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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

切り刻み

作者: 停滞

 一閃。

 それでケリはついた。

 左腕に痛みが走る。しかし傷は浅い。かすった程度だ。

 ならばあいつはどうだ。そう思いながら振り向く。

 腹部を抑えて苦しむ男がそこにいた。確かな手応えがあった右手の刀を握りしめ男のもとに近寄る。恐らくもう長くない命だろう。

 言い残すことはあるか? と首に刀の切っ先を突きつけて問う。息も絶え絶えな男が震えながら首をこちらに回そうとしていたが、真後ろにいる俺を見ることは難しいだろう。すぐとどめを刺す相手のためにわざわざ見える位置に移動する気はなかった。

 強くなったな。男はそう言った。

 この瞬間だけを待ち望んで、そうして生きてきた。

 だから、お前もそうだろう?

 俺がそう言うと、男は乾いた笑いをあげた。

 そして俺はそいつの首を切り落とした。

 それから胴体を幾度も切り刻んだ。

 それでも物足りなくて切り落とした首も原型がなくなるまで斬り潰した。

 刀から血を拭い鞘に納めようとして、俺はそのまま刀を捨てた。

 殺したかった男を殺した。なら後に何がある?

 空を見上げた俺に妙な衝撃が走った。

 力が抜け崩れ落ちた俺が見たのは、目に涙をいっぱいにためた少女の姿だった。

 男を想って泣いているのか? そんな人間が奴にもいたのか。

 かつての友よ、お前は俺と彼女を裏切ったのに、新たな人生を歩んでいたのか?

 殺してやるという衝動がわく。だがあの男はもう殺してしまった。殺してしまった今、誰にこの殺意を向ける?

 遠くに消える視界の中で俺は少女を視線の中央に捉える。

 びくっと震える少女の手には赤く染まったナイフが握られていた。

 あの日彼女を殺して俺を切り伏せたあの男と姿が重なった。

 そうか、あいつは今も世界中にいるのか。

 ならばこの衝動、ぶつける相手はどこにでもいる。

 殺してやる。

 怯える少女を握りつぶすように俺は手を伸ばした。

 あの男がまだ笑っているように見えた。

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