表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるとき勇者でときどき魔王様!?  作者: 遊家
第一章 魔王勇者の金十字塔
14/72

グラントール市解放戦 終結

 「アスカ……」

 

 キリは壁の中にいる少女に呼びかける。

 魔法が解除されたのか、壁は音をたてて崩れ落ちる。


 「キ、キリ……そのケガ……」


 アスカはキリの体を見て驚いた。火傷が酷く、所々には深い刀傷がある。


 「待ってて、すぐに救護班を連れてくるから」


 アスカは急いで、救護班が待機するポイントまで走っていった。

 キリはそこらにある中でも、一際、大きな瓦礫に腰を落とす。血が出過ぎたのか、視界はぼやけ、火傷を負っているのだが、体は芯から冷たい。


 (……くそ、意識が)


 必死に意識を保とうとするが、まぶたが重く視界がさらに狭くなる。


 直後にキリの視界は暗転した。



 ◇◆◇◆◇◆


 天候が荒れているのか、薄暗い部屋には時折、雷の光が強く射し込む。

 閃光が男のシルエットを照らし、顔と体の輪郭が露になる。

 金色の髪が雨に濡れているのを無視して、抱えている子供を部屋にある台座へと寝かせる。


 「ロザリオの血が遂に手に入ったな」


 男は近くに寄り添う、シルクハットをかぶった家来らしき男に呟く。


 「しかし、本当にロザリオの血は機能しますか?」


 「構わんよ。機能せねば殺すだけだ」


 金髪頭の男は台座に、己の指先に切り込みを入れ、血で滴る指を筆に見立て、綺麗な円を書き、続けて中に六亡星を刻み込む。


 「始めるぞ」


 男がそう呟くと、台座は光輝き、まるで生きているようにうねり、子供に向かって襲いかかった。



 ◇◆◇◆◇◆


 (……俺はどうなった)

 

 重い瞼をゆっくりと開け、視界に光をとらえる。


 「あ! 起きた!!」


 目を開けると、アスカやサラ、ルシフェルといったメンバーが揃って見えた。


 「みんな……どうしてここに?」


 キリはゆっくりと唇を開き、言葉をつなぐ。


 「どうしてじゃないわよ!!」


 顔を覗き込むようにしていたサラが大声を上げる。


 「あなたが重傷だからって、アスカちゃんが教えに来たから、急いで治療しに来たんじゃない」


 よく体を見てみると、淡い黄緑色のベールに包まれている。

 キリの体にある傷口や火傷から、白煙が出ていた。

 恐らく、サラの回復魔法が作用しているのだろう。


 「あれ? そういえば、あんた回復魔法って使えたっけ?」


 「使えるわよ。これでも後方支援の副団長なのよ」


 サラはふんといった感じで胸を張る。

 キリはルシフェルに、この場所で起きた戦闘を一部だけ隠して、報告する。


 「なるほどな。まあ、お前さんが頑張ったお陰でグラントールは解放されたよ」


 ルシフェルは解放された印となる解放旗の準備をさせる。


 「あと二日は滞在するからな。お前さんもゆっくり休んでくれや」


 「ああ、そうさせてもらうよ」


 ルシフェルは振り返り、事後処理の為、市街の中に入っていった。


 「じゃあ、私達もキャンプに戻りましょ」


 アスカがそういって動けないキリを担ぎ、サラは荷物をまとめる。


 「わりーな二人とも」


 キリはアスカとサラにそう呟く。


 「まったく。帰ったらケーキでもおごってよね」

 

 「またケーキですか?」


 「『また』って言ったけど、いつの間にか約束を破ったのはあなたなんだけど……」


 他愛な話をしながら、三人はキャンプに向かって歩き出した。

 後ろから三人を見据える、赤い目には気づくことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ