これも自由度が増えたことでできるようになったのだろうか。


「フィアナは泳げるの?」

「どうでしょう? ですが、最悪ヌイに運んでもらえば良いですし」

「分かった。フィアナを信じるよ。でも、予想外のことがあったらすぐに引き上げるように。それと、泳ぎって意外と体力使うらしいから時間は短くて良いし、遠くまで確認もしなくて良いから疲れを感じる前に戻ってきてね」

「分かりました」


 これで取りあえずは城の外は大丈夫だろう。と言うよりもこれ以上確認できそうな事項がないのだが。


「他の人には城内の確認をお願いしたい」


 城内で問題となりそうな箇所が魔法が使用されている部屋だ。というより、城に掛かっている魔法が正しく作動しているのかが気になる。


 特に重要なのが、『結界』と『拡張』の魔法だ。

 両方とも名前の通りの魔法であり、結界は城の周囲を覆っている防御魔法だ。ゲームでは遠距離からの攻撃を防ぐ目的に使用されていた。それでも攻撃を重ねれば破ることもできるのだが。

 拡張の魔法は部屋ごとに掛かっている魔法であり、周囲から見た大きさと中の大きさが違って部屋の中が大きくなっているという魔法だ。倉庫や宝物庫、武器庫などアイテムを多く格納している場所などに使われている。


 拡張の魔法に関しては、魔物たちがいる部屋も拡張されているからもしものことを考えると心配だ。しかし、クロナが城内の異常として報告していないことから大丈夫だろうなとも思っている。


「宝物庫、倉庫、武器庫については置いている物のリストも作ってほしいんだけど」


 ゲームであれば、一覧を見ることもメニューで容易だったが今はそんな方法を採ることはできない。もしかしたら、物を見ても分からないかもしれない。


「マキナにお願いしようか」

「了解しました、マスター」


 マキナは機械人(オートマタ)の少女だ。その特性として、記憶力などの正確性は確かであるはずだ。

 容姿は機械のようなものが所々に見えており、青髪碧眼で表情が余り面に出ておらず無機質な感じがする。

 しかし、注視すれば目尻や口角などに多少の変化も見える。今は本当に無表情に見えるのでどう思っているのか分からないが。

 もしかして、不満だったりするかな? 考えてみれば、仕事の量が多いし。


「一人で大変そうなら、他の人にも頼むけど?」

「私一人で大丈夫です。ですが、マスター、私には宝物庫に立ち入る許可がないのでそれを頂けますか?」

「え………、あぁ、許可する」

「ありがとうございます」


 確か宝物庫などの重要度が高そうな場所はプレイヤー以外は味方キャラでも入れないっていう設定だった。正確には許可がないとという設定だが、ゲームのときは許可する機能もなかったし、不便にも感じてはいなかったので忘れていた。

 しかし、確認してっていう場所に入る許可を求めてくる辺り、律儀というか融通が利かないというか、何ともマキナの性格が出ているのだろう。


「他の人たちには、他の場所を確認してもらってもいいかな? 誰がどこを確認するかだけど、セバスに任せていいかな?」

「かしこまりました」


 正直、城内の全ての施設について覚えていないのだ。そのため、誰がどこを担当するか割り振ろうにも確認できない場所があっては困る。

 セバスなら満遍なく公平に適切な場所に必要な人を配置してくれるだろう。


 ただ、シロツキ辺りが直接の指示がなかったことに多少の不満そうな、残念そうな顔を向けてくる。シロツキの忠義は嬉しいが、何とも悪いなと思いながらも遠くに置きたくなってしまう。流石にそんな指示をしたりはしないが。

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