承章3 イベントに行ってみる
・・・・ここは・・・どこだ・・・
・・・・そうだ、ここは小さい頃少しだけ住んでいた家の周りだ。
・・・・この狭い路地裏を抜けると小さな公園があるんだ。
・・・・この公園は俺のお気に入りで秘密基地としていた。
・・・・そういえば、ここで一人の女の子に出会った。
・・・・少しの間だったけど俺はその子と仲良くなってよく遊んでいた。
・・・・確か名前は・・・・・
珍しく目覚ましより早く目が覚めた。
「・・・・懐かしい夢だな。・・・・あの女の子は今どうしてるんだろうか・・・・。」
目覚めたばかりで靄がかかっっている様な頭の中になぜか昨日出会った女の子の事が頭に浮かんだ。
「ルキナか・・・・連絡先でも聞いとけば良かったか・・・」
そもそもなぜ彼女のことが気になるのだろう。ハンカチを渡してくれたお礼でもしたいのか。
「そうだな。彼女にはお礼をしないとな。」
答えが判ったはずなのに心はいまいちスッキリしない気がする。
「♪~~~~~~」
昨日のルキナの歌が無意識に出てきた。
・・・・・・そういえば、この歌・・・・・・・ルキナ・・・・・どこかで・・・・・・・・・
ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ
ノスタルジアともいう様な感情が胸に詰まりそうになった時に目覚ましが活動を開始した。
「おっと、時間か。」
けたたましく鳴り響く目覚ましを止め、俺は今日の訓練を受けるべく用意を始めることにした。
「・・・・・・これでよし。」
訓練で乱れた髪を治し身だしなみを整えた。いつもこんな動作をしているのかというと答えはNOだ。ではなぜいつもと違う行動をしているのかというと訓練の最中にある一つの学園内の情報を見つけたからだ。端的に言うならアイドル科のイベントがこの後中央区付近で行われるということだ。
「(また、あの子の歌が聞けるかな・・・・)」
たった一回歌を聞いただけなのに既に癖になりそうだ。そんな気持ちで中央区に足早で向かった・・・・・・わけだったが・・・・・
「うぉ~~~アリサちゃ~~~ん」
「リサリサには俺達が付いているぜ~。」
イベント会場の周辺は予想以上の熱気で包まれていた。
「(おいおい、こいつら一体どこから湧いて出たんだよ。・・・・・うぇ、戦士学科で見たことあるやつもいるじゃん。)」
ある者はおそらく会場で購買されていたグッズを両手一杯に持ち、またある者達はお揃いの服をはおり徒党を組んでいる。なんだかこの空間に入っただけで目眩でも起こしそうだ。
「(とりあえずルキナを探してみるか・・・・・・)」
そう思い歩いては見たもののわいわいがやがやしていて全く見つけることが出来ない。
そうこうしている内にイベントは終了となった。
「・・・・・はぁ~、こんなに人がいるとはな・・・・・」
「・・・・ラッセルさん?」
疲れた顔をあげるとそこには全く見つけられなかったルキナがいた。
「ほんとに来て下さったんですね。」
「あぁ・・・・でも結局君は見つけられなかったよ。イベントってのはすごいな。」
俺は少し顔を横に向け終わったはずなのにまず興奮冷めやまぬ集団を見た。ルキナも俺に釣られて顔を向け「あぁ・・・」と短い返事を返した。
「・・・・・こういったイベントは結構定期的に行われますのでまた来て下さい。」
「・・・・・暇だったら。」
「えぇ、ぜひ。・・・・・それでは私はこれで行きます。」
おいおい、いつも暇だろ。そんなツッコミを心のなかでしている内に彼女は去っていった。
・・・・・また来よう。