卓球って面白い
「まずは、吉田七海 対 竹内燈浬、安川 対 竹内雷火の試合を行います。苗代君は卓球の練習からおこないます。それと苗代君は私との試合のみなんで、トーナメント表に訂正を入れておいてください。」
その合図を聞くと、みんながそれぞれ適当な台につきはじめ試合を始める。一応僕はトーナメント表の試合のない欄に斜線を入れておいた。
「さぁ、私達もいきましょう。」
と瀬永先輩が僕に声をかけた瞬間、部室のドアがノックされる。
「失礼します」
よく通る声が聞こえたとおもったら、扉が開き、女性が入ってきた。
整った顔立ちに腰までのポニーテール、印象としてはクールな女性。どこかで見たような気がするが、思い出せない。
「ああ、なんだ、由沙じゃない。誰かと思った。まぁ声でなんとなくわかったけど。」
瀬永先輩の同級生のようだ。
やっぱり初見か。と思ったが、僕は次の言葉をきき、驚愕した。
「今日は卓球部室使えないか?バンドの練習に使いたいんだけど。」
バンドの練習?ここで?そんな馬鹿な。
「使ってくれていいよ。今回はギターの方でしょ?」
「そうだよ。最近、新曲考えたからさ。合わせたくてな。じゃ、遠慮なく部室は借りさせてもらうよ。」
「ええ。それじゃ苗代君、卓球の練習へいきましょう」
「は、はい。」
動揺しながらも、先輩がついた卓球台の位置に向かっていこうとする。
けれど、卓球部室から卓球場に入った瞬間、僕は目を疑った。否、心を疑った。
卓球場は静かで、それぞれの試合に極限までの集中力を張り巡らせている。そんな中卓球ボールの跳ねる音が響ていた。
素早く飛びまわるボールに、わかるはずもないのにわかる雷火達の動きのキレのよさに、僕は異常に高揚していた。
それを見てか、瀬永先輩が微笑み、僕に声をかける。
「卓球のルールは、軽く説明するだけで平気そうですね。いや、必要はないかも知れませんが。」
そういって、僕に台につくようにいうと、軽い説明を始める。
「卓球では、フォア、ミドル、バック、といい用語が存在します。台を縦に3分割し、利き手側がフォア、真ん中がミドル、逆手側がバックです。
で、あなたの使用するラケットは反転ペンで、振り方は――――聞いていますか?」
せっかく、説明してもらっているのに、僕は高ぶる心臓は収まらず、集中なんて出来ていなかった。
それを見てか、瀬永先輩が再び微笑する。そして、気をきかせてくれる。
「卓球試合、始めますか?」
「はいお願いします。それと、ありがとうございます。」
「それでは、どちらが先手のサーブを決めるかじゃんけんをしましょう。」
そういって、じゃんけんをした結果、僕が負けた。
「それでは、私が先手サーブをさせていただきます。それにしても、歌、始まりましたね。」
いつの間にか歌が始まっていたようだ。
瀬永先輩に言われるまで、気付かなかった。
だけど今はそんなことより。
「それでは、よろしくお願いします。」
瀬永先輩がそういってサーブ打つ体勢に入る。こんなにも興奮しているのに、何故か冷静に瀬永先輩がどのようなモーションをとっているかがわかる。
まずは、バック側に構えつつ、ボールをラケットの表側で左に擦る、振りをした。そのままボールを右にもしくは下に擦っている。つまり右か下回転がかかっている。
そしてボールは僕のフォア側に浅めに落ちてくる。
何故か、何故だろうか、僕はこのサーブを打ち抜ける気がした。右回転だろうが、下回転だろうが。
高ぶる感情のまま、僕はサーブを叩いた。
一瞬でまっすぐに向かっていったボールは、瀬永先輩側の台にバウンドしていった。
「…………!?」
瀬永先輩が驚愕の顔をした。しかしすぐさまもう一度同じコースにサーブをうってくる。
それも僕は叩きいれた。
すぐさま瀬永先輩が微笑み、
「次はあなたのサーブですよ。」
と、僕にボールを渡してくれる。
結局まともに点が取れたのはそれまでだった。いつの間にかバンド部の歌と共に試合は終わっており、11対3という結果で僕は惨敗した。
だけど、悔しいけど、
「卓球って面白いな……!!」
まだ気持ちは高揚している。
そんな僕をよそに、瀬永先輩が申し訳なさそうにしながら僕に声をかける
「残念ながら、今日のあなたの練習時間はこれで終わりなんです……。明日から正式に卓球の練習が始まりますので―――」
「待ってくれないか瀬永先輩。」
いきなり雷火が現れる。
そして真面目な口調て喋りだした。
「もうちょっとくらい、苗代に卓球やって行かせてもいいんじゃないか?今日は遅刻してきたんだしよ。それに何より、私はこいつと試合がしたい。」
「そうだよ、真広っち!私も苗代後輩を0対11(ラブゲーム)で負かしたいよ!」
「そうね、私もこう……苗代と試合がしたいわね。面白いじゃない、無条件で一定の高さのフォア側に来たボールを叩けるなんて。ボールの速さも異常に速いし、どうかしら、もう少しくらいやらせていってもいいんじゃないかしら?」
「そ、そうですね。私もやってみたいです。試合」
いつの間にか、みんなが集まっていた。
そしてみんなが僕の総当たり戦参加に同意してくれる。
それをみて、瀬永先輩が笑う。
「そうね、みんなが平気だというなら、今回の総当たり戦は本当の部員全員で行いましょう。」
そこから、14時まで試合は行われた。
結局、試合が終わってトーナメント表を確認してみると、僕の欄には負け星しかならばなかった。 けれど、悔しいけれど、最高で最良の気分だった。
竹内雷火(以後雷火)「基本卓球用語講座はじめ…………ってあれ?」
安川史(以後史)「どうしたのかな雷火後輩。」
雷火「いや、私毎回『基本卓球用語講座』に出てる気がするんだけど。」
史「毎回じゃないけど確かによくでてるね。うらやましいぞ後輩ちゃん!!」
雷火「私的には嬉しくないんだ。」
史「なんで?出番が増えていいじゃないか!!」
雷火「私にもやりたいことってのがあるんだよ。全く今こうしている間にどれだけ町内を走り込みできたことか。」
史「走り込みとは……青春だね!!」
雷火「ああ!!私の中学時代は青春でうめつくしてやるぜ!!
っと、時間がないしさっさとはじめないとな。」
史「戦型についてだよ!!」
雷火「卓球にはそれなりに多くの戦型があるんだ。挙げていくと。
前陣速攻型、前陣・中陣異質型、前陣・中陣ドライブ型、カット主戦型、オールラウンダーといったところだ。」
史「今日は前陣速攻型の説明だね!!」
雷火「前陣速攻型っつーのは、台から離れずに攻める戦型だ。ラケットのバック側には表ソフトを貼るのが多いな。素早く相手の球を打ち返せる反面、すぐ球がかえってくるから、高い動体視力と反射神経が必要になるのが面倒臭いところだ。」
史「まぁ説明はこれくらいでいいよ。それよりさっさと昼飯食べよー!!もう13:00なんだから!!」
雷火「ちょっ!!押さないでくださいよ!!」
Wikipedia参照