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11.2日目

「ただいま〜……」


「おかえり。今日は遅かったわね。ってどうしたの? なんだか疲れてるみたいだけど」


「うん、ちょっとね」


「大丈夫なの?」


「うん。心配しないで」


「そう? なんならお母さんがその悩みを……」


「いい、いい! ホントに大丈夫だから! 安心して!」


「環那がそこまでいうなら構わないけど……何かあったらお母さんに相談するのよ? 大体のことは解決してあげられるはずだから」


「は、はーい!」


 あ、危なかった。

 お母さん、私を思ってくれるのは嬉しいんだけど、その言葉が物騒に聞こえるのは気のせいだろうか? たぶん気のせいじゃないんだろうなぁ。


 私は鞄を机の上に置くとそのままベッドへとダイブした。疲れた。

 このまま眠ってしまいそうになるけど、とりあえず、着替えてから『Free』を立ち上げよう。

 マリンともゲーム内で会うって約束したことだしね。


 結局、私はキャラの作り直しはやらないことにした。

 プレイヤーの目は怖いが、所詮一過性のものだろうと、割り切ることにしたからだ。マリンの「あのアバター消すのはもったいないよ!」という必死の説得も後押ししている。

 それに、私もあのアバターは気に入っているのだ。気合入れて作ったからね。およそ2時間の集大成。こんなことで消したくないというのが正直なところであった。


「さてと……では、『Free』2日目、やりますかー!」


 少し元気がでたのはきっと気のせいじゃない。私もゲーマーだなぁ。




 ログインした【ニューディール】の町はまだ薄暗かった。

 ただし、夕方ではなく明け方の薄暗さなわけなのだけど。

 なぜなら、『Free』における1日の周期がリアルとは異なるからだ。

 この世界の1日はリアルの12時間。

 そして、リアル時間の朝5時とゲーム内の朝5時が同期している。

 つまり、下校した今の時間はその起点から約12時間後にあたるため、これからこの世界は朝を迎えることになり、ちょうどこの時間帯辺りからログインし始める私達には、実に都合のいい周期と言えた。

 まぁ、単にピークタイムが学校や仕事終わりである夕方からなので、それに合わせただけといえばそれまでなのだけど。

 ただ、0時頃にログアウトしてしまう私にとっては、この周期ではぎりぎり夜を体験することができないため、今後夜限定のモンスターなどを倒さないといけなくなった場合、非常に面倒くさいなぁとは思ったりしている。

 今はただそうならないことを祈るのみだ。


「さて、マリ……アクアはどこにいるのかなぁ?」


 マリンことアクアとは、女性の像がある広場の前で待ち合わせすることになっていた。

 ホントは別の場所がいいんだけど、私がこの場所しか知らないもんだから仕方がない。出会うまでの辛抱だ。


「あれ?」「ほら、あの子の」「例の……」「サインもらおうかな?」


 い、いきなり周りのプレイヤーにざわざわされている。うう、居づらい。

 早く来てくれないかなぁ。

 それまでは頑張って無視無視。


「カーノン!」


「わっ! もうこっちでもか!」


「エヘへー」


 アクアとは幸いすぐに合流できた。なにせ向こうは私の姿を動画で見ているのだ。思わぬ怪我の功名である。でもそこに感謝はない! 絶対にだ!


「ここじゃあれだから早速移動しよー!」


「オッケー」


 私はアクアに手を引っ張られながら広場を後にする。

 道中も、やはりというか、私に周囲の視線が集中していたような気がするが、広場と同様に極力気にしないことにした。


 それにしても、マリンのアバターであるアクアだが、こちらも私とは別の意味でなかなか思い切ったなぁと思う。


 名前の通り、髪も瞳も青色だ。

 正確に言えば、髪の毛は透明感のある水色で、瞳は濃い緑色が混じったような藍色だった。

 そして、何が思い切っているかって、なんと顔の造形がほぼマリンなのだ。

 変わったのは眉毛の形と色くらい? こちらも髪の毛の色と一緒である。

 大丈夫なの? と聞いたところ、髪の毛と瞳の色さえ違っていればほぼわかんないよと、あっけらかんとした答えが返ってきた。

 どうやら、早くゲームがしたかったらしく、最低限の変装ともいうべき変更しかしていないとのこと。生粋のゲーマーだなぁ。

 一方の私は変装どころか、整形……どころかほぼ別人、と言い切っていいレベルの変更を施している。まぁこだわりという点では私も違ったタイプのゲーマーなのだろう。


「ここらへんでいいかな?」


「そだねー」


 そこは人もまばらな別の広場だった。プレイヤーどころか、NPCすらほとんどいない。


「んじゃまず自己紹介から! 私はアクアだよ! よろしくね!」


「私はカノン。よろしく」


「ニヒヒ……」


「フフッ……何だか照れるね」


「ねー!」


 自己紹介と共に握手をする私達。

 さっきまで、ずっと手を握っていたのに、改めてするとなんだか照れくさい。


「それでは早速フレンド申請するね!」


「うん。ちなみにそれってどうやるの?」


「えっとねー……」


 フレンドとは、登録しておけばたとえ離れていても現在地がわかったり、連絡をとることができたり、相手のオンライン状況が把握できたり等々……と大変便利なシステムだ。とはいえ、これだけ聞けばフレンドに自分の状況を逐一把握されかねないストーカーシステムのように感じるかもしれないが、これらの設定は個別に変更することもできるので、逆にフレンドになるハードルは低いとのこと。各種関係に沿った設定でフレンドシステムを満喫してください、と攻略サイトには記載されていた。

 ちなみに、現在の登録上限は100名。目指せカンスト! と、密かな目標にしているのはみんなには内緒だ。


 そして今、最初のフレンド登録を終え、無事フレンドリストにアクアの名前が記載された。残り99人!


「よろしくねー!」


「こちらこそ!」


 こうして、2人でやいのやいのと言いながらしばらくこの広場で話し合った。

 ん? でもこれって別にゲーム内でやらなくてもいいよね?


 ま、いっか。




次回は12時投稿予定です。

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