―後編―
11月になって始めて書きますね。
前編後編で、この話は終わります。なんせ話数が思い付かなくて。キャラが多いと続けやすいんだけどね。
それでは、ラストをどうぞ!
その夜。ロボットがじいちゃんにいじめを受けていた事実を伝えてしまい、俺は風呂場に監禁された。
「つめてっ!あっち!!つめてっあっっち!!!」
浴槽には少し温度が高めのお湯。シャワーは冷たい水。そう、これらは内出血を負った箇所にお湯から水をかけてあげると治りが早くなるといわれているらしく、それを知っていたじいちゃんが裸の俺を押さえつけて冷たい水とお湯を交互にかけてくる。
「我慢しないかー根性ないのー」
「・・・うるせえ。」
やっと内出血が収まり、風呂場から解放された。腰にバスタオルを巻いてハンドタオルで髪の毛を拭きながらリビングに来ると、そこにはロボットがいた。なんだか不安げな顔で話しかけてきた。
「怪我は・・・大丈夫なのか?」
「さあな。冷やして温めてってその繰り返しだけで治るのか・・・」
ロボットは胸から腹にかけてのアオタンに触れた。
「そうか・・・・・・よかった。」
大事に至らない。その状態を知りたくて、彼女は嫌っているはずの俺の事を心配してくれたし、不安げな表情からやわらかな微笑みに変わったんだ。
俺にこんな眼差しを向けてくれた人は、ロボットが初めてだった。
2日後、奴らの標的からは免れた。おまけに彼らは煙草を野外で吸っていたことが学校にばれて停学になった。事はまとまり、やっとのびのびと過ごせる学校生活が始まったんだ。
「よかったな。奴らが来なくなって。」
ふと、あの時の彼女の微笑みが頭をよぎった。ずっと残っていて離れない。自分自身どうかしてしまって。とにかく彼女をみるとときめく自分が胸の中にいるみたいなんだ。
「なあ、まだ問題があるのか?」
唐突に訪ねてくるロボット。どうしてそんな質問をしてきたのだろう。俺は聞いてみる。
「なんで聞くんだよ。」
「だってお前不運な男だし。いじめられているほかに、何かあるのかと思ってな。例えば教室のドアに毎日ぶつかるとか。」
「今日はたまたまだ。」
「筆記用具を忘れるとか。」
「なんで知って・・・」
ロボットは俺の筆記用具を手渡してきた。
「玄関で靴を履くときに鞄が開いてて、そこから落ちたのを拾ったんだ。あんたってほんとマヌケだな。」
小学生がランドセルを開けっぱでお辞儀をしたように、この年になってもそんなことを起こすなんて恥ずかしかった。改めて情けないと自虐した。
今日の事柄を FZ-01 に報告した。
「キニシナイ キニシナイ」
学校で起こったことを家まで持ち帰ってきた俺に対して、気にしないでと声をかけてくれた FZ-01 。毎日の事だがいつも元気を与えてくれる。
「へえーキモイな。」
「うわっ!勝手に入ってくんなよ!」
「いいじゃんか。てか可愛い!よろしく!」
「ヨロシク ヨロシク」
「ねえ名前は?」
「つけてない。」
貰ってから思いつかなかったため、ずっと名前がなかった。
「じゃああたしが付けたげるよ。えっと・・・手のひらサイズだからチビでいいんじゃないの?」
「チビ チビ」
「いやや止めてくれ。だったら名前がないままでいい。」
すると、ロボットがある疑問を持った。
「なあ、あたしあんたに名前で呼ばれたことない気がするんだけど。」
「そういうお前も、俺の事あんた呼ばわりで呼んだことねーだろ。」
「源氏。ほら呼んだよ。あんたも呼んでよ。」
さらっと終わらせるロボット。そのノリに乗ることはなく名前を呼ばなかった。
登校すると、外には水たまりができていた。
「夜中に降ったのか。おい源氏、霊。傘ちゃんと持っていけよ。特に霊、お前は水に濡れると故障しちまうからな。」
「はーい。」
「急ぐぞ。今日は遅刻だ。」
じいちゃんの豆知識を聞いているとあっという間に時間が経ち、ギリギリの登校になってしまった。
「そういえば名前。」
「まだ続いてたのか?」
呼びたいわけでもないし、そもそも呼びたくないのが本音だ。だって不吉な名前じゃないか。親が心病んでいないと呪われそうな名前なんて自分の娘に付けないだろ。
朝から体育の授業。それに停学処分を受けていたはずの奴らがもう登校していた。まさに地獄だ。
先生がいるっていうのに、奴らは俺をわざと地面に転ばしたり、足をかけて躓かせたりしてくる。俺は足が痛いのを我慢しながらサッカーをしていると、奴に向かってボールが直撃した。蹴り飛ばしたのはロボットの仕業だった。
「悪いな~~違う方向にシュートしてしまった。」
隣のグラウンドで試合をしていたはずの女子たち。しかも障害が起きないよう境目には網が張られているから、ボールが飛んでくることはないはず。
しかし、網に穴が開いている。それはロボットがシュートしたボールが回転したためにかかった圧力で起こった摩擦によって網が破られたのだ。
「くそっ・・・」
また助けられた。このまま彼女に助けられてばかりなのも男の俺には耐え難いもの。
結局痛みが悪化したため、保健室行きになった。軽い打撲だった。
「全く。あいつらもうざいはどしつこいが、お前もうざいくらい情けない。少しは 漢を見せろ!根性出せよ!」
「悪かったな。俺は情けない奴だよ。漢なんて無いし。根性無しだよ。いつだってっ・・・弱い奴なんだよ。」
そういうと、俺はその場から飛び出した。いいや。逃げ出したんだ。自分を責める自分が愚かすぎて。
授業をほったらかして、家の近くの広場でベンチに横になった。
「(さすがに授業をすっぽかすのはよくないよな。あっそういや鞄置いたまままだし・・・取りに戻るか。)」
そう頭では思うものの、横になると身体が言うことを聞かなくなって、うとうとと眠気がして、俺は目を閉じた。途中、肌に水滴が落ち、その瞬間雨が降ってきたんだと感じたが俺は気にならなかった。
放課後、ロボットは教室から窓の外を見ていた。
「源氏のやつ、鞄を置いて学校を出て行くなんて・・・しょうがないな。」
折り畳み傘を手に持って学校を去った。
雨の中、誰もいない広場の前を通ぎて、家に帰ってきた。
「源氏~いるんだろ?」
「おかえり。源氏ならまだ帰ってきてないが・・・何かあったのか?」
「別に。あたしちょっと買い物してくるね。」
帰って来てそうそう、霊は雨の中を駆けていった。
さっき通った広場を通り過ぎようとすると、ベンチに腰かけている人影を見つけた。こんな雨の降る中、広場にいるなんて怪しいと思い、霊は歩み寄った。
そこには俺がいた。
「ここで何してるんだよ!傘はどうした。」
「学校。」
「おまっ・・・何考えてるんだよ!これ以上心配かけるな!!大体、自分で学校出たくせに置き忘れていくんじゃないよ!!」
「てめえ何様だよ!!心配?お前は“心もないロボット”だろ!!そんなお前が偉そうに上から物言いつけるんじゃねえよ!!」
「はあ?いじめられてるお前が見え張ってんじゃねえよ。その物言い、あたしじゃなくてあいつらに言えばいいんじゃないの?素直におもいをぶつけてっ・・・」
突然ロボットは倒れた。それは、怒鳴りつつも俺に傘を差した後だった。
お前は水に濡れると故障しちまうからな。
今朝じいちゃんが語った豆知識は、全てロボットに関する内容。詳しくは覚えてないけど最後に言ってたこと。
ロボットが雨に濡れたらだめなことを忘れていた。
「おい?おい!!しっかりしろ!!おい!!霊!!!」
揺さぶっても動かなかった。
俺は、足が打撲しているのにも構わず、ロボットを負ぶってその上から傘をかけ、家まで歩いた。
家に着くと、じいちゃんは俺らが返ってきたとき、思ったよりも冷静に対処してくれた。俺を風呂に入れるよう伝えて、ロボットを倉庫に運んで修理を始めた。まるでこうなることを予測していたかのように。
しばらくして倉庫から出てきたので、俺は聞いてみた。
「じいちゃん、なんでそんな冷静なんだよ。」
「2人が、仲が悪いのは目に見えていたからな。きっとこうなる日が来るんじゃないかって思ってたんじゃ。だけど前よりもお前は明るくなった気がして、霊と心を通わせるように近づいてきたと感じていたんじゃが、やはり思い違いだったみたいじゃな。もう霊は動かん。明日処分する。」
こんなことになったのは俺のせい。
最初はロボットなんていらないと思ってた。あいつがいたって邪魔なだけだし、何も変わるわけがないって思ってた。でも気が付けば、いつも俺の事を救ってくれて、会話をしてくれて。なんか、本物の人間と話しているって勘違いするくらい、毎日が楽しくなった。
こんな風に、俺は感じていたんだと気づいた。
倉庫に入り、もう動かなくなったロボットに俺は語り掛ける。
「さっきは悪かったよ。心もないなんて。言い過ぎた。だけど、心配してくれて感謝してるんだ。いつの間にかお前は俺のあこがれになった。俺の言いたいことははっきり言うし、自分の意見も述べて。相手がどう動こうが自分のやりたいようにする。ホント真似できねえよ。そんな俺に話しかけてくれる親しくしてくれたこと正直嬉しかったんだ。お前がいてくれて、毎日がそう思えるようになった。男らしくないけど、弱い俺だけど、こんな俺でもお前を好きになれた・・・・・・好きだよ・・・霊。」
そう伝えると、霊に背を向けて立ち去ろうとした。その時、後ろから声がした。
「今の・・・今のはっお前の・・・本心なのか?」
「っ・・・」
振り返ると、霊が俺を見て驚いていた。
もう動かないと思って伝えた本音。そして感情も表に出して、悔いのない別れにしようと思ってたんだ。
でもそんなことはどうでもよくなって、自然と体が動いたと思ったら、そのまま霊に口づけをした。ふと、霊の鼓動がトクンと聞こえたのは俺の気のせいかな?
霊が無事だったのは海外からの部品は防水加工がされているものがあり、その一部が霊の心臓部と言われる部分に覆われていたから助かったらしい。
あれから霊を学校に通わせるのは、危ないと思い、通わせるのを止めておとなしく家に居てもらうようにした。
「留守番頼むぞ。ギャルロボ。」
「はいよ。あんたも転ばないようにね。」
「キヲツケテ ツヲツケテ」
「いってくる。」
それから、やっぱり名前が気になるからあだ名をつけた。ギャルロボってね。
完