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 お食事も終わり、部屋で人形を振り回してキャッキャされていたラーシャ様の側に控え、いつ何が起ころうともラーシャ様をお連れできるよう注意を払っていたわたくしの顔に、柔らかな物体が飛んでまいりました。


 不審人物でも侵入したのかと思いましたが、横から聞こえたラーシャ様の笑い声に、手にお持ちになられている人形をわたくしの顔にぶつけられたのだと判断いたしました。

 幼子の力と軽い綿が詰まった柔らかな人形故、それ程痛くもないのですが硬い物であった場合眉間に当たればわたくしはこの世を去らねばなりません。


 そういった事もきちんと教えて差し上げねばと、少し声を荒らげて怒ってみたところ、わたくしの言いたい事が伝わったのか持っていた人形をぽふっと床に置いて、先ほど人形のぶつかった顔を小さな手で撫でてくださいました。

 その際、何事か呟かれておりましたがまだまだ宇宙語を話す事の方が多いので、残念ながらわたくしには分かりませんでした…

 願望としては『痛いの痛いのとんでいけ』であってくれれば微笑ましいのですが。


 などと思考の海に潜っておりましたら目の前にいたはずのラーシャ様が、扉の前に移動されておりました。

 慌てて後を追っていくと、どうやら部屋を出入りしていた侍女がちゃんと扉を閉めてなかったようで少しだけ開いておりました。

 あれほど『扉はきちんと閉めて欲しい』と乳母にお願いされていたのに……

 まずいと思った瞬間には、ラーシャ様は既に扉に手をかけその小さな体を廊下へと出していたのです。

 幼子と侮ってはいけません。力の加減が出来ていないので、意外と扉は動くものなのです。


 わたくしは、ラーシャ様の側を離れることなく付き従う事しか命令されていない為、部屋へ連れ戻す事ができません。

 ただラーシャ様の後ろを不審者や事故に気を配りながら着いて行くだけなのです。


「かぁー」


 宇宙語ではない言葉で出てくるのは、王妃様を呼ぶ「かぁー」と食事を意味する「まんま」、寝る事を意味する「ねんね」、そしてわたくしを呼ぶ「ぐぅー」の4つ。

 初めて呼ばれた時には舞い上がって部屋の中を駆け回りそうになりました。


 いけない、また遠いところに意識が行きかけておりました…

 さて、また「かぁー」と呟いておられるところを察するに、どうやら王妃様をお探しのご様子。

 まだまだ理解の出来るお年ではないので、不在を告げた所で分からないでしょうし……ここは乳母か侍女、もしくは王子王女方に見つけていただくまでお供する事に致しましょう。

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