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あれから日は完全に沈み、私は、オズワルドと二人で夕食を取っていますわ。

私が工作した時のテーブルで、向かい合って座り、夕食をいただいてますの。

料理はパン一つとスープ一杯。ヨーロッパ中世暗黒時代並の食事ですわね。どこかで食べたような味がしますわ。給食かしら。

それでも楽しかったですの。叔父に引き取られてから、食事は自分の部屋で取っていたもので、誰かと食事をするなんて久しぶりでしたから。

ああ、叔父の顔を思い出してしまいましたわ。後見人と言いながら、父の資産を食い潰した卑劣漢。

「どうした、進まないようだが」

「いえ、何でもないですの」

考えているうちに手が止まっていたようですわ。

「明日からはこき使っていくぞ。罠作りを教えるのはわしの手が空いてる時のみだ。そんな時間は少ないぞ」

「承知の上ですわ」

「……なら良い」

食べ終わったら、オズワルドは食器をもって二階へ行きましたわ。

ここの工房は生活部分を二階に作っているようですわね。私も二階で眠るのかしら。

そう言えば、歯磨きをしなければいけませんわね。歯ブラシを貰わなければなりませんわ。

オズワルドが戻ってきましたわ。

「オズワルドさま、歯ブラシをいただきたいんですけれど」

「歯ブラシ?そいつは聞いたことがないな」

「……虫歯になりますわよ」

「虫歯ってなんだ」「歯が痛くなったことないんですの!?」

「歯は骨と並んで一番丈夫なものだ。怪我で折れることはあるが、木の実で回復すれば元通りになる」

「………………」

これがゲームの世界というものなのかしら。

一応台所でうがいをして、二階の貸していただいた部屋に行きましたわ。

この部屋は窓とベッドと小さなチェストしかありませんの。とはいえ、置くものは持ち合わせておりませんわ。置きたいものもないですし……

お下品ですけれど、制服のままベットに入りましたわ。

目を閉じると、そのまま開かなくなって、そして……


気がついたら、朝でしたわ。朝日で目が覚めたようですの。

身支度をして、一階へ降りると、すでにオズワルドは仕事をしてましたの。

何かを金槌で鍛えて、かまどのようなものに入れ、また鍛える、それを繰り返ししているようですわ。

昔TVで見た刀鍛治のようですわね。

しばらく見ていると、オズワルドは私に気づいたようですわ。

「……これが終わったら飯にしよう」

これが終わったら、というのは「刃を鍛えたら」ではなく、「罠として完成したら」という意味でしたわ。その間、空腹度は上がり調子ですわ。


朝食の内容は夕食と同じでしたの。待ってたからより美味しい、わけではなくってよ。


朝食を食べてテーブルを片付けたあと、オズワルドはタンスから3つ取りだして並べましたわ。

「嬢ちゃん、これを見ろ」手をかざすと、3つはそれぞれ光っていましたわ。

左から、銀、銅、青の光を帯びていますの。

「光っていますわ。左から、銀、銅、青に輝いていますの」

「……そうか、手をかざすと、嬢ちゃんにはそう見えるか」

髭をいじりながら、彼は言いましたわ。

「これらは左から価値が高い順に並べてある。銀級、銅級、青級だ。わしらには光っているようには見えん。知識として覚えるしかない。しかし嬢ちゃんは覚えなくとも視覚でわかるのか、ふむ」

「これらはそれぞれ価値が違いますの?」

「そうだ。どれも魔物の体の一部なのは同じだが、魔力の含有量がそれぞれ違う。昨日出したやつは最低ランクの青級だが、あれはほとんど魔力はねぇし、価値もねぇ」

「銀が一番高いんですの?」

「いや、その一つ上がある。黄金級だ。めったに市場では出回ってねぇから冒険者に同行するか、さもなきゃ冒険者が、これで罠を作ってくれと持ち込むか、のどちらかしか拝んだことはねぇな。少なくともこの工房に常にある程度の素材とは魔力の格が違う。」

「魔力の格が違うと、何が違うんですの?」

「その前に罠には2種類あることを説明しなきゃならねぇな」

彼はタンスの中から2つの布を取りだしてテーブルに置きましたわ。

「いいか、左の布も右のも、同じ魔方陣を書いている。効果も同じだ、だが違うところがあるな。なんだと思う」

右の布の横に、何か書いてある枠がありますわ。材料の欄は……いやっ!

「ド、ドラゴンの血ってどういうことですの!?」

私が動揺している一方で、彼は頷きましたわ。

「そう。左は魔導インクで書いたものだ。魔力を注ぎ込まないと発動しない。魔導士がよく使うものだ。一方、右はドラゴンの血で書いたものだ。魔力を込めなくとも発動する。魔力を消費したくないハンターが使うものだ。罠は魔力があって初めて発動するものだが、素材に魔力がこもっていれば、それだけで罠として機能する。だが機能が大がかりになればなるほど、十分な魔力がこもっていなけりゃならん。要は含有量が高い素材ならば、高度な罠を作れる。逆なら、昨日嬢ちゃんが作ったようなガキのお遊びみてぇなもんしか作れねぇ。だから、含有量の差が価値の差に繋がっていくんだ」

「納得いたしましたわ」

でも生物の血を使うだなんて、気持ち悪いですわ。

「嫌がってるようだが、わしの工房ではまだ序の口だぞ」

表情が顔に出ていたようですわね。

「嬢ちゃんは魔力がねぇ分、素材で補うしかねぇ。特に液体のやつは汎用性が高い。この工房にいる限りは慣れてもらうぞ。幸いなことに、素材を覚える必要がねぇから一々教える手間は要らねぇな。組み立てには自信あるか?」

「どうせ手が勝手に動くんですもの」

私の言葉に、彼は髭をいじりながら、なにやら考えこんでいましたわ。

「≪異能≫の影響か、ならこっちもその気でかからねぇとな。ふん、こうするか」

彼は私の目を見てこう言い放ちましたの。

「今日からしばらく店じまいだ。その≪異能≫の限界を見定めてやる」

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