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おいでませベリストリア

見てくれる人がいるのか分かりませんが、のんびりと投稿していきたいと思います。


 さて、場所は先程と変わって話にも出て来たベ、ベ・・・ベリーなんとか国である。随分と甘そうで目に良さそうな名前である。

 嘘です、名前覚えてなかっただけです。記憶力には元々自信が無かったが、遂先ほどの会話の中で出た単語すら覚えてないとか割と死活問題だと思う。

 ともあれ、森を抜けて無事に人が存在する場所に辿り着いた。

 聖ちゃんが使った『旅の扉』と言うのは、自身の魔力を使用して発動する時空系統の魔法らしい。


「私が使った魔法の他にも、アニメや漫画でよく見る属性魔法だったり生活魔法だったりと様々です。更にこの世界には魔法とは違った精霊術と言うのが存在していて、そちらはこの世界とは別の次元にいる精霊の力を借りて使う魔法となっており、威力は魔法とは桁違いとなっています」


 とのこと、聖ちゃんは精霊術を使えないらしい。


「私が持っている力が精霊術向きじゃないと言いますか、魔法に特化しているんですよ」


「因みに僕は剣術に特化しています」


 要するに人それぞれ何かしらに特化している能力がある?と言う認識で今は良いだろう。


「自分がどんな力を持っているのかって、分かるものなの?」


「人によりけり、ですね。僕達は教えてもらったんです。この国には僕と聖の他にももう一人落ちて来た人がいまして、その人は目が良いんです」


 目が良いと力が分かるのか・・・。良くは分からないが、光君と聖ちゃんの力を見るにそのもう一人も中々強力な力を持っていると見ても良いだろう。何とも刺激的な事で。

 転移してきた場所は、城門の外。その為検問があり身分を証明するものとなると財布の中に入っていた保険証か免許証のみ。絶対に役に立たない。

 なので恥を忍んで年下である光君にお金を借りようとしていた所、顔パスされた。何故?と不思議な顔をしながら検問を通過してみると光君が少し笑いながら教えてくれた。


「僕達落ちて来た人は世間では色々な俗称があります、落者と呼ばれていたり迷い人と呼ばれていたり。皆さんで共通しているのは」


 トンと光君は自分の右手を叩いた。するとそこに何処かで見た事がある紋様の様な物が浮かびあがった。


「こんな感じで、右の手の甲に落ちて来た人に共通する紋様が浮かんでるんです。任意で消すことも出すことも出来ますが、落ちて来て直ぐの人はそんな事を知らないので紋様が露出したままなんです」


 そう言われて、自分の右手を見てみる。よく目を凝らしてみているとぼんやりと何かが浮かんでいるのが確認できた。


「人によってその紋様は見える人と見えない人がいます。原因は詳しく分かりませんが消すのは頭の中で念じるだけで可能ですし、消すも出すも感覚で分かります」


 物は試しと頭の中で消えろと念じてみる。すると体の中に何かが入り込む感覚が伝わって来た。

 これは面白いと出して消してを繰り返していると何やら騒がしくなってきた。


「お兄さん、ここからは人が多くなってきますので逸れない様にしてくださいね?」


 どうやら人が増えて来たのは繁華街の様な場所に来たからである。周りを見れば大勢の人達が笑顔で商売をしており、大声で客引きを行っている。食堂らしき場所や屋台から漂う匂いに鼻を擽られ、腹を刺激される。思えば今朝に軽く何か口にしてから何も食べていない、そもそも食べる余裕が無かったと言うべきか。


「光、聖」


 美味しそうな物に目移りしながら、誘惑に負けないように堪えていた所光君と聖ちゃんが声を掛けられていた。

 声を掛けて来た人は耳が長かった。横にピンと尖った耳があった。世界には色んな人がいるのは分かっていたがまさか横長の耳を持っている人がいるとは思っていなかった為思わず近づいてその耳に手を伸ばしてしまう。


「おぉ、本物だ・・・」


 真っ直ぐ横に伸びている耳だったため、中に骨がしっかりと入っているのかと思ったが思いの他柔らかい。


「んっ、やめないか・・・」


 ぷにぷにと感触を堪能していると、静止の声を掛けられた。

 もう少しだけその触感を味わいたかったが、やめろと言われてしまえばやめるしかない。少しだけ気落ちし、伸ばしていた手を引っ込める。


「光の時もそうだったが、迷い人は人の耳を触るのが普通なのか?」


「すいません、先生。地球では先生の様なエルフは存在していなかったので・・・」


 どうやらこちらの方は聖ちゃんの先生らしい。あとエルフ?らしい。耳が長い人はエルフ、今後は間違えないようにしっかりと記憶していると光君が「触りたくなりますよね」と同意してきた。


「気にしてるわけでは無い。そもそも何処の国でもエルフという種族は珍しいだろうしな。初めまして新たな迷い人、私の名前はエルリア。エルフの中でも変わった存在だよ」


 自分で言う程なのだから、大分変わった存在なのだろう。

 このエルリアと言うエルフ、話を聞く限り聖ちゃんの先生らしい。光君と聖ちゃんが落ちて来たのを見つけたのもこのエルリアらしい。つまりエルリアは神官であり俺の命の恩人。エルリアが二人を見つけて助けてくれたから俺も連鎖的に助けて貰えたと。先程行き成り耳を触ってしまった事は大分失礼な事だと思ってしまった。だけど気にするなと言われたので気にしないようにしよう。


「さて、迷い人も見つかった事だし春の元に行くとしよう」


 そうしてエルリアに先導される形で歩き出す。今しがたエルリアが言った春と言う人物がこの、えっと・・・ベ・・・ベビー国に落ちて来た最後の迷い人なのだろう。先導するエルリアの一纏めにされた髪がゆさゆさと歩くたびに左右に揺れるのを見て犬のしっぽを思い出す。小学校の頃は友達の皆と髪を纏めている女子の髪を掴んで遊んでたりした記憶がある。まぁ当然の様に親を呼ばれて説教されてしまったが。


「やはりエルフと言うのは珍しいのだな、相変わらず人の目を良く惹く」


 多分であるが、エルフとか関係ない気がする。先程耳を触った時にちらりと見えて、背後にいる現在、エルリアが来ている服の値札が付いたタグが首元から覗いている。首元が見えるようなポニーテールにしているから尚更視線を集めやすい。


「光君、あれ教えなくてもいいの?」


「僕と聖が何回教えても一向に取る気配が無いんです。自分が完璧なエルフであるとエルリアは信じているので値札が付いていると言っても冗談を言われてると思い込んでしまって・・・」


 つまり残念エルフと言う訳か。



















 エルリアに連れてかれて、特に何事も無く城に辿り着いた。特にとは言ったが光君がナンパされたり、聖ちゃんが擦れ違いざまにセクハラされたり。俺には何も起こらなかったので問題は無い。問題ないけど自分だけ何もされてないとなると寂しく感じてしまうのは何故なのか。


「さて、城の中に入ったからと言って特に気を付ける事は無い。礼儀や作法も気にする必要も無い」


「王様は割とフランクな方なんですよ。落ちて来て直ぐ僕達は礼儀何て知らないままでしたし、それにも関わらず笑って接してくれましたしね」


「ただ、気を付けて欲しいのは。たまに面倒な要求をされるのでそれは断って下さい」


 聞いた話によると、ふとした時に「竜の涙が飲みたい」とか「白竜の刺身が食べたい」とか何とか。ちなみに竜の涙と言うのは竜族が作っている酒の名前で白竜と言うのは海でとれる少し値の張る魚の事らしい。少し値の張る魚の名前が白竜って名前負けもいい所だと思う。


「流石に初対面の迷い人に何かしら要求する事は無いでしょうが、一応頭の片隅に留めておいてくださいね」


 こくりと頷き、覚えるようにしておく。

 先程からすれ違う従者が珍しい物を見たかのようにチラ見してくる。何か顔に付いているだろうかと触ってみるが別段変な物は付いていない。


「迷い人がそもそも珍しいので、新しい迷い人は目を惹くんですよ。それに」


 疑問に思っていた所を光君が答えてくれた。そして教えてくれた事、迷い人は黒髪が多いらしい。他国では金髪の迷い人の報告もあったみたいだが少なくともこの国の歴史の中で黒髪以外の迷い人が現れた事は無いのだとか。これは多分覚えておかなくても良い情報だろう。


「因みに国王は黒髪だけど、単に染めてあるだけだ」


 国王ももしかして残念なんじゃ・・・?

 そんな疑問を抱いていたら聖ちゃんがこっそりと頷いていた。この国には残念な人しかいないのか・・・。

 もしかして保護される国を間違えたかと不安に思いながらエルリアの後ろを歩く。


「さて、ここに春がいる筈なんだが」


 そうして城内を歩くこと数分、何処まで広いのかと歩くことに気だるさを覚え始めたころ、ようやく目的の部屋に辿り着いた。

 エルリアがノックをして、返事が無かったが問答無用と言わんばかりに部屋に入っていく。それでいいのかと思うが光君も聖ちゃんも気にせず入っていったので俺も気にしない事にした。恐らくだが、この世界で常識に捉われてたら疲れるだけだと思う。


「相変わらず、本が散乱してばかりだな」


「春は本が好きですしね、伊達に書庫の本をすべて読破している訳ではありません」


「まぁたまに見に来ないと息してなかったりするから、定期的に生存確認しないといけないんだけど」


 たまに息してないとか、その春と言う人は本に命を掛け過ぎでは無いか。

 散乱している本がエルリアを避けるように動いているのを見て、早速常識が壊れ始める。本が勝手に動くとかこの世界割と可笑しい。


「いたいた、聖。エレキを頼む」


「何時も通りですね」


 何時も通りと言うことは、息をしていなかったのだろうか。

 聖ちゃんが俯せで横たわっている春に近づき、背中に手を置く。


「いい加減こうなる前に人を呼んでくれると良いんですけどね・・・。『痺れろ』」


 置いた手のひらからバリバリと、周囲に被害が出るのではないかと言う程電気を放出する。


「『溺れろ』」


 一通り電気を流し、仰向けに体勢を代えて今度は頭をすっぽりと包むように水球を出現させた。何だろう、助けてくれた聖ちゃんにこういうのは失礼かもしれないけど頭可笑しいんじゃないかな。



















「死ぬかと思った」


 見た限り死んでいたと思うが、俺の持ちあわせている常識なんて儚いものだと実感してしまった。

 無事に?蘇生した春と言う男性は濡れた髪を犬の様に振り回し周囲に撒き散らす。飛び散った水滴は本を濡らすかと思ったら先程を同じく本が逃げ回っていた。常識何て役に立たないと思わせられて辛い。


「そちらの人は新しい守りもりびとか。私は春と言う、よろしく」


「守り人?」


「落ちて来た人の呼び方だよ。迷い人とか色々言われているが、私は守り人と言う方がしっくりと来るのでな」


「成程」


 なんか守り人の方が格好いいのは確かである。迷うよりも何か守ってると思われそうだし。


「で、君の名前を教えてくれないか」


落合広おちあいひろ


「広ね、覚えたよ」


「私達も今まで名前知りませんでしたね。よろしくお願いしますね、広さん」


 そういえば自己紹介をしていなかった気がする。


「さて、エルリアが連れて来たということは私の目が必要になったということで良いかな」


「迷い人の力に関しては春に任せるのが一番だしな」


「まぁ私以外に目の良い守り人がいるとは思えないしな。広、私の目の前に来てくれ」


 春にそう言われて、目の前まで近づいて行く。すると何処から伴なく椅子がガタガタと動いて近づいてきた。まるで座れと言わんばかりに足にぶつかってくる椅子に、もう驚きは感じない。素直にその椅子に座ると、必然的に春と向かい合う形となる。

 近すぎないかと少し身じろぎする自分に、春は我関せずと言わんばかりに顔を近づけてくる。


「そう身構えるな、すぐ終わる」


 そう言われ、少しだけ緊張を解すために深呼吸を何度かする。


「良いぞ、緊張していると深層まで見る事は出来ない・・・終わったぞ」


 呆気なく終わったことに唖然としてしまうが、そんなものかと一人納得しておく。


「広、君の力は・・・」


 どんな力なのかわくわくだ。










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