転6 鉱石発見
「・・・・勝った。・・・・カシウスに勝った。」
洞窟の中に入ったラッセルは拳を握りしめた。いつからか何度も見下しバカにしてきたあのカシウスに。戦士学科のトップに俺は勝った。剣でというわけにはいかなかったが、それでも俺はあのカシウスに勝ったんだ。その思いが心の中から溢れだしてきた。
最後にきまった肘打ちはレオンが俺に教えてくれたものだ。あそこまで綺麗にきまった事はなかったがこれもあんな練習のおかげというものだ。
「あの肘だけの歩伏前進とか意味あったのか~・・・・さて、いつまでも浮かれてられないな。」
ここから先は言葉が通じない奴らの可能性が高い。もう一度気を引き締め直し歩を進めた。
・・・・・・・・・・予感は的中だった。洞窟の中にはゲル状のモンスターやら角が生えた獣のようなモンスターやらがうじゃうじゃと、これは多すぎないかってぐらいいっぱい遭遇した。俺は遭遇したモンスターをばったばたと倒・・・・す事など出来ず思いっきり逃げた。全速力で。逃げて少し休んでまた逃げるそんな行動を何度か繰り返し岩を背に座り込んだ。
「ハァ・・・ハァ・・・一体どこにあるんだよ」
・・・・・・・・キュ~ン・・・・・・
「今のは鳴き声・・・・・」
走り回ったせいで既に重いが腰をあげ一つ角を曲がり先を覗いてみた。
!!!
そこには圧倒的な存在感を放つ一つの生物がいた。緑の光沢がある鱗が寸胴な胴体を覆っており短い4つの足がその胴体を宙に浮かせている。額には一本の角が生えていてその少し下には丸い目と大きく発達した口に牙を光り、背中には胴体に対して心許ない一対の羽が生え時折バサバサと上下させる。
「あれが・・・・」
よくよく見るとその生物は二匹いた。圧倒的な存在感を持つ親の影に隠れて一匹の雛が。
親に比べ鱗も整っておらず全てのパーツが頼りないの一言。触ればまだプニプニと柔らかさそうだ。これだけ近い距離で気付かれないぐらいこの生物は鼻があまり良くなかったのが俺にとってのラッキーだった。少し様子を伺っていると雛が眠りにつき親竜は巣を離れた。おそらく雛が寝たので餌を取りに行ったのだろう。
!!!
心臓がピクリと飛び跳ねた俺は自分が更に幸運に見舞われている事に気付く。雛のすぐ横で虹色に輝くそれこそ今回俺が求める石そのものだった。キュル~んとまん丸くなっている薄緑の物体は絶対に俺の事は気付いていない。
いいか、絶対音立てるなよ。ここで笑いを取るために何かを落とすとか絶対するなよ。
そんな謎の心の声が聞こえた気がした。
巣の中で丸まっている緑の物体は近くで見ると余計プニプニしている様に見える。一瞬ちょっと触ってみようなどと考えてしまう思考を首を左右に振り吹き飛ばした。
「(慎重に・・・・慎重に・・・・・)」
心の中で何度もそう呟き目的の鉱石を手にとった。
「(よし、入手完了)」
作業はいったって順調だった。後はこれで逃げればいいだけ、そう思った時上から一滴の滴が落ちてきた。運の悪いことに巣の真ん中で気持ちよさそうな寝息を立てている物体に向かって。
ピチャン・・・・・・・
決して痛くはないだろうその衝撃で緑の物体はムクリと起き上がった。
「(まずい!!!)」
起き上がった直後は目が半分しか開いていなかった雛は俺の姿を確認した途端一気に真ん丸に目を開いた。
「キュ~~~ン」
「た、頼む。もう少しだけ静かにしててくれ。」
俺のそんな願いなど聞き入れる様子も無く雛は声を出し続けた。
一つの巨大な物体が巣に戻ってきたのはほんの少しの間を置いてのことだ。