ようこそ、機械仕掛け、もとい機械地下茎の中へ
結局のところ、今日は卓球はせずに『卓球部専用アパート』に引っ越すことになった。
『卓球部専用アパート』は二階建てで、予想外に大きかった。縦:横は1:2程度で、一階につき四部屋+αという感じの設計だ。ちなみにαには、何故かある食堂や、トレーニングルームなどがあった。
瀬永先輩によると、「卓球の練習したい人は各自近くの卓球場にて」、とのことだが、当然ながら卓球場など行く気はでなかった。そんな僕は、二時間程度かけて引っ越しをすませたところだった。
うん、完璧だ。これなら何不自由無く過ごせる。
「そういえば、隣の部屋って誰の何だろう?」
ふとつぶやく。ちなみに僕は一番左端の部屋だ。
やることもないし、ちょっと話し掛けて見ようか。
と、思うと同時に実行する。外に出て、一応鍵をかける。 そしてそのまま少しとまどいつつも横のドアのチャイムを押す。
ドアの表札には『燈浬』とかかれていた。竹内先輩の部屋のようだ。
10秒程度たった後に、インターホンから声が聞こえた
『どなたかしら。』
微妙に棘がある口調だ。
「苗代です。時間、ありますか?」
そう尋ねると、少し沈黙する。
『別にいいけれど、女性の部屋に当たり前のようににあなたは入るつもりなのかしら?まるで、エサに群がるハイエナね』
いや誰も群がってないけどな。
内心でツッコむ。
「一応、僕の部屋が空いてますけど。」
『極自然に、女性を自分の部屋に連れ込む方法としては、すごいうまいと感じるわ。けれど私には通用しないわよ。』
「なら、公園に……。」
『私はインドア派よ。』
「……………」
僕のことが嫌いなのか!?そうなんだな!!
『存外、あなたは面白い人ね。いや、いじりがいがある人というほうが正しいかしら。いいわ、中に入ることを許しましょう。』
「あ、ありがとうございます……。」
何一つ面白くない会話を終え、部屋に入る。
と同時に現れる大量の機械。それぞれ個々として違う機械のようだ。
そんな中、竹内先輩が表情を変えずにしゃべりだす。
「ようこそ、機械仕掛け、もとい機械地下茎の中へ」
全然上手くないどころか親父ギャグレベルだった。
それよりも、僕にはとてつもなく気になる物があった。
「ところで竹内先輩、その先輩が持ってる爆弾って…。」
といいかけたところで、何故か竹内先輩がその爆弾が全力で投げてきた。
レプリカだよな!?レプリカなんだよな!?
そう思い込みながらギリギリで胸の辺りでキャッチする。
「……取ってくれると信じてたわ。」
「露骨に残念がってる顔浮かべながらいわれても説得力全くないですよ!!」
「さっきあなた何て言ったのか、もう一度聞かせてくれないかしら。」
「急に話題を変えないで下さい。」
聞き取りにくいことこの上ないな。
「さっきですか……、『先輩が持ってる爆弾って』だったはずですが。」
「『先輩』って誰の事をさしているの?」
「竹内先輩のことですよ。」
やはり、と先輩が呟く。そしてこちらを睨む。
「私は、中一よ。」
口調は変わっていないのに、怒りが込められてる。
そんな中僕は動揺を隠せずにいた。
「えっその、すいませんでした。」
と、謝罪を入れる。
「敬語がムカつくのだけれど。」
「そこは我慢してくれないのかっ!?」
いや、まぁタメ口解禁は助かるけどな。敬語は敬語で使いやすくもあった。
「人を年増扱いするなんて、『さん』付けにも値しないわね。」
「それは謝るよ。悪かった。だけど一歳違いでは年増扱いとは言わないと思うんだが。」
「もしあなたとの間に子供ができても、あなたのことを『お父さん』でなく『中年親父』って呼ばせることにするわ。」
「『パパ』とまではいかなくても、せめて『親父』にしてくれないか!?」
「いいじゃない。六十代でも『中年』なんて、若く見られていそうに聞こえるし。」
「『中年』っていう単語には、いい印象がないんだよ!!」
中年太り、中年ハゲ、等しか僕の頭からは思い付かない。
「ところで、『中年ハゲ』って、『厨念刷毛』と書くと酷くイタく見えるのは私だけかしら。」
「それはお前だけだ。てか『厨念』ってなんだ。」
「最近『〜〜厨』と言うのをよく見かけるけれど、『厨』は台所と言う意味だと理解している人は何%くらいなのかしら。」
「確かに『厨房』って書けば大体の人が台所ってわかると思うが。『厨』一文字の単語があることは気づきにくそうだな。」
「まるで、卓球部における苗代君のようね。」
「どういう意味だよ!?」
「『竹内達』と言えば、大体のクラスメートは卓球部と気づくと思うけれど。『苗代君』といっても大体のクラスメートは卓球部とは気づかない。」
「確かに小学校からの付き合いの奴には、卓球部に入部したことを驚愕されそうだけどな。」
「えっ、友達いたの。」
「なんで素直に驚くんだ!?」
「友達いないから、卓球部にウハウハハーレムしにきたんではなかったのね。」
「初対面からそんなこと思われてたのか!?」
「仕方ないじゃない、私が新入部員連れて来た時に、『ロリキャラ最高!!』って心の声が聞こえたのだから。」
「なんで最初からロリコン扱いなんだよ!?」
最初から設定がマニアック過ぎだろ!!
「少なくとも、私は『ロリキャラ最高!!』と思っていたけれど。」
「出だしからロリコンキャラ的発言はどうかと思うが。」
「ロリコンじゃないわ。」
「じゃあなんだ。」
「百合コンよ。」
「コンいらないよな!!」
「ならば今から『百合コン!!』のフルコンを目指すとするわ。」
「いかにもゲームの題名にある、みたいにいうな。」
「ところで早婚の苗代君。」
「ある意味それは幸せだな。で、なにか用か?」
それを聞くと、後ろを向き、そこらじゅうに敷き詰められている機械を指差す。
「失望するかもしれないけれど、この沢山の機械、18禁画像をみるためのものではないから。」
「逆に聞くが、もしこれが18禁画像をみるためのものだったらどんだけ18禁画像みるのにどんだけ金かかるんだ!?」
「まぁ今からこの機械の説明でもするわ。」
急に話題変えないでくれないか!?
と、言おうしたがちょっと真面目なモードに入っていたので控えておいた。
「私の卓球の三割は、この機械の力なのよ。」
相変わらず平然と、竹内がいった。
竹内燈浬(以後燈浬)「さて、卓球基本用語講座をはじめましょう。」
安川史(以後史)「燈浬んテンション低いぞー!!」
燈浬「『燈浬ん』……友達じゃないんですよ。呼び捨ては構わないですけれど。」
史「よしならば、燈浬んは私に対してタメ口でいいから、私は燈浬ちゃんを『燈浬ん』って呼ぶね。」
燈浬「……了承したわ。」
史「おおっ、いいのか!!」
燈浬(以後燈浬ん)「そのかわり、悪ぐ……タメ口であなたとは話させていただくわね。」
史「ドーンとこい!!」
燈浬ん「胸を強調しないで。吏先輩。」
史「吏先輩って……、タメ口なら先輩なんてつけなくていいよ、燈浬ん後輩!!」
燈浬ん「予想に反したツッコミをしてくれないでくれないかしら。そこは、『吏』だと線が一本多いことを―――――」
史「とりあえず、前回に続いて全力全開ででラバーの用語講座といこーっ!!」
燈浬ん「…………」
史「まずは粒高だね。頼んだぞ燈浬ん後輩。」
燈浬ん「粒高とは、スポンジのついている粒高ラバーと、ついていない粒高一枚ラバーをさすわ。表ソフトラバーよりも粒がさらに高く、細いのが特徴なのだけれど、表ソフト以上に自分で回転を与えるのは難しいわ。まぁ相手の回転の影響も受けにくいという意味でもあるけれど。 注意してほしいのは、相手の回転を利用したり、そのまま残して返球することが可能という独特な性能があることかしら。」
史「そんな独特な性能のせいで、使ってる人は嫌われやすいんだよねー!!」
燈浬ん「確かに、やりにくい相手ではある。決定的な弱点もある。」
史「そこら辺は重要だから本編で説明しよーではないか!!」
燈浬ん「はしょっただけにもおもえるけれど。次はアンチラバーの―――」
史「なっ!!私は三分間しか動けないことを忘れていた!!」
燈浬ん「いつからあなたはウルトラマンになったのかしら。」
史「私の胸の鼓動が点滅し始めた!?」
燈浬ん「点滅していなかったほうが危ういのだけれど。」
史「と、いうことでさらばだっ!!」
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