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あるとき勇者でときどき魔王様!?  作者: 遊家
第一章 魔王勇者の金十字塔
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竜の息吹

 騎士団長の体に、キリが放った渾身の一撃が騎士団長を切り裂く。

 ドバッ。と血が吹き、騎士団長の服が、赤く染まる。


 ーーどうだ!?


 確かな手応えを感じる。僅かな隙を突いた攻撃だ。

 騎士団長はよろけ、剣を地面に突き刺して自らの体を支える。その姿にキリは、勝利を確かに感じる。


 ーー今しかない!


 騎士団長との距離を詰めるべく、走り出す。手にある黒剣を脇腹辺りにぶちこむ。

 だが、それは出来なかった。騎士団長が赤剣で受け止めていた。


 ーーくそ。


 急いで、後方へと飛び下がる。騎士団長は傷がよほど深いのか、その場からピクリとも動かない。

 いや、厳密には右手だけが動いていた。騎士団長は、その二本の指を傷口へと押し込んでいく。

 指は赤く染まり、滴るように血が地面へと落ちる。


 「これを使うとはな。まさか、これ程とはな」


 騎士団長は血がついた指を赤剣へと押しつけながら、刀身に血を塗り込んでいく。

 顔の隣に剣を水平に構える。

 すると、赤剣は赤く、そして燃え上がるように輝く。

 まるで、騎士団長の血液に反応したようにーー。


 ーー轟。と唸りをあげ、剣先から赤く極太い線が放たれる。

 それが、赤剣から放たれた火柱だと言う事に、キリは気づかなかった。

 直後、キリの視界は赤一色に染まった。


 「ーーっ!!」


 キリは転がるように避ける。半ば反射的に。

 眼前には激しく燃え上がる炎が見えた。先ほど放たれたのは炎。それは分かるが、尋常ではない火力に身が凍る思いになる。


 「ドラコン息吹ブレス


 騎士団長が炎の先から姿を現す。口からは血がこぼれ落ちているのが、ハッキリと確認できる。


 「この赤剣に、己が持つ魔力と血を与える事で、発動可能なる。昔から龍騎兵団に伝わる秘伝魔法だよ」


 石造りの広場だからだろうか。広場全体が極度に熱くなり、まるで電子レンジの中みたいな錯覚に陥る。


 「これには、さらに使える副産物も発生する」


 すると、騎士団長の体がグニャリとあり得ないぐらいにねじ曲がる。


 「まさか熱蜃気楼ーー!?」


 地表と、周りの空気との極端な温度差による自然現象を、この男は再現したと言う事か?


 「終わりだ」


 騎士団長の赤剣が、再び赤く輝き出す。

 

 直後に広場は業火に包まれた。

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