表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

一番奥の女たちなど消しとんでしまえばいいのに。


少なくとも、父を愚弄したあの女は許しませんことよ。

そう剣呑なことを考えつつ、私はバスの中でおくびにも出さず座ってましたの。

バスの一番奥はあの女とその取り巻きが座っていて、私は奥から2番目の右端。隣は奥の女とかしましく騒いでおりますわ。


私は騒音を誰よりも近くで聞くことを強いられていますの。

できることなら静かにして頂きたいけれど、あの猿たちが聞くかしら。


バスは一般道から高速道路へ入って行きましたわ。

今まで景色を見て気をまぎらわしてたのに……フェンスしか見えませんの。


「ねぇ、楽しい?」

突然奥から声を掛けられましたわ。

振り返ると、5人の「猿」がニヤニヤと笑っておりましたわ。

「修学旅行なんだから、そんな暗い顔しないでよ。はいスマイル〜」

長い前髪を束ねた女が唇を歪めて笑っておりますわ。

「あんたが暗いとこっちまで暗くなっちゃうわ」

つり目の女が憮然といいますの。「まあまあ、西園寺さんはいつもそうだもんね〜」

茶色がかったセミロングの女がお菓子を摘まんでおりますわ。

「よく修学旅行に来たね。」

「このお金もあの汚いお金からなの?」

童顔の双子がペットボトルからお茶を飲んでいますわ。


汚いお金というのは、私の父が汚職したことに由来することでしょうね。

その直後両親は失踪してしまい、私はこの学校に転入せざるを得なくなりましたの。

はじめは腫れ物に触るようでしたわ

それもそれで嫌だったのですけれど、同じクラスの男からの告白を振ってから、それが敵意に変わったようですの。

男?ニヤケ顔だったのは覚えてますことよ。

その直後に敵意を向けられるようになったのですわ。あの男に猿のうちの誰かが好意を向けていたことを後で知りましたの。


猿らにとって、私の父は汚職した上に失踪した議員であるという事実、私はその悪役令嬢というレッテルは嫌がらせをするのに都合の良いものだったのでしょう。


クラスでただ、居るだけの存在になるのに、あまり時間はかかりませんでしたわ。


猿どもは言葉をぶつけるだけぶつけて、違う話題に変えたようですわね

所詮私のことなどは話題の一つとしか思っていないのでしょう。


憎たらしい……


窓枠に雨粒が垂れてきましたわ。今日は曇ってた分予想はしておりましたが。

私は窓ばかり見ていて、だから異変にもすぐに気づかなかったんですの。


突然前から悲鳴が聞こえましたわ。

前を見ると大きなタイヤが跳ねながら、バスのフロントガラスに向かって来ているんですの。

すぐに前のトラックから外れたものだとわかりましたわ。

バスは辛くもかわしますが、雨で滑り、二車線を斜めに横切るようにして動かなくなりましたの。

「いやあぁぁぁあぁぁ」

次は後ろから悲鳴がして振り向くと、10tトラックが後ろから来ていましたわ。「止まってッ!止まってッ!」

なにやら猿が騒いでいますが、おそらくバスにいた皆さんがわかっていましたわ。


このままぶつかってしまうと。


予想通り、トラックはぶつかり私は座席に強かに頭をぶつけて、そのまま意識を失いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ