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34.美女屋

本日2話目になりますのでご注意を。

ちなみに明日も2話投稿予定です。

それでようやく『スキル屋』編が終わり、それから少しリアルは挟みますが、いざ冒険へ……となります。

『しかし、まさか結界より先に壁に限界がくるとはねー盲点だったわ』


「はぁ、そうなんですか……」


『あの結界はね。衝撃を吸収し終えてから反射する仕様なのよ。それが、吸収し切れないなんて。吸収する速度がそれほどでもないとはいえ、普通支障はないはずなんだけどねー。一体どんな衝撃だったんだって話よ』


「どうといわれましても……」


 私達は結局あのあと、目の前の幼女さんに拉致……もとい屋敷に案内され今は応接室のようなところで、テーブルを隔てて向かい合わせに座らされていた。

 ちなみに、あの扉はその後、幼女さんが一瞬で復元してました。

 どうやったのか聞くと当然【魔法】との返答が。

 ちょっと万能すぎやしないだろうか。私が聞いてる【魔法】とは全然違うんですけど。


『さて、こうやって店主として招いた以上は、【スキル屋】として商売しないといけないわけなのだけど』


「どうぞお気遣いなく……」


『そうも言ってられないわよ。さて、貴方達は一体どんなスキルを欲しているのかしら?』


 一応の希望は聞いてくれるということなのだろうか?

 アクア達とはまた違う意味でマイペースな人だったから、勝手に決めつけられるのではと思ってドキドキしていたのだけど。


「はいはーい! 私【魔法】がいいでーす!」


「俺も【魔法】だな」


『なるほど。そうすると貴方も?』


「あ、そうです。他のスキルはいまいちよくわかっていないので」


 当初の予定通り私達は【魔法】スキルを希望した。

 すると、幼女さんはなぜか意外そうな顔をしている。なにゆえ?


『あら、そうなの? そう言う割りには貴方と貴方、ちゃっかり【料理術りょうりじゅつ】を取得しているじゃない』


「「え?」」


『ちなみに、貴方は【銃術じゅうじゅつ】ね。見かけによらず物騒ねー』


「そんなのがわかるんですか?」


『この屋敷にいる間はね。【スキル屋】として、そういった情報は必要不可欠だからねー。あ、もちろん他言はしないから安心して』


「はぁ……」


 【料理術】なんていつの間に?

 もしかしたら、それっぽい武器を使っていれば勝手に覚えたりするものなんだろうか?

 『忘備録』にはそんなこと書いてなかったんだけどなぁ……でも、そう考えないことには私達が既にスキルを取得している説明がつかないわけだし。

 きっとそういうことなのだろう。


 念のためメニューからスキルの欄を確認してみるとそこには本当に【料理術】の記載があった。

 でも、私はともかくなんでシズクにも【料理術】が?

 たしかにシズクが今使っている【砕辰さいしん】は鰻を捌く時に使う包丁みたいな形をしてはいるんだけどさ。

 あれを調理道具と呼ぶには少々……というかだいぶ無理があるような。

 もしかしたら、まだ私が見ていないシズクの耐久無限装備がそういった形状なのだろうか。

 そういや、まだ見ていなかったね。シズクと会って以降、未だ街の中をうろうろしているだけなのだから、仕方がないと言えば仕方がないんだけどさ。


 対して、アクアの【銃術】はわかりやすい。なんせ見たまんまなのだから。

 しかし、【銃術】なんてものもあるんだね。幼女さんが言う通り物騒なことこの上ない。まぁ、『Free』のことだから、きっとそれ以上に物騒なスキルも用意されているのだろう。


「私だけ仲間外れ……」


 と、私が考え事にふけっていると、隣から呟くような声が聞こえてきた。

 見るとアクアが明らかに暗い表情で落ち込んでいる。

 【料理術】、1人だけ取得していなかったもんね。でも、仕方ないよ。たまたま、そういった武器に出会う機会がなかっただけなんだし。

 むしろ、個人的には銃なんて大当たり中の大当たりだと思っている。正直ちょっと羨ましかったり。

 とはいえ、こんなに落ち込んでいるアクアにそんなことを言っても仕方がないので、ここは素直に励ますことにしよう。私も逆の立場なら、落ち込んでいるかもしれなかったわけだし。


「大丈夫だって。取得すればみんな一緒でしょ? ほら、ここは丁度【スキル屋】なんだし。そんなに落ち込まないで。ね?」


「……うん」


 私はアクアの頭を撫でながら、優しく語りかける。私を挟んだもう一方の隣に座るシズクも声には出さないまでも、そんな私達の様子を優しい表情で静かに見守っていた。


『何貴方達。もしかしてそういう関係なの?』


「え? 何か言いましたか?」


『あ、いえ。なんでもないわ……』


 珍しく幼女さんの歯切れが悪い。

 顔も若干赤らんでいるような?

 私の気のせい?

 なんだかよくわからないけど、アクア……っていうか、マリンは私の大事な親友の1人だよ。

 もちろん、シズクことミカもだ。

 そこに差なんてものはない。


「ということで、【魔法】の前にまずは【料理術】を1つ頂きたいのですが……」


「ええ。別にそれは構わないのだけど……」


 とにかく、先に落ち込むことになった原因を解消しよう。

 アクアにこんな表情は似合わない。

 笑顔がアクアの代名詞なのだ。


「やっぱり私いらない!」


「……え?」


 唐突なそのセリフに理解が追いつかず、その理解が追いついた時には少なからずショックを受けている私がいた。

 どうして? 私達と一緒じゃなくてもいいってことなの?


 不安になっている私をよそに、アクアは私の目をじっと見つめて、真剣な眼差しで語りだした。


「正確にいうと、『今はまだいらない』かな?」


「ん? どういうこと?」


「私も【スキル屋】で購入するんじゃなくて、2人と一緒で、自然に取得してみたいの。だから、今はいらない」


「……そっか。そだね」


 単に形だけじゃなく、自然と【料理術】を覚えるような武器を見つけないことには、ちゃんとした意味で私達と同じとは言えないもんね。


「私にあった【料理術】の武器。きっと探し出してみせるんだから!」


 そう言うアクアの瞳は決意に満ち溢れていた。


「わかった。私達も協力するからその時はなんでも言ってね」


「うん! ありがとう!」


「こらっ! もう……仕方ないなぁ……」


 抱きついてくるアクアを押しのけようとも思ったが、さっきまで暗い表情だったアクアを思い出すとそれもなんだか躊躇ためらわれて……結局、頭を撫でるに留まってしまった。

 なんだかんだ言って私も甘いなぁ。


『やっぱり貴方達……いえ、別に他人の趣味趣向をとやかく言うものでもないわね。でも、なんでいちいち私の目の前で……っていうかそろそろいいかしら? ねぇ聞いてる?』


「「「……あっ」」」


 幼女さんからの問いかけに、そこでようやく本来の話から脱線していたことに気づいた私達は、やっとというかなんというか、本題へと入るのであった。




「そういえば、なんでこの店って【スキル屋】って名前なんですか?」


 私達はスキルを購入するため、応接室から出て現在は移動中だ。

 おそらく、その先に目的の物が保管されている部屋があるのだろう。

 その道中、私は少し気になったことを幼女さんに聞いてみることにした。


 そう、それは店名に関して。

 【スキル屋】とは武器屋や防具屋といった、いわゆるその店の種類を表す名前だ。

 それをこの店はそのまま店名としてつけている。

 気になってしまうのも仕方のない話だった。


『そんなの決まってるじゃない。扉も通ってこれないような者に教える店名なんてないからよ』


「あ、そういうことだったんですか」


 単にプライドの問題だったらしい。


『そうよ。何か悪い?』


「あ、いえ、そうじゃなくて……」


『だったら何よ』


「私達には教えてもらえないのかなぁ? と……」


『あれ? そういえば言ってなかったかしらね』


 幼女さんは私達に振り向くと、指を差しながら声高らかに言い放った。


『この店の名前は【美少女が営むスキル屋さん】、略して【美女屋】よ! どう? いい名前でしょ?』


「「「……」」」


『……何よ。なんか文句あんの?』


「い、いえ……」


 略した途端、【スキル屋】としての原型がほぼ無くなっているんですけど。

 店主的にはそれでいいの? いいのか。さいですか……いやでもさ。


「……よっ! ナイスセンスッ!」


「【美女屋】がやっぱり世界一ぃ!」


『ふふふーん。そうでしょうそうでしょう。もっと崇めることを許可するわ!』


「「よっ! 【美女屋】っ!」」


『ふふふふふーん!』


「……」


 なんなのだろうこれは……

 2人のヨイショに気をよくした幼女さんは、その掛け声に合わせて次々とポージングを変えている。

 相当気分もいいようで、今にも後ろに倒れそうなくらいに背中もけ反り上がっちゃって。

 2人もそろそろやめたほうが……このままだと本当に幼女さん倒れちゃうよ?


 私は目の前で突如繰り広げられた、歌舞伎もどきをただただ見守ることしかできなかった。




「ねぇねぇ、世界一の魔法使いのお姉さん」


『どうしたの、そこの正直者の貴方』


「もう、私の名前はアクアだよー」


『そう。で、そのアクアが一体どういう用件なのかしら?』


 件の騒動がようやく収まり、目的地への移動を再開したところ、アクアが唐突幼女さんに質問を投げかけた。


「お姉さんのお名前はなんて言うの?」


 ……そう言われればたしかに。

 今まで、終始幼女さんのペースだったからか、名前を聞くことすら忘れてしまっていた。

 そもそも、質問する暇すらまったくなかった気がする。

 いやむしろ……今思えばそういった質問自体をされないようにされていたような……そんな気さえした。私の考え過ぎかな? うん、さすがに考え過ぎだろう。


 そんなことを考えながら、じっと幼女さんの回答を待っていたんだけど。


『……』


 あれ? 返事がない。ただの屍であるわけでもないのに急にどうしたのだろう。

 もしかしたら、物凄いキラキラネームだったりするのかな?

 だとするとご愁傷様ですとしか……いや、この世界は私達の世界とは違う。なら、勝手に名前を変えればいいだけだと思うのだけど。


 私が答えのない疑問に頭を悩ませていると、幼女さんはその歩みを止め、振り返った。

 その表情はなぜかとても苦々しいもので……しばらく間を置いたあと、幼女さんはこれまでに聞いたことがないようなか細い声でやっとその質問に答えてくれた。


『……マリアよ』


「え? おねーさんよく聞こえな――」


『マリアだって言ってるのよ! 1度でちゃんと聞き取りなさい!』


「えーだっておねーさんの声が小さ――」


『ところでそこの貴方!』


「は、はい!」


 アクアの抗議などお構いなしに、問答無用で質問を終わらせた幼女……もといマリアさんは急に私を指差してきた。

 先程の声が嘘のような大ボリューム。

 そのあまりの気迫に返事と共に思わず背筋が伸びてしまう。

 なんだろう……何か気に入らなかったのかな……マリア……いい名前だと思うんだけどなぁ。


『貴方のその体捌きは誰かに教わったりしていたのかしら?』


「体捌き……ですか?」


『そうよ。扉を攻撃する時にくるくる~って回ってたでしょうが』


「え? あ~あれですか」


 ん~、教わったといえば教わったことになるのかな?

 ただ、教わったというよりも、どちらかと言えば盗んだというニュアンスの方が近いわけで。

 しかもその対象がどこの誰かすらわからないおっさんからときたもんだ。

 とても、教わったとは言えないだろう。


「え、えっと……別に教わったわけでは……それがどうかしたんですか?」


『……なんでもないわ。ちょっと、いけ好かないじじぃのことを思い出しただけよ。気にしないで』


「……」


 それってまさか……あのおっさんのこと?

 だとすれば、マリアさんって、あのおっさんとお知り合いということに……

 でも、いけ好かないじじぃとまで言っているくらいだ。あまりいい思い出でもないのだろう。

 触らぬ神になんとやら。気にはなるが、ここはあえて何も聞かないを私は選ぶ。

 私に無難な人生を! それはもう巻きに巻かれて生きていく所存です!


 そうこうしている内に、マリアさんは足を止める。

 見ればその先には大きな扉。

 とうとう目的地に到着したということなのだろう。

 『忘備録』で下調べ済みとはいえ、【スキル屋】と呼ばれているところに来るのはこれが初めて。

 どんなスキルがあるのか、今からとても楽しみだ。




ちなみに、他の【スキル屋】では、たとえ店内にいたとしても冒険者のスキルなんてわかりません。

じゃぁなんでこのマリアはわかるのかというと……私にもわかりm(これ以降は文字が乱れて読めないようだ)

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