結 二つのブレスレッド
「・・・よし、今日はこれでいいかな。」
髪型のセットを終え試験の用意完了。・・・・・・じゃなくて・・・・・
彼がくれた希望の石は加工してもらい一つの翡翠色のブレスレッドにした。これならいつだって身につけてられるから。・・・・・////////ずっと彼が側にいてくれる気がするから/////////・・・・・・・
・・・・・・あの日は結構びっくりしたな。彼の友達、確かダニエルさんっていったかな。その人とビックフォーのレオンさんが話していてたまたま立ち聞きしたら、戦闘学科の洞窟が別次元と繋がったせいでモンスターのレベルが飛躍的に上がって生徒の立ち入りを禁止するって。しかもそこに何故かラッセルさんが入っちゃったって言うから思わず二人の間に入って連れてってもらっちゃった。いつもならそんなとこに私が行ったからって何も出来ないって判るんだけどなぁ・・・・・。
「(・・・・まぁそのおかげでラー君が洞窟に入った目的は判ったけど・・・・)」
ラー君という呼び方やこの鉱石を渡してくれた時の真っ赤になった彼だとか、抱きついちゃったりとか色々な事をフラッシュバックして思わず顔がにやけてしまう。そんな自分がますます恥ずかしくなり顔が更に熱くなる。
「そろそろ出番よ。」
「あっ!はいっ!」
先生から呼びかけで我に帰り改めて気を引き締める。
「(大丈夫、もう迷いなんかない。・・・・昔みたいに彼が応援してくれるから。・・・・・・)」
控室の扉がガチャリと力強く開いた。
「(・・・・・はぁ~ぁ、また負けたよ。)」
俺はいつものベンチに腰掛けため息をついた。
今日もいつも通りの模擬試合だったわけだが、結果は相も変わらず負けてしまった。しかも相手はあの時勝ったはずのカシウス。あの時の様に俺をなめてかかってくれないもんで付け入るスキがない。
「(・・・・・まぁただ、前みたいにバカにされることはなくなったな)」
あの洞窟での一件は戦士学科の中でも噂が広がり俺は前みたいにバカにされることはなくなった。まだ劣等生であることは変わりないが、前とは少し違う立ち位置に変わった気がする。立ち位置だけでなく俺自信も少しだけ変われたのだろう・・・・・
「まぁ、次は負けないさ。」
レオンの教えも受けて段々気付いてきたのだが俺には剣一本で戦うことより剣と近接格闘、要は殴る等の打撃を併せての戦いの方が合っているようだ。今はまだスタイルとして確率出来ていないが一歩ずつ確実完成に向かって進んでいる。これが負けても前みたい落ち込むことのない理由。落ち込んでもいないのになぜいつものベンチに腰掛けているのかというと、今日は彼女の試験の日でここにいればなんとなく・・・・・
「・・・・やっぱり・・・・ここにいたんですね。・・・・」
ゆっくりと首を横に向けるとそこにはあの日出会った時と同じ様な位置にルキナが立っていた。
「ここにくれば逢えるような気がしたので・・・・・」
「・・・俺もだよ。」
ルキナは何も言わず俺の横に腰掛けた。俺達二人に温かい陽の光が降り注ぎ優しい風が辺りを包んでくれる。
「・・・・・試験はどうだった?」
ほんとは彼女をひと目みて答えは分かってはいたが、敢えて聞いてみた。
「合格しました。・・・ラッセルさんのこのブレスレッドのおかげですね。」
「いやいや、ルキナ自信の力だよ。まぁ、おれは君なら絶対大丈夫だって思ってたけど。」
「ううん、ほんとにこれのおかげです。ありがとうございました。」
またしばし沈黙が訪れたが、それはどこか甘美なものだった。
「・・・・・・ここで出会ってまだ全然月日なんて経ってないはずなのにすごく昔に思えるね。」
「出会ってっていうか再開だったんだよな。俺はすっかり忘れてたんだけど。・・・ルキナは一発で俺の事思い出したのか?」
「ううん、最初はあの人どうしたんだろうって思って声掛けただけだよ。ただ、なんとなく会ったことはある気がして名前聞いた時にもしかしたらって。決定的だったのはそのブレスレットを拾った時かな。やっぱりラー君だって・・・・・」
あっ!といった感じでルキナは口に手を当てた。
「いいよ。それで。ついでに丁寧な言葉遣いじゃなくていいし。」
ルキナはニッコリ微笑んだ。
「・・・・・ルキナはやっぱりすごいな。俺は未だ劣等生から抜け出せないや。昔から不器用で要領悪かったからな。」
「うん。再開した後も思ったけどラー君昔のまんま。」
励ましてほしかったわけではないのだが、肯定されてしまうとちょっと寂しく思う。
「どこか不器用でぶっきらぼうな感じに見えちゃうけど、ほんとは真面目でそれでいて真っ直ぐで昔出会った頃のまんま。・・・・・だから私は知ってるよ。ラー君はすごい力を持っていてその力を磨き続けることが出来る人。・・・・ラー君なら絶対大丈夫だよ。」
「・・・・・ありがとう。・・・・ルキナ、もう少しちゃんと整理出来て自分にほんとに自信を持てた時には君に聴いてほしい言葉があるんだ。」
「・・・うん・・・・・待ってる・・・・・・ずっとずっと待ってるね」
一度は離れ離れになった二つの光は時間を経て再び交わった。その腕には瑠璃と翡翠の二つのブレスレッドがこれから先もずっと輝いているだろう。