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※今回は王子、王女サイドです。
――勉強部屋にて
「何だって!?」
この国の皇太子である、ロフィードが声を荒げ立ち上がった。
「それで、いつ頃ですか?ラーシャルーラが部屋から居なくなったのは。」
ロフィードよりも落ち着いた様子で問うのは、第一王女のフローディア。
椅子に座したまま、手に持つティーカップを机に置き、報告に来た侍女頭を見た。
「朝食後はお部屋にて、護衛と共に遊ばれておりました……気付きましたのはそれから暫くして昼食の準備が出来たので声を掛けにいきましたら、乳母が真っ青な顔で部屋におりまして……」
侍女頭が報告していると、突然ドンっと大きな音がした。
「扉はちゃんと閉まっていたのか?」
黙って聞いていたロフィードが、机を殴った音だったらしく、机の上に握り拳を置いて侍女頭に聞いた。
「いえ……乳母が気づいた時には部屋の扉が子供一人分ほど開いていたそうです。ラーシャ様の部屋には他の侍女が何度か掃除の為に出入りしていた様で、以前お部屋から居なくなった時も扉が少し開いたいた事が原因でラーシャ様が外に出られたと聞いて以来、扉はちゃんと閉めるようにキツく言い渡していたのですが……」
真っ青になりながら、報告を終えた侍女頭は再び両殿下を見た。
「父上も母上も不在だというのに、何をやってるんだ……」
呟くように、けれども聞こえてきた声に侍女頭は「申し訳ございません。」と何度も頭を下げた。
「お兄様、今は城にいる兵士達にラーシャを探させる事が第一ですわ。」
「そうだな、俺は宰相と近衛に行って城内を探すように言ってくるから、フローディアはマリアンナに声を掛けて母上の執務室で待機しておいてくれ。」
「まぁ、お母様の執務室ですか?」
てきぱきと妹に指示を出し、部屋を出ていこうとするロフィードにフローディアは疑問を投げた。
「そうだ、以前の脱走はどうやら母上の所に行こうとしてたらしくてな。だから今回もそうじゃないかと思うんだ。」
「お母様はいらっしゃいませんよ?」
「喋ることもままならない幼子が、わかってると思うか?」
「……そうですわね。分かりました、急いでマリアンナと執務室に向いますわ。」
「頼んだ。」
そう言うと、ロフィードは先に宰相の執務室へと向かった。
優雅に立上り、兄の後を追うように部屋を出たフローディアは庭の温室へと足を向け、それぞれが今出来ることをやる為に動いていた。