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33.魔女っ子

展開を早めるために、本日は2話投稿です。

『ゲホッ! ゴホッ! ちょ、ちょっと! 何がどうなってんのよ!』


 埃が舞う中、咳き込みながら現れた人影。

 屋敷の中から現れたということは【スキル屋】の関係者と見て間違いないだろう。


『こんな無茶苦茶な開け方をする人なんて初めてよ! 一体どうしてくれるのよ!』


「あ、いや。かるーくノックをしたら壊れちゃったみたいで……」


『あんなのが軽くなわけないでしょうが! 中から見てたのよ! 何なのよそれ! ただのフライパンじゃないの!?』


「いえ、少々大きくはありますけど、普通の……ってか、中から見てたんですか?」


『そりゃなんだって、皆が皆、躍起になって扉を攻撃しては無様に帰っていく後ろ姿を見て飲む酒が格別で……って何言わせるのよ! 見てないわよ!』


 あ、わかった。

 この人、少々性格が捻くれ曲がっていらっしゃる方だ。


「あ、そうなんですかーそれは大変でしたねーそれじゃ、私達はこれで……」


『ちょっと待ちなさいよ!』


「いえ、待ちません!」


 私は2人の手をとって素早く門へとダッシュした。


 なんだろう。世の中には関わっちゃいけない人というのは一定数存在するもので。

 店を手伝ってる私も今までそういった人達を数々見てきた。

 まぁその大半がお母さんに返り討ちにされているわけなのだけど。

 ちなみに、残りはお父さんだ。

 といっても、こっちは主に『料理対決』での返り討ちだったりするんだけどね。

 ただし、面倒くささで言えば断然お父さんが相手にしていた人達の方が上だったようで。いつも、対戦後のお父さんは心なしかげっそりとしていたように思う。


 とにかく、後方から迫る女性にはそういった人達と同じ香りがした。それはもうぷんぷんと。

 本能も囁いている。


 ――「面倒くせーやつっすよ!」と。


 だから、私は絡まれる前に逃亡を図ったのだった。それはもう全力で。

 2人も私の意図に気づいたのか、特に引っ張る必要もなく付いてきてくれた……のだが、それは少々手遅れだったようで……


『待ちなさいって……言ってるでしょうが!』


「「「うわっ!」」」


 後ろから聞こえる怒声と共に、私達の目の前には大きな土の壁が一瞬にしてそそり立った。


「な、なんじゃこりゃ!?」


『そんなの、【魔法】に決まってるでしょうが!』


 壁を前に愕然とする私達に追いついた女性は未だ怒り心頭といったところ。

 これはまずい気がします!

 なんとか鎮める方法を探さないと!

 でも何も思いつかな――


「す、すげぇ!」


「かっこいー!」


『え? ふ、ふふーん。そう? そうでしょーそうでしょー。なんなら、もっと褒め称えてもいいのよ』


「よっ! 大統領!」


「世界一の魔法使い!」


『ふふふーん! 何もそこまで言って欲しいだなんて言ってないわよー。でも、悪い気はしないわねー!』


 私の混乱をよそに、逃げられないと悟った2人はまるで事前に打ち合わせをしていたかのように、急に目の前の女性を褒め称え始めた。

 途端によくなりだす女性の機嫌。


 え? もしかしてこの人って……チョロいの?

 2人を見れば、私にアイコンタクトを送ってきている。

 あ、私も言うの? そういうのあんまり得意じゃないんだけど……でも、ここは言う以外の選択肢はないのだろう。仕方ない。私の中の脳細胞よ! 今こそ極上の褒め言葉を我に!


「す、素敵な魔女ですねー!」


『誰が魔女よ! 私は魔法使いではあるけど魔女ではないわよ!』


 ダメだったー!

 機嫌をよくするどころか、何故だか逆に怒り出しちゃったよ!

 どうやら魔女という単語は地雷だったようで……

 でも、なにゆえ?


「え、えと……違いがよくわからないのですが……」


『魔女はなんかおばあちゃんのイメージだから嫌なのよ! だから魔法使いなの! いいわね!?』


「は、はい!」


『よろしい』


 そんな勝手なイメージ、わかるわけがない。「なんぞそれ!」と喉元まで出かかった言葉を私は必死に押し殺した。

 とにもかくにも、未だ口調自体は荒いものの、2人の機転によりだいぶ怒りは静まってくれたようには見える。

 本当に2人がいてくれてよかった。感謝しかない。

 でも、わざわざ魔法まで使って私達を追いかけてきたこの女性。

 目的がまったくわからない。

 一体なぜ?


 私が今も粉塵撒き散らしながら倒れている扉から必死に視線を外してその目的を考えていると、女性は若干ため息混じりに話しかけてきた。


『何もそんな顔をしなくったって、とって食ったりなんてしないわよ。扉の弁償も構わないわ。そもそもこちらから挑発しておいて、壊れたからはい弁償なんて格好悪い真似できるわけないじゃない』


「そ、そうですか……」


『そうよ。だからとりあえず安心しなさい』


 よ、よかった……

 てっきり扉の修理費を請求されるものとばかり……無一文には辛い要求だったのです。

 でも、その不安が解消されたおかげでますます女性の目的がわからなくなってしまった。


「で、ではなんで……」


『無理矢理とは言え、一応条件をクリアーしたわけだしね。ここの店主としてそれなりの対応をするのが礼儀ってもんでしょうが』


「な、なるほど……」


 目の前の女性は、走って乱れた身だしなみを整えながら私の質問に答えてくれた。

 どうやら思っていたよりもちゃんと受け答えはしてもらえるみたい。少し安心。

 っていうか、この人まさかの店主だったのね。

 まぁ屋敷内から出てきたわけだし、その可能性もないわけではないのだろうけど。

 にしても、ちょっと幼すぎやしないだろうか。


 その女性はどうみても6~7歳にしか見えなかった。

 腰まで伸びる金髪が、彼女が何か言う度に僅かに降り注ぐ陽の光を反射してキラキラと煌めきながら揺れ動く。ん~キューティクル。

 頭にはそれ意味あるの? と、問いかけたくなるほど小さな帽子がちょこんと斜めに乗っていた。

 全身を赤いドレスで身を包んでいるのだが、容姿に見合ったかわいい系ではなく、深めのスリットが入ったとてもセクシーな格好であった。見掛けとのギャップが凄い。

 それくらいの外見の子は普通は絶対にしない服装だった。

 よくサイズがあっなぁと思う。

 オーダメイドなのだろうか?


『言っとくけど、こう見えて貴方達よりは年上だからね。それなりの敬意を表しなさいよ』


「わ、わかりました」


『何? 不満なの?』


「いえいえ、とんでもない!」


『そう。わかればいいのよ。わかれば』


 しかしながら、なんとも奇妙な【スキル屋】の店主に目を付けられてしまった。

 まぁ自業自得ではあるのだけれど。

 これから私達、一体どうなるのだろう。物凄く不安だ。




2話目は23時投稿予定です。

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