卓球部、入部してくれませんか?
「だけど、何だって……何だって僕が!?」
「さっきもいったでしょう、あなただからこそ、ですよ。苗代弘御君
私はあなたを強くしてみせる。あなたならきっと、私達のエースになれる。だから―――卓球、やりませんか?」
◆◆◆◆◆
明日に公立中学の入学がある。それの準備をしている最中だった時だった。いきなりチャイムがなった。時間は17時ちょっと前。チャイムの音声機能が壊れているので、玄関まで行き、少し扉を開けてみた。
「どなたでしょうか?」
「卓球部、入部してくれませんか?」
いきなりの問い掛けだった。顔さえ見えていないのに。
とりあえずチェーンはつけたまま顔を出す。
女性だった。ストレートでロングの髪の毛に、優等生のような顔立ちをしている。簡単に言えば美人だった。
女性は押し売り商売人の様に、続けた。
「いやー卓球いいですよ。体格の差は、ほぼ関係ないですし。技術力を磨けば、マッチョにも勝てる。そのうえ適度な運動に――――ま、待って、しめないでくださいっっ!!」
むしろ押し売りだった。
一応微妙にまだ開いている。チェーンは一段ときつくしておいたけれど。
「他、当たってください。」
そんなこと、他でやってくれればいいじゃないか。最近、卓球は流行っているのだから。今では卓球は野球を越える人気スポーツであるんだ。
それに、よりによって卓球なんて……。
しかし、次の言葉で僕は固まった。
「あなたじゃなければならないんです。小学五年生の時、元全日本卓球選手権大会ジュニア小学生以下の部優勝者にして、前代未聞のダークホースだった苗代弘御君。」
少々のストレスを感じた。
……まだ、そんなことを言う人がいたんだ。
「残念だけど、それは今僕じゃない。僕はこうつ―――――」
「交通事故にあったのですよね。優勝後の帰り道、不運にも交通事故にあい、その時に家族は死亡した。運悪く苗代弘御君は、一人だけ生きていた。半年間の昏睡からの奇跡の目覚めだった。しかし、記憶を完全になくしていた――――でしたよね。」
僕に被せるように、悲しそうに、そういった。
女性は続ける。
「あまりに急に現れ、ジュニアの部で優勝し、突然の交通事故に倒れた。君は、半年間の空白により、世間から注目も浴びずに今、両親の遺産で過ごしている。
そんな君が私の卓球部に必要なんです。」
僕は驚きを隠せずにいた。
なんで、そんなに、この人は僕について……。
「私、決勝であなたに負けたんです。小六でした。あれが悔しくて悔しくて、なのにリベンジはできなくて、いやだったんです。だから、あなたに強くなって帰ってきて欲しい。」
まるで、心を読んだかのごとくそういった。
「だけど、何だって……何だって僕が!?」
もう卓球の力なんて全くない僕が、卓球をやっても利益なんてないのは確実だ。
「さっきもいったでしょう、あなただからこそ、ですよ。苗代弘御君
私はあなたを強くしてみせる。」
あなたならきっと、私達のエースになれる。だから―――卓球、やりませんか?」
「…………。」
正直に言うと嫌だった。
僕だって、記憶喪失後に卓球を全くしたことがないわけではなかった。しかし、卓球やっても、楽しくなんてなかった。むしろ、何故か失望感に襲われていた。
だけど、
「考えて……見るよ」
人の厚意を棒に振るのは嫌だ。
そんな気持ちから、中途半端な回答をする。
「なら、明日入部するなら卓球部室に来て下さい。その時に答えを聞かせてくださいね。」
そういって、去ろうとする。しかし立ち止まる。
「あと、卓球部員は広めのデパートの部屋が設けられるので。勿論無料、ですよ」
「デパート?ただの公立学校にそんなお金なんて。」
そう言うと、ふふっ、と笑い声がする。
「私のお金で買いました。」
私のお金で、って……
「それでは、また明日。」
「あ、ちょっと待って。」
呼び止める。聞き忘れていたことがあった。
「なんですか。」
「君の名前は……。」
ああ、と女性が呟く。
「瀬永真広といいます。それでは。」
その言葉と、去っていく足音をきき、僕は完全にドアをしめた。
瀬永真広さんのーーー!!卓球講座!!
基本用語からですよね?
ならまずはラケットから。
シェークハンド――主に『シェーク』と呼ばれています。鮫ではありませんよ?
手で握手する様に握るタイプのラケットです。両面にラバーを貼って使用出来ます。
初心者からも上級者からも人気が高いラケットですね。
ペンホルダー―――主に『ペン』と呼ばれています。ペンを持つように握るタイプのラケットです。沢山の種類があるのですが、大方、片面のみラバーがある日本式ペンホルダーのことをさします。
初心者には向かないとよくいわれます。
ちなみにこの『ペン』の意味は『ペンギン』の『ペン』です―――――嘘です。
反転式ペン―――主に反転ペンと呼ばれています。両面にラバーを貼れるようになっているタイプのペンホルダーですね。
使っている人はまず見かけないですね。
他にももう少しラケットはあるのですが、このくらいにしておきましょう。
Wikipedia参照