承章8 気が付くとそこには・・・・
「ここは・・・・どこだ?」
俺は何をしていたんだっけか。記憶が少し混乱してる。・・・俺は確かルキナにハンカチを返しに行って・・ビックフォーってやつに会って・・・そう!俺はそいつに吹っ飛ばされたんだ!
「気が付きました?」
「・・・ルキナ!なんでいるんだ?」
予想外の出来事に思わず大声が出てしまう。・・・いや、これはきっと夢だ。レオンとかいうのにふっ飛ばされて気を失ったせいで夢を見ているんだ。早く起きなくては・・・・
無意識に頬をつねってみた。
「あはは、何してるんですか?夢じゃないんですよ。」
つねったほっぺたは痛いし、彼女の笑う顔がまた可愛かった。
「あ、えっと・・・大声出してごめん。ここは一体・・・どこ?」
「ここは支援学科の入り口にある休憩所です。ラッセルさんは気を失って運ばれたんです。」
あれだけ歩いた道を気付かない内に逆戻りさせられたとは、とほほ。まぁ目的の人物に出会えたんだし良しとするか。
「もう、たまたま運ばれた人を見たらラッセルさんだったからびっくりしたんですよ。一体何しに来たんですか?」
「わ、悪い。これを君に返そうと思ってさ。」
少し頬を膨らませる彼女を制止しながらハンカチを出した。
「・・・・わざわざこれを返す為にアイドル科に来たんですか?」
「あぁ、まぁ。」
「まぁってその為にわざわざビックフォーの人と戦わなくたって。」
「なぁそのビックフォーって何なんだ?」
「ビックフォーを知らないんですか?私達よりラッセルさん達戦闘学科の人達の方が詳しいと思ってましたが。」
「あんまり情報通じゃないんだ。」
「そうなんですね。ビックフォーっていうのは・・・・・」
この学園は中央区、戦闘学科区、魔術学科区、支援学科区の4つのブロックに別れているが、ビックフォーは俺のいる戦闘学科区での成績優秀者の集まり。つまりは戦闘学科区の最強4人組ということらしい。
でなぜ戦闘学科区の人間があのタイミングで支援学科区、それもその最奥に登場したのかというとそこにある契約が結ばれているかららしい。
「ビックフォーの方々はアイドル科の護衛を受け持っているんです。」
アイドルというクラス上、過度な追い回し等の不届きな輩が近づく事が稀ではない。その護衛を戦闘学科区へ依頼している。ではそこに戦闘学科区にメリットがないかと言えばそんなことはなく、護衛に当たるということは自身を鍛えるには良い鍛錬場となる。そこに利害が一致しているのだ。加えて言うならばこの護衛に当たるとアイドル科への出入りが自由となる。その護衛に当たっているビックフォーが不埒な事をするのではという可能性はゼロではないが、そこは人格も見定めた上でのビックフォー、その様な事はかつて一度もないらしい。
「守っているのが戦闘学科区のトップの人達なので直接アイドル科の門を潜ろうとする人はあまりいないんです。」
その少数派の人間に自分が入っていることがバツが悪くルキナから視線をそらし頬をかいた。
「クスクス、・・・ところでラッセルさんもしかして通行証はお持ちじゃないんですか?」
「・・・・それってどこかでもらえるのか?」
「ごめんなさい。まさかあそこまで歩いているとは思わなくててっきりもう持ってるものかと。だからこの前も走って帰っていったんですね。」
この前帰り際にルキナが不思議な顔をしていたのは俺が走って帰って行ったからだったようだ。
「今度からこの通行証を使って下さい。これがあればアイドル科に入ることも出来ますし、この休憩所からアイドル科にテレポート出来ますので。」
散々歩いて色々疲れたが、十分な成果を上げることが出来たようだ。