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全く、それが嫌だと言うのに。

「失礼します。」

そういって部室に入ると、教室の掃除当番だったのもあってか、丸机に部員全員が集まりきっていた。ちなみに何故か椅子は一個も置いていなく、全員立っている。

「さて、これで全部員集まりましたね。それでは本題に入りましょう。」

仕切なおすようにそういって、瀬永先輩が、全員に紙切れを渡す。紙の上部には大きめの字で『地区大会について』とかかれていた。

「今配布した紙は、卓球の大会についてです。現代の卓球の大会は大きく分けて四つになります。詳細をいうと地区大会、県大会、全国大会、そして新しく増えた地方大会ですね。」

瀬永先輩がそういって、右手の指を四本立てて続ける。

「大会の順序を説明してしまうと、まず地区大会の三位までに入れば県大会に出場可能になります。そして県大会も、三位までに入れば地方大会に出場可能になり、地方大会で四位までに入れば全国です。ちなみに、シングルスの場合、地区大会以外は全部男女混合になるんで注意してください。」

そう説明しながら指を指を引っ込めていき、最後には全国大会を表した人差し指だけが残っていた。

「やっぱり皆は、全国大会までは簡単に行くようなレベルなんですか。」

ふと尋ねてみる。

けれど、僕以外はそのくらいの強さを誇っている可能性は、充分にある気がした。

けれど、予想外にも瀬永先輩は首を横に振った。

「そう簡単に全国には行けませんよ。小学生以下の部とは似て非なる実力差があるりますから……。」

そういって苦笑する。

そんな中、雷火が何故か、紙を凝視していた。

「どうしたんだ、雷火ちゃん?」

「今日何日だ?」

突然に質問を投げ掛けられたが、すぐさま燈浬が「14日よ。」と対応してくれた。

それをきき、雷火が僕に声をかける。

「地区大会までもう二ヶ月もない気がするんだが……。いや私にとっては苦じゃない、むしろ燃えるけどな!」

そんな言葉をきき、僕もすぐさま紙を見て大会開催予定日を探す。

まぁ二ヶ月もないっていっても流石に一ヶ月くらいは―――――――

「って四週間程度しかないじゃないですか!」

ちなみに、厳密には05/13開催、今から29日後だ。

「一応、あなたも大会に出す予定なので、死ぬ気で練習しないと痛い目あいますよ?」

瀬永先輩がふふっ、と笑う。

死ぬ気でやっても間に合う気が全くしなかった。

「まぁけれど、卓球をするのは、僕にとっては苦ではないのだから。やれるところまでやってみますよ」

「言ってくれますね。期待してますよ。」

そう微笑むんだと思ったら、瀬永先輩はすぐさま真顔に戻り、けれど、と言葉を続けた。

「けれどあなたには練習より先にやることがあります。」

その言葉をきき、皆が何か思い返したように畳みかけてくる。

「ああ、確かにあるな、やるべきこと。」

「むしろやらなければ、卓球台に着く意味なんてないわね。」

「そうですね。とりあえず、それを行いましょう。」

「そうだぞ苗代後輩!今それをやらずしていつやるというんだ!」

なぜか部員全員が便乗してくる。

僕はさっぱりだというのに。

「何なんですか、やるべきことって……」

「「「「「戦型を選ぶこと」」」」」

打ち合わせをしたかのようかハモり度だった。

「一応、あなたが昔使っていたラケットと同じものを用意してあるんです。しかし昔はあなたは前陣異質型だったのですが、念のため違う戦型確認しておいたほうがいいかと。」

戦型によって多少なりとも練習法は変わってくるらしい。だからまずは戦型を選ぶと言うことなのだろう。

「そんじゃ、一応戦型知らせておくな。私はシェークで表が裏ソフトラバー、裏が表ソフトラバーだ。戦型はドライブ主戦型オールラウンダーだ。中陣からのドライブが得意だぜ!」

そう雷火がキメ顔で言った。それに便乗して燈浬も口をだす。

「私は、シェークハンドで、表が裏ソフトラバー、裏が粒高よ。戦型は速攻型オールラウンダー。まぁ、雷火とダブルスをよく組むから、相手を惑わすためにラケットが似通っているのよ。」

確かに、これだけ顔が似通っていて、なおかつラケットのラバーも似ていたら惑わされても無理はない気がした。

ちなみに、おもに表も粒高は、形は似ているが性質は全く違うので、それで相手を陥れるらしい。

次は吉田が戦型を教えてくれだす。

「え、と……。私は中国式ペンです。中国式ペンというのは、シェーク用ラケットをペンハンドの持ち方で持ったもので、通称中ペンといいます。表が裏ソフトラバー、裏が表ソフトラバーで、戦型は前陣速攻型です。」

「前陣速攻……前陣異質に一番近い戦型だったよな?」

「はい、わからないことがあったらなんでも聞いて下さい。」

えへへ、と吉田が笑う。

と、最後に安川先輩が相変わらずのハイテンションで言葉を走らせだした。

「私はシェークだよ!ちなみにラバーは表裏どっちも裏で、中陣ドライブ型だよ!」

と、このように部員一人一人に得意な戦型を教えてもらうことになったのだが――

二時間後

「苗代は―――前陣異質以外は無理だ。」

「才能がないのかやる気がないのかわからないくらいね。」

「前陣速攻型はまぁ特にかわりませんね。バックはちょっと……駄目でしたが」

「シェークの才能をこれっぽっちも感じなかったよ。」

ぼろくそ言われた。

「そ、そんなに駄目だったか?」

「なんだよ自覚なしかよ。中陣からのドライブしろってのに、ドライブをかけてる最中にスマッシュの振りにかえてボールぶっ飛ばす程の重症なのに。途中までいい感じなのに、なんで最後まで上に振り切んないんだよ!」

「雷火に同じくよ。」

「私も、バックハンドで顔にスマッシュを百発百中で当てて来るのは……。裏ラバーの才能がないとしか……。」

「ペンの時は普通にボールが返ってくるのに、シェークになるとボールが毎回場外ホームランになるのは流石にきついかな。」

と、言う訳で。

「苗代君は反転ペン、ラバーは表は表、裏は粒高で決定ですね。戦型は前陣異質で。」

結局は原点に戻ってきた。

あれ?そういえば―――

「瀬永先輩って、戦型何なんですか?」

何だかんだでそれを聞いていなかった。

それを聞くと、瀬永先輩が苦笑して、私の戦型は一筋縄じゃいけませんよ。と先に補足をいれた。

「私のラケットはシェークで、ラバーは表で裏ソフトラバー、裏が粒高。そして戦型はカット主戦型、いわゆるカットマンよ。」

「カットマンはね、完璧に上達するには何年とかかる戦型なんだよ!それにそれ相応の強さもあるしね!」

「違う戦型だって、上達するには何年とかかるじゃないですか。楽に強くなれる戦型なんてありませんよ。」

そういって微笑むと、瀬永先輩がすぐさま仕切直すように手を二回叩く。

「それでは、苗代君の戦型もきまったので、今から卓球の練習を再開しましょう。まずは基本練習から行います。」

そういって二枚目の紙を渡される。上記の枠囲みには練習メニューとかかれている。

「一応読み上げておきますね。まずは15分フォア×フォアです。次にフォア×ショートを10分交代で行い、次にツッツキ10分、ロングドライブ×ブロック20分交代、台上ドライブ×ブロック20分交代、ドライブ×ドライブ25分、回り込みとフットワークも20分行います。で、それらが終わったらオールレンジでの技術向上にむけて、ドライブ、スマッシュ無しでの試合を5セットマッチで行い。基本練習を終えます。予定では3時間半で終える予定です。水分補給は各自でお願いします。」

と、説明してもらったものの、何を言っているのかが全くわからない。『ツッツキ』とか何語だよ。ツが多い気がするんだが。

そんな無駄な思考を働かせていると、いつの間にか今日の練習相手が読み上げられていた。

ちなみに僕の相手、瀬永先輩のようだ。

「と、今日は余り時間がなのでさっさとやってしまいましょう。それではそれぞれ台に着いてください。」

その合図で、それぞれが「よっしゃやるか!」とか「楽しそうな練習メニューじゃない」などと呟きながら台に着く。

そんな様子をみていると、ポンと肩を叩かれる。後ろを振り向くと、瀬永先輩が立っていた。

「それでは、私達も台に着きましょう。練習については安心してください。私がわからないものは教えますんで。」

そういって、微笑みかけてくれる。

本当に優し人だと思う。まるで―――

「ありがとうございます。それにしても、瀬永先輩って小学校の先生みたいですよね。」

瀬永先輩が台に歩き始めたので、歩調を合わせながらそういうと、瀬永先輩が何故か俯く。

「先生……ですか。私はそういう感じに見られてるんですね。」

何故か微妙に悲しそうに呟いた。

『小学校の先生』に嫌なイメージがあるのか?

「すいません、言葉不足で。さっきのは生徒に接するような優しさを感じると言うという意味で――――」

「分かってますよ。全く、それが嫌だと言うのに。」

先輩が少しむくれ、歩調を早め、僕よりも前を歩いていく。そんな中先輩は何かを呟いた。

「けれど――――鈍感ぶりからも、今も昔と変わっていなくて、安心しました。これならきっと、私はまたあなたのことを――――」

小声過ぎて何を言ったのか聞き取れなく聞き返す。

「すいません今なんていったんですか?」

「なんでもないですよ。さぁ卓球をしましょう、苗代君。」

言葉を濁され、不満が残る。しかし、急に振り返ってこちらに微笑みかけた顔は、何よりも可愛くて、穏やかで、僕は沈黙以外にものを行うことができなかった。


吉田七海(以下七海)「講座を始めます。」

竹内燈浬(以下燈浬)「今日は練習メニューなどの補足のようね。ところで吉田さん。」

七海「何ですか?」

燈浬「あなたって何カップなのかしら?」

七海「何カップ?どう言う意味ですか?」

燈浬「胸の大きさの話よ。というか、もしかしてブラをつけてないのかしら?」

七海「つけてないですよ。」

燈浬「さすがに華奢な体をしているとはいえ、それはまずいと思うわ。」

七海「え、その、中学一年生の春でブラを付けていない人は、小数でもいると思います。」

燈浬「そういえば私達まだ中一だったわね。」

七海「忘れてたんですか……。」

燈浬「危うく、『私はCカップよ。ちなみに雷火はBカップ。』とか自慢してしまうところだったわ。」

七海「あはは……。けど、逆なんで高一からの物語じゃないのでしょうか?高一からのほうが進めやすい気が……。」

燈浬「そこら辺は仕方ないのよ。高一からでは矛盾点が多く出来てしまうのだから。」

七海「例えばどんなことでしょうか?」

燈浬「主人公が最初から卓球がうまい、なんてなったら、苗代君には取るに足らないツッコミしか残らないじゃない。」

七海「な、なるほどですね。」

燈浬「そういうわけで、真面目に始めましょうか。」


七海「まずはフォア×フォアについてです。フォア×フォアというのは、お互いにフォア側にボールを打ち返し続けるものです。基本中の基本の行動で、試合前に、三本程度(三回ミスをするまで)行います。」

燈浬「ちなみに、試合前のフォア×フォアでは、打球感や、相手の癖を掴むことができるわ」



七海「フォア×ショートは、さっきのフォア×フォアの片方が、ショート(ミドル、バックの返球)をすることです。


回り込みというのは、まず卓球台の真ん中に立ち、そこからバック側に来たボールを、フットワークで回り込み、フォアで返すことです。


そして試合についてですが……」

燈浬「残念ながら、時間が迫っているみたいだわ。これについては次回に回しましょう。」

七海「はい、わかりました。けど、なんか後回しにされた説明が他にもたくさんあるんですけど……。」

燈浬「七海さん、そういうのは言わないのが吉なのよ。」

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