承章1 彼女は何科?
「すごいな、魔法ってやつは・・・。」
自室の鏡で確認したが模擬戦での傷は綺麗に治っていた。
負っていた頬の傷も含め、医療魔法科の魔法で治してもらったのだ。
この学園には多種にわたり学科があるが大まかに分けて三つの種類に分かれている。
俺が通う全般的な兵士を育てる戦士科や弓を専門に扱う弓兵科などの戦闘学科、
医療魔法や召喚魔法など多岐にわたる魔法使いを育てる魔法学科、
そして、そのどちらにも含まれないクラスはまとめて支援学科と呼ばれている。
支援学科については俺は鍛冶科ぐらいしか用が無いので詳しくは知らないが・・・。
ふと机の上に置いたハンカチが目に留まる。
「一体あの子は何だったんだ・・・・」
落ち込んでいる俺に怯えながらも声をかけてくれた、かと思いきや突然逃げ出すように走り去ってしまった。
「ハンカチ、返さなくちゃ・・・」
だが、この学園の中から一体どうやってあの子を見つければいいんだろうか・・・。
「お前もよくやってられるね~。何もそんなに戦士科に拘らなくたっていいだろうに。」
「・・・うるせぇ」
俺は今日も朝から生傷を作っていた。昼休みにそんな俺を見たアフロの友人ダニエルは心配しているのかバカにしているのか真意を読み取れないような言葉を俺にかける。このやり取りが俺達のあいさつになっていた。
ダニエルは不思議と気の合う友人であるが、ダニエルは戦士科ではない。前に何科なのか聞いた事はあるがはぐらかされてしまった。まぁ、答えたくないのなら無理に問詰める事でもない。
「・・・まぁ、どうせやめないのは分かってるからとりあえず飯を食おうぜ。やっぱ腹が減っては戦は出来ぬってな。」
「・・・そうだな。・・・・なぁ、女の子を探すにはどうしたらいい?」
ブフゥ~~~~~~~~~
パンをリスの様に頬張りスープをすすろうとしていた友人は、含んだパンとスープを勢いよく吹き飛ばした。
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・・・・いきなりどうした!」
「いや・・・ちょっと女の子を探していてな・・・・。」
ダニエルに昨日の公園での出来事を説明した。ベンチで落ち込んでいたことは黙っておく・・・。
「なるほどな、お前がその公園で何をしていたかは後で聞くとして・・・・その子の肩の科章と、リボンの何色って憶えているか?」
「たしか肩の科章は天使が描かれていた気がする・・・リボンは緑だったと思う。」
俺の回答を聞くとダニエルは一瞬フリーズし驚いた様子で説明し始めた。
「おいおいおいおい、科章が天使でリボンが緑ってことは同じ学年のアイドル科しか無いだろ。」
「・・・・・・アイドル科ってなんだ?」
「・・・・お前の世間離れにはある意味感服させられるよ。アイドル科さえ知らないとは。アイドル科といえばこの学校の中でも知名度は屈指だぞ。支援学科の芸能系のクラスの中からトップの生徒が集められたクラスだよ。」
「(あの子はアイドルという感じでは無かったが・・・)」
俺が昨日の女の子を思い出していると、ダニエルは腕を組みながら感慨深く
「それにしてもお前が女の子に興味を持つようになったとはね~。お前の居る戦士科のクラスにはあんまり女の子いないだろうからこんな話が聞けるとは思わなかった。お前の数少ない友人としてはお祝いのパーティでも開きたくなるな。あっ!でもアイドル科の子はガードが堅いし、難しいぞ。」
「そんなんじゃねよ。」
まだしゃべり続けるダニエルを無視して、俺は昨日の女の子のことを再び考えていた。
「(取り敢えずアイドル科まで放課後にでも行ってみるか。)」
すると昼休みの終わりの鐘が聞こえてくる。
「まぁいろいろと頑張れや。」
「だから違うと言っているだろう。」
ダニエルは俺の言葉も聞かず、一瞬で消えてしまった。
「(あいつ、一体何者だよ・・・)」