表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるとき勇者でときどき魔王様!?  作者: 遊家
第一章 魔王勇者の金十字塔
15/72

サハラ村解放戦①

 グラントール市が解放されてから二日後。

 ルシフェルは義勇軍や王朝軍のメンバーを、廃材が混在する広場に一堂を集めた。


 「我々は、遂にエリア1の解放に成功した。だが、いまだに魔族が支配する場所は多く存在する」


 ラギン戦の疲れがとれないまま、集会に参加したキリは睡魔を払うのに必死だった。


 「そこで、このグラントール市を拠点にエリア2とエリア4解放に向けて、軍を二つに分けて望もうと思う」


 まあ、敵の準備が整う前に攻めこむのは基本だしな。とキリは寝ぼけた頭で適当に頷く。


 「エリア2にはこの俺が率いる。エリア4は解放難易度が高いため、キリ、アスカ、サラと義勇軍から数名の精鋭で挑んでもらう」


 そうそう、俺達と数名で挑みますーー。

 そこで、ようやく頭と体が起きる。


 「ちょっと待った! なんで俺達だけなんだ!?」


 「お前さんはエリア1の解放戦では、一番いい働きだったからな」


 マジでか……。

 そのあとの抗議は、ルシフェルお得意でもある隊長命令により棄却された。


 そんな感じで、キリ達はエリア4にあるサハラ村に向かうことになった。


 「あのヤニ男は絶対に、いつか殺してやる」


 物騒な事を言いながら、サハラ村に繋がるドラバドの森を歩く。


 「なんで、王朝軍で私だけこっちなのよ」


 一人、はぶられたサラは、同じように愚痴を言いながら、後ろからついてくる。

 流石に暑いのか、赤いフードコートを脱ぎ、通気性の良い仕様の防具を着ている。


 「で、後ろにいる義勇軍武装のお二人さん。名前はなんて言うの」


 少し空気を変えようと、さらに後ろにいる二人組の男に、キリは話題をふってみる。

 片方は若干、小太りした体型。緑色の天然パーマで斧を担いだ男が、息切れしながら答える。


 「自分はロンです。で、こっちが相方のメヒアです」


 ロンは隣を同じく、息切れしながら歩くヒョロヒョロでもやしみたいな弓使いの男を指さす。


 「メシアです。以後よろしくお願いいたします」


 なんか、義勇軍から選ばれた精鋭とは思えない二人だな。とキリは少し呆れた目を向ける。


 「ほらほら、二人とも頑張っていこ」


 アスカは最後尾からロンとメヒアを励ましながらついてくる。やはり彼女は面倒見がいいのか、二人が遅れても置いていこうとせず、しっかりとついて来るのだ。


 「でも、まさかグラントール市から行けるエリアが、一気に三つも増えるなんてな」


 サラの隣を歩くように、キリは歩幅を少し、縮めてサラに語りかける。


 「まあ、そうでなくちゃ上層部もただ、商業都市ってだけで解放目標に決めないでしょ」


 サラは水筒を取り出し、コップに水を注ぎ、キリに差し出す。

 こうした熱帯雨林では、こまめに水分補給をしないと体が持たないのだろうか。

 キリはありがたく受け取り、コップに入った水を一気に飲み干す。


 「そういえば、エリア4ってなんで高難易度なエリアなんだ?」


 「ここはね、ドラゴンを自由自在に操る事が出来る『龍騎兵団』がいる所だからね」


 「龍騎兵団?」


 さすがに後ろがついてきていない為、二人はその場に立ち止まる。


 「先の大戦で、私達、人間側がエリア4に攻めこんだ時に、人間側がエリア4で、全滅させたのが龍騎兵団なの。龍騎兵団はリーダーが認めた人に付いて戦闘に参加するの」


 「そいつらって、魔族なのか?」


 サラは首を横にふる。


 「彼らは人間だよ。ただし、ランザーク国に属さない人間が集まった集団。って感じかな」


 「でも、なんで同じ人間なのに争うんだよ」


 キリは疑問の表情を浮かべる。


 「彼らの恐ろしいとこは強さじゃないの。彼らは従った人物への、揺るぎない忠誠心を持った珍しい傭兵部隊で、まず主人を勝手に裏切ったりしない」


 傭兵といった人物や集団は、はるか昔から自分達の『強さ』を高く金で買い雇ってくれる人物、又は集団に忠誠を誓う。

 だが、龍騎兵団は勝手が違う。

 その兵団のリーダーが、次の主と認めた人物以外は絶対に属さない。


 「なら、今から俺達は魔族とも戦いながら、その龍騎兵団って、奴とも戦わないといけないのか」


 後ろが追いついたので、彼らの為にサラと一緒に水を汲みに行く。

 ちょうど近くに、小川があるのを見つけていた。

 小川に向かう途中にサラは、話を続ける。


 「そう。だからエリア4は、解放の難易度が高めに設定されてるの」


 清みきった小川に水筒を沈めて、水筒の中を満たす。ひんやりと冷たい川の水が、水筒を持つサラの手を冷やす。


 「ま、今は龍騎兵団の領地から離れてるし、魔力が探知されなきゃ大丈夫よ」


 そこで、ハッとしたようにキリは顔が青くなる。この副団長様は索敵魔法を使って、敵を割り出す事が得意な人だ。つまりーー。


 「なあ、お前って、ここに来るまでに索敵魔法使ってた?」


 「当たり前でしょ。こんなの敵地で使わないで、どこで使うのよ」


 サラはキョトンとしながら答える。


 「それ探知されるんじゃ」


 「………………………………………………………………………………」


 直後、背後で木々がなぎ倒される音が聞こえた。


 ヤニ男より赤いフード女に気を付けるべきだった。とキリは激しく後悔した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ