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遅れてしまいましたm(__)m

翼竜大母が威嚇した後、素早く二方から岩が飛んできましたの。

南側の方々が罠を発動したようですわ。

「先手必勝。翼竜大母までが来てしまったら、翼竜は動けんことだし、集中して殺すしかない。だが、易々とは掛からんだろうねぇ……」

長老の懸念通りになりましたの。

岩が5、6個当たった当たりで、翼竜大母が翼を大きくはばたかせましたの。

家々が、壊れるかと思うほど揺らされましたわ。

それと同じくして、悲鳴が聞こえましたの。

揺れが終わった後で恐る恐る窓を覗いてみると、投石魔方陣が書かれた布が落ちて、苦しんでいる翼竜たちに被さっていますわ。

布が落ちているということは、きっと作動していた人たちは……




生き残っていた方もいたようですが、岩が一回か二回翼竜大母に当たっただけで、魔物がもう一度翼で大風を起こすと、悲鳴のあと何かが潰れる音がしましたわ。



長老は動揺していましたの。

「この分だと中心部側に仕掛けていた粘着魔方陣も飛ばされて使えん!このままだとここが全滅だけじゃ済まない!」


それは、嫌ですわ。


あの避難してきたご家族。素材問屋のお婆様。

オズワルド。

この方々が犠牲になってしまうことのかしら。

それは、それだけは、避けなければなりませんわ。



手が自然と、工具と自動人形を取りだしましたの。

自動人形にあるものを取り付けるために操作しますわ。

「私が食い止めますわ!その間に、建て直して下さいまし!」

「今外に出るのは危険じゃ!悪いことは言わんから、もうここは諦めろ」

長老は止めてきましたが、ここを諦めたら犠牲が出ますわ。

もしかしたら、オズワルドが犠牲になるかもしれないと思えば、いてもたってもいられませんの。

問題外だと言われ、のたれ死ぬところを救ってくれたのは、オズワルドですもの。

私が生きていける場所が、無くなることなんて耐えられませんわ。

あの、味方が居ない場所に居続けたくは、もうないんですの。

こんなこと長老には言えませんけれど。

作業が終わると、家を出ようとしましたわ。

「どうしても行くのかい?」

「これを黙って見過ごす訳にはいきませんわ。父の教えですもの」

正しくは、使えそうな人間が困っていたら助けろ、ですけれど。長老はなお止めようとしましたが、それを聞かずに、周りを伺いながら、家を出ましたの。

家のすぐ近くに、翼竜が倒れてましたの。

毒餌を食べて、口から泡を吹きながら倒れてましたわ。

目があったら動けなくなってしまう。


そのことは分かっていましたから、目を合わせないように、中心部側へ向かいましたわ。


着いた時には、粘着魔方陣が裏返しになって散乱してましたの。

これを表に返して、手前に敷きましたの。

翼竜大母たちと私の間に、魔方陣を敷き直しましたわ。

そのあと、自動人形を起こしましたの。

「『起き』なさい、自動人形。」

「はーい」

「いいこと、家々の隙間をぬって、翼竜大母の背後に廻りなさい。見つかったら隙間に隠れなさい。廻ったら罠を展開して攻撃なさい。わかりまして?」

「わかったー。ごしゅじんさましなないでねー」

縁起でもないことを言うものではありませんわ。

自動人形を見送ると、翼竜大母と目が合いましたわ。

翼を広げたことを確認すると、私は粘着魔方陣を発動し――

魔方陣を両足ともゆっくりと踏みましたの。


すぐに突風が吹きましたわ。骨が軋むほどの風で、後ろ側に尻餅をつきそうになりますの。

でも、獲物が掛かった粘着魔方陣はびくとはしませんわ。私がその場に留まっていられたのは、この罠のお陰ですわ。

その代わり、解除すれば瞬く間に吹き飛んでしまうのですから、動けませんけれど。

不審に思ったのか、翼竜大母が近づいてきますわ。

罠を解除しようにも、いつあの大風が来るのか分からないのですから、動けないですの。


ああ、こんなことをしなければ良かった、そう思った時でしたわ。

竜の背後に、胴体から針金を出した自動人形が目に入りましたの。

その瞬間、岩が弧を描き、翼竜大母の背中に当たりましたわ。

9つ全弾命中したようですわね。

翼竜大母は悲鳴のように一声上げて背後を振り返りましたの。



自動人形は素早いもので、そのときには魔方陣をしまって隠れていましたわ。


初めから考えてましたの。私一人では倒せないと。

複数の魔方陣を同時に、相手を確実に撃つことは、一人では無理ですわ。必ずタイムラグができてしまいますもの。

罠を展開する魔導記号を組み込んだ自動人形に、賭けるしかなかったのですわ。

翼竜大母は背後を振り返ると、そちら側に歩き始めましたの。私のことより、謎の投石を気に掛けているようですわ。

そうでないと困ってしまいますの。

素早く粘着魔方陣を解除すると、私も家の隙間に隠れましたわ。バッグから「子犬花火」

を取りだしましたの。


子犬花火を、近くで倒れている翼竜にけしかけると、とことこと近づいていって、爆発しましたわ。


翼竜大母は怒り狂ったようになき続け、身を翻し、すぐにその翼竜に近づいたのですけれど、岩が一斉に当たりましたわ。

また振り返り、相手がいないことを確認すると、また子犬花火で我が子が傷つく……


残酷な方法だとは思っていますわ。

でも方法が、これしかありませんの。

私が身を守るため。

私の大事な人のため。

犠牲になって下さいまし。



翼竜大母の動きが鈍って、ふらふらとしてきた頃ですわ。

あと1、2回で倒せそうな時でしたの。

子犬花火をけしかけようとしたその時――



「死ねぇぇぇぇ化け物!!!」

聞いたことのある声が聞こえた瞬間、翼竜大母が叫び出しましたの。

表面を流れていくように炎が翼竜大母を覆っていきましたわ。

耳に残るような断末魔を一声上げて、翼竜大母は我が子の何匹かを下敷きにしてどうと倒れましたわ。

あの茶色の皮膚は、見る影もないくらい黒く焼き焦げてますの。


突然のことでしたが、もう身を隠さなくていいことはなんとなく分かりましたわ。

「いやあ、大変でしたね」ここに来た時以来のマイケルの声を聞きましたの。

「いやあ、東西が粗方片付いたら後ろから攻めようと思ってたんですが、翼竜大母まで来ているとはねー。まさかと思いましたよ。……あれ、もしかしてあの子じゃないですか?あの問題外の。あ、やっぱりそうだ。おーい、問題外さーん、元気そうで何よりでーす」

失礼なことを言いながら、マイケルは私に近づきましたの。

「いやー心配しましたよ。生き残っている確率なんて百に一つもないと思っていたんですからー」

そうしたのはマイケル自身でしょうに。

苛立ちを抑えるために黙っていましたわ。

「そうだ、久しぶりにクラスメイトにお会いしたいですよねー、ちょっと皆さーん、こっちに来てくださーい」

私の反応を全く見ず、マイケルは呼び寄せましたわ。「この人が足止めしてくれました!そうそう問題外さん、この人が、今翼竜大母を倒したんですよ、今期の筆頭勇者でもありまーす」

筆頭勇者だと紹介されたのは――



やはり、あの声は聞き違いではなかったのですわ。



紹介されたのは、あの猿の一人、前髪を束ねた女、柴田瞳でしたの。

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