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はじめてのおつかい

作者: 一文字太郎

何の捻りもない、練習用の作品です。



 異世界の、小さな物語。


 とある村で少女キャサリンとその母親マリアは二人で暮らしていた。

 キャサリンはマリアに大事に大事に育てられ、

 立派な箱入り娘として成長していた。

 そんなある日、マリアは風邪をひいてしまった。

 しかし今日は近くの街で一ヶ月に一回の「大市場」が開かれる日。

 マリアは自分の代わりにキャサリンに買い物に行かせることにしたのだった。

 これは、七歳で初めておつかいを行う少女の苦難の道のりを描いた短編物語である。



 私の名前はキャサリン、七歳の、ええっと……女の子です。

 お母さんが風邪で倒れて、何故かおつかいを頼まれました。

 村から一歩も出たことのないこの私が、おつかい。

 ちょっと無理ですね。


 しかしお母さんの頼みです。断れません。

 私は勇気を出して、隣の街へと出撃しました。

 歩きです。馬はいるけど、乗れません。


 まずは村の出口まで行きます。

 そこから見える森を突っ切って、少し歩いて、街にたどり着くはずです。

 お母さんからはそう言われました。

 それを疑っても仕方がないので、その通りに歩きます。


 森につきました。不気味な森です。

 友達から聞いた話だと、魔女が住んでるという噂があるそうです。

 魔女というのは邪悪な存在です。

 私みたいな子供は、すぐに食べられてしまうそうです。

 出来るだけ注意して、森を歩こうと思います。

 食べられたくないですからね。


 さて、どれほど歩いたでしょうか。

 かなり歩いた気がします。

 足が痛いです。

 どうやら私は道に迷ってしまったようです。

 道は、無いですけどね。

 泣きそうです。というより、泣いてました。

 どうしましょうか。


 落ち着けるはずも無く、半べそで森をウロウロしていると、誰かに声をかけられました。


「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」


 それは魔女――ではありませんでした。

 かっこいい、男の人です。

 金色の槍を片手で持ち、腰をかがめて私と同じ目線で話しています。


「と、隣町に、行く途中で、道に迷ってしまって……」


 つっかえながら私は男の人に説明しました。

 隣町に行こうとして道に迷ってしまったことを。

 男の人は私から話を聞くと、こう言いました。


「僕も行き先が同じでね。一緒についていってあげようか?」

「え……、良いんですか?」

「うん。君さえよければ、だけど」

「お願いします」

「じゃあ、行こうか」


 頭を下げてお願いすると、男の人は私の頭を慰めるように撫でてくれました。

 私はようやく、森を脱出するチャンスをゲットしたのです。

 歩いている途中に、男の人と私は自己紹介をしました。


「僕の名前はランドルフ。ただの旅人だよ」

「私はキャサリンと言います。村人です」

「……君はあれだね。随分と礼儀正しいね」

「そうでしょうか?」

「そうだよ。僕が君くらいの歳の頃は最低限の礼儀もわきまえてなくてね。よく親に怒られたものさ」


 なんだか懐かしそうに話してます。

 楽しくおしゃべりしながら歩いていると、湖にたどり着きました。

 綺麗な湖です。

 突然、ランドルフさんが足を止めました。


「どうしたんですか?」

「僕はここにも用事があるんだ」

「用事、ですか?」

「まあ、すぐに終わるよ。友達と話すだけだし」

「……友達?」


 湖の中に、友達が住んでいるのでしょうか?

 ランドルフさんは石を拾って、湖に投げ入れました。

 すると、不思議なことが起こりました。

 湖が虹色に輝き出したのです。

 そして――妖精が現れました。絵本で見たとおりの姿です。

 四枚の真っ白な羽が生えている、ちっちゃな裸の女の子です。


「やぁ、三年ぶりだね」

「いきなり石を投げつけるなんて相変わらずいい度胸ね。それにしても、いつから子連れになったのよ?」

「僕が誰かと結婚するわけないじゃないか。この子はさっきそこで迷子になってたから助けてあげただけだよ。

君の庭で迷子になったわけだから、帰りは君が案内してあげてね」

「それはまぁ、やぶさかじゃないけど。その子はともかく、あんたと同行しなきゃいけないわけ?」

「君は優しいから、そうしてくれると信じてるよ。それともこの子を見殺しにする気かい?」

「う……。分かったわよ! まったく、ここを誰の家だと思ってるのかしら……」


 どうやら私のために妖精さんを呼び出してくれたようです。

 あとで妖精さんにもお礼を言っておきましょう。

 嫌そうではないですが、迷惑をかけたのも確かですし。



 その湖から少し離れた場所で、二人組の男と一人の老婆が様子を伺っていた。

 赤髪とデブの二人組だ。

 どちらも見るからに悪そうな顔をしている。

 彼らはランドルフと妖精とキャサリンの様子を見ながら、話し合っていた。


「あの男が持っている武器、高く売れそうだ」

「ふひッ、あの妖精と女の子も高く売れそうだヨ」

「ああ、そうだな。協力してくれよ、森の魔女さん?」

「うむ。報酬はしっかりと払えよ、小童共」


 男達は人さらいであった。

 人さらい共はキャサリン一行を追跡する。

 バレない程度の距離を保ち続け、森を出たところで襲撃する計画である。

 何故、森を出るまで待つのか。

 それは妖精という種族の能力のせいだ。

 妖精は森に溢れている魔力を吸収することで、数々の魔法を使えるようになるのだ。

 森から出れば魔法は使えなくなる。そうなれば只の羽虫同然なのである。



 私たちは森から出ました。

 森から出てしばらく歩いていると、二人の男とお婆さんが出てきました。

 赤髪の怖い顔のお兄さんと、豚みたいな人です。オークと見間違えました。

 お婆さんは魔女みたいな服を着ていました。

 どう見ても魔女です。

 ランドルフさんは表情を全く変えず、三人組を見ていました。


「誰だい? 君たちは」

「通りがかりの人さらいだ! 武器と有り金全部と妖精とガキを置いてくなら、テメェは見逃してやってもいいぜ」

「おや、随分と欲深い人たちだ。ていうか僕は無視なのかい?」

「男には興味がないからね、デュフフ」

「ああ、そう。お嬢ちゃん、少し目を瞑っててくれるかい?」

「え、あ、は、はい! 分かりました」

「私は目をつむらなくていいのかしら?」

「君は見慣れてるだろう」

「そうね。でも私だって女の子なのよ?」

「へぇ」


 ランドルフさんと妖精さんが楽しそうに会話しているのが聞こえました。

 次の瞬間。

 まぶたを通してものすごい光りが目に入ったかと思うと、何かが爆発したような音が響いたのでした。

 それから先のことは私にはわかりません。



 ランドルフは三人組に、槍を構えた。

 黄金の槍は太陽の光を浴びて輝いている。

 小声で呪文をつぶやくランドルフ。

 ランドルフが呪文を唱え終えると、槍から雷が放出された。

 雷はまっすぐに、三人組へと飛行して、一瞬で直撃した。

 まばたきをする間もなく、雷が三人を貫く。

 後に残ったのは、焼け焦げた地面と人間の骨だけだった。

 ランドルフは骨を拾い上げ、森の方に投げ捨てた。


「お嬢ちゃん、もう目を開けて大丈夫だよ?」


 虫を殺さぬ笑顔で、キャサリンへと話しかけたのだった。

  

「あ、あの。さっきの人たちはどこへ?」

「僕の圧倒的な力を見て逃げていったよ」


 その後は何もなく、隣町に到着した。


「ランドルフさん、ありがとうございました」

「どういたしまして。元気でね。それじゃ」


 ランドルフさんはそれだけ言うと、大勢の人たちの中に消えていきました。

 お母さんから受け取った羊皮紙を見ながら私は買い物を済ませました。

 あとは妖精さんと一緒に家に帰るだけです。


「それじゃあ妖精さん、お願いします」

「しっかり私についてきなさいよ」


 たまに魔物が現れたりもしましたが、妖精さんが退治してくれました。

 瞬殺です。

 怖いと思うより私は、かっこいいと思いました。

 やっぱりなんの問題も無く、村まで帰ることができました。


「じゃあね、キャサリン。それと、出来たらでいいから私に会いに来てね。あそこは退屈だから」


 妖精さんは森に戻っていきました。

 私は早足で家に帰り、お母さんに報告をします。


「買い物に行ってきました」

「そう。ありがとう。今度、何か欲しい物買ってあげるわ」


 私は自分の部屋に戻り、ふと気づきました。


「妖精さんに、お礼言うの忘れた……」


 今度、お礼に行こう。

 そして友達になろう。

 多分それが恩返しになる……はずですよね。

 そう思うと、妖精さんに会うのが楽しみになってきました。



テーマは「ただしイケメンに限る」と「成長」です。


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[良い点] なろう作家にはないものを感じた! [気になる点] 箱庭娘wwww出陣wwwwwww日本語おぼえろww
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