呑まれた日 ④
あの夜から三日が過ぎた。逆に言えばあれだけ発破をかけられて三日も悩んでいるという事になる。
しかし、どちらかと言えばその悩みは最終確認のようなものだ。
「……なぁディー」
珍しく出没した狂獣を軍人や傭兵と共に囲んで殺した帰り道。瓦礫の上で不味い肉を食いつつ二人は馬鹿話や『未踏山脈』と名づけた術式の改良として、近づいた敵に槍を出すにはどうするかと術式構成の話をしている最中。
「あんだよ」
「お前、貧乳が好きなのか?」
ブッと噴出し咳き込む背中を叩きながらニアスは笑う。
問われた本人は顔を赤くして、口を開いては閉じてを繰り返し、もう一度口の中に肉を入れてからよく噛んで飲み込み。言う。
「馬鹿じゃねぇの! 俺は、アレだ。好きになった女の胸なら何でもいいっつーの!」
「そりゃだろうなぁ。うし、どうせだ。喧嘩しようぜ」
「……俺とお前じゃ、決着つかねぇよ」
二人の実力差はほぼないに等しい。手数を多くして無理やり攻撃を繰り出すディーと、一回一回の攻撃を身長に行なうニアス。
術式の適正も真逆。そのため二人で組めば大抵の敵には対応できる。
だが二人が争うとなると、どちらも互いにある癖を知っているため、決着が付かない。
一度は朝から晩まで続いたこともあるぐらいだ。
「つーかよ。お前が何か悩んでのは知ってるんだっつーの。俺ぁお前にとってそんなに信用ならねぇ男かよ」
ふて腐れるように頬を膨らませるディーを見ながらニアスは、愉快そうに笑った。
それでディーは気づく。挑発をされたことに。
「……喧嘩売ってんのかてめぇ!」
「売ってんだっつーの。けど、悪ぃ悪ぃ。別に信用してねぇわけじゃねぇよ。ただ、何だ。……お前と喧嘩できるのももう終いだと思ってよ」
苦笑気味に言う表情は真剣だ。
遠まわしながら告げれた言葉の意味。まだ子供だが、それでも付き合いの長いニアスの言葉だ。
「……やっと決めたのかよ。それはそれで寂しいけどな」
進行の時から共に育った仲で。軍人から術式を教えてもらい、切磋琢磨した戦友でもあり。一緒に長い時を過ごしてきた家族。
前を歩いていた友人が、もっと先を駆けていく。その事を同じ男として僅かに悔しいと思い。同時に寂しいとも感じる。
選んだ道が少しだけ違う、それだけの話だ。それだけの話だが。
「ああ。お前なら安心してアイツらを任せられるしな。……行ってくるぜ」
南の首都へ行く獣車が出るのが明後日。あの勧誘文は獣車の代金を免除する証書だ。
首都へ行けばそのまま軍へと入隊し訓練を行なうだろう。長く続くのは確かで、更にどこへ配属されるのかはわからない。
ともすれば王都や東北部へ行く可能性もある。それでも、ニアスは選んだ。
大切な友人を見捨てるのではなく、信用することを。
「へ。言われるまでもねぇや。お前がいないうちに俺らが付き合ってたら祝福しろよな」
寂しさはある。だがそれ以上に任された喜びも強く。
何より大切な友人の決断だ。それを後押しこそしても足を取るような真似は出来ない。
ハルゲンニアス・ワークの親友、ディーゼット・ルクレイムとして。
「つっても、すぐに戻ってくるかもしれねぇぜ? 部隊長としてな。その時は、お前の推薦状でも書いてやるから行ってこいよ」
「言ってろ言ってろ。そん時にゃ俺はきっと自警団でも組織してそこの団長になってるさ」
「はは。お前が人を使える立場とか想像できねー!」
「そりゃこっちの台詞だっての!」
互いに軽くどつき合いながら瓦礫の上を歩き、孤児院を目指す。
普段よりもゆっくりとした動きで。今日はともかく、明日は準備で終わりだろう。後は朝早くに出発する獣車に乗って、この都市から離れる。
決して良いとは言えなかった。それでも、思い出と呼べるものがある場所から旅立つ。
「あー。そういや酒のある場所見つけたんだよ」
「アァ? この間とは別のか?」
「おう。狐だからな、鼻ぐらいは効くぜ。そんで。……十年物があるぜ?」
ニヤリと口角を上げる顔は悪巧みを企んでそうな男のものだ。
更に十年物の酒など、滅多に口に出来るものではない。下手をすればこの都市で大喧嘩が発生しかねないほどの上物だ。
思わず口笛を吹きながらニアスはディーの肩を強く叩く。
「ハッハッハ。そいつはいいな。三人で呑むか? それとも二人で呑むか?」
「流石にこの酒はリアには呑ませられねぇよ。二人でこっそり、な?」
肩を組んで笑い合い、酒も飲んでいないのに酔っているような雰囲気を出して二人は笑いながら孤児院に到着し。
「……おいニアス。お前。俺より先に言ったのか?」
「馬鹿野郎。お前より先に誰に言うっつーんだよ」
孤児院ではささやかながらパーティーの準備が行われていた。
鬼族の院長がゆっくりと準備を整え。精一杯、ある限りの材料で作ったであろう料理がテーブルの上に並べられている。
そして、院の外側には『ハルゲンニアスが無事で帰りますように』と小さな垂れ幕のようなものがかかっている。
「あ、ニア兄だー! お帰りお帰り!」
甲高い声をした鬼族の少年が歩いてきた二人に気づき、駆け寄り抱きつく。その姿をみた他の少年少女も同じように声を上げて駆け寄ってきた。
いつも通りといえば、いつも通り。早くに帰ったときには子供たちはディーだろうとニアスだろうと抱きついてくるが。
「なら僕はディー兄に抱きつくー!」「ダメだよー。ダメダメだよー。ディー兄は私のだもんー」「じゃあニアにぃは私の」「やぁだー。にあすにーちゃはあたしのぉ」
今日は先を争うように子供たちが二人に飛びついてくる。
最後に五歳ぐらいの人族の子供は笑いながら近寄り。
「かんげーかいだよ、はる兄ちゃん!」
そう言った。リアを見れば、悪戯が成功した子供のような顔をしており。リアの腰にくっついた五歳ほどの子供も同じような笑みを浮かべ院の前に立つ二人を見ている。
「マジかよ」
「おいやっぱお前話したんじゃないよな?」
「だから言ってねぇって。っかしーな?」
子供らが足によって言い争う中で二人は疑問を顔に浮かべて首を九十度の角度に曲げた。
ニアスは本当に誰にも、先ほどディーに言うまで口になどしていなかったのにこの周到ぶりである。
まるで心を読んだような行い。そして、こんな事を思いつけるのは孤児院の中では一人しかいない。
「リア、なんで……お前らちょっと離れろ。あと服引っ張るな、伸びるっつーの」
「お前も背中登るな。危ないだろ。歩けないからいったん離れろって、な?」
群がる子供たちをはがしながら二人がリアを見れば、手を打って笑っていた。後ろに居る子供も真似をして笑っている。
「おっかしーの。そんな驚いちゃって。ねー? エリアー?」
「うんリアおねえちゃん」
きゃっきゃと騒ぐ二人を横目にしてニアスはとりあえず話せそうな院長へと顔を向けてみるが微かな笑いを返すだけだ。
とはいえ、答えはいらないのだが。
「……おいリアぁ」
「あははは。ニアスの顔みれば、どうするのかぐらいわかるよぉ。ほらほら、二人ともどうせだから手伝って!
「おいなんで俺の送別会を俺がやんなきゃ……いいけどよぉ別に」
「バレバレじゃねぇか……。いや、俺も何か言おうとしてたのぐれぇは気づいてたぜ?」
嘘のような本当のような言い訳をするディーを放っておいて、二人は子供たちと一緒に準備を始める。
僅かばかりの、しかし豪勢な料理。そして子供たちにも飲めるような甘い酒を手に夜はささやかなパーティーを開く。
周囲に居た人も声に釣られそれぞれ食べ物を持ってきて、最後にはもう何を目的とした宴会がわからないような騒ぎになった。
こんな場所だ。楽しいことには皆、加わりたいのだろう。
自警団の男が一発芸を披露してブーイングを買い。子供たちが皆で覚えた子守唄を歌ってみたり。昔は語り部なんて仕事をしていたという老人が物語りを聞かせたり。
中には演舞と称した喧嘩を始める者も居た。
それでも、決して悲しみなどないように皆は笑う。いや、あの時を忘れようとしているのだ。
あの時に起こった出来事は平等に傷跡を残したのだから。それを一日でも夢に見ないように、悪夢を思い出さないようにと。
彼らは今を楽しむ。明日死ぬかもしれない命。ならばとばかりに、今を生きる証をここに居る者たちの記憶に刻むように。
子供たちが眠りについた後も大人たちは騒がしく歌って踊って食べて殴り合っていた。
その様子を瓦礫の上からニアスとリアとディーの三人が眺めながら酒を呑む。
「楽しいね」
「こういう騒がしいのは嫌いなんじゃねぇの?」
「細かい事はいいじゃんか。今が楽しければよ」
酒を喉が通る。上物と言うだけあり、喉ざわりがいい。僅かな酸味は本来の香りを引き立てる。
ツマミがあれば更に良かっただろうが、残念ながらここにないのが悔やまれるといったところか。
「何年ぐらいかかるのかなぁ」
ぼーっと呟くリアの言葉に二人は答える言葉を持たない。持たないが、それでも。
「ニアスならすぐ戻ってこれるだろ。こいつ、戦いに関しちゃ異様に鼻がいいしな」
実力はまだまだと言ってもいい。それでも、稀に光るものがある。
「わかんねぇよ。短くても五年、長けりゃ十年ぐれぇじゃないか?」
五年後、十年後。その姿を想像できるほど三人は人生を重ねていない。
今と変わらないのか。変わっているのか。
変わっているとしたらどう変わっているのか。
想像は出来る。想像の中だけならば自由だ。しかし現実は、全くわからない。
未来の中ではニアスは軍から抜けて、早く帰ってくるかもしれない。ディーとリアが付き合っているのかもしれない。もしかするとリアがニアスを選ぶかもしれない。
何もかもがわからないままに、全ては無限の可能性を持つ。
「……どうなってるんだろうな」
「俺は、今より強くなってるな」
「ディーより強くなってるのは確実だろうな」
「ア? やるか!?」
「……男の子って馬鹿だよねー」
三人は話し合う。思い出を。三人で過ごした色あせることのない、辛く、厳しく、それでも忘れない過去を。
この七年間を共に過ごした仲間として。親友として。家族として。
喉が枯れるほど話しをして。それでもまだ話し足りないと三人が三人とも思う。
もう会えないなんて事はないはずだが。けれど、あの進行を生き抜いたから。
確実に再会が約束されていないことを知っているから。
それでも時間は無慈悲に過ぎて。朝になり、三人とも瓦礫の上で寝てしまい。
会話をしながら荷造りを行なっている最中にニアスは院長へ呼ばれる。
「なんすか?」
どこか気まずそうに頭を掻くのは、仕方がないだろう。あれほど引き止められたというのに結局は行ってしまうのだ。
しかし悪い顔を一切見せず、院長は小さな笑みを見せて鉄貨を十ニ枚、ニアスの手に握らせた。
大人の三月分の給料。ここでそれだけの額は滅多に見られない。いや、そもそも半分は自給自足のようなものだ、不必要ではあるが。
しかし、そんな大金を院長は笑みを見せて渡した。
「な」
「いいんだよ。私のお金だからね。どうにも、使う機会がないんだ。……君のために出来ることはないけれど、どうにか使ってほしい」
門出を祝うように、背を押すように言われた言葉に知らずのうちにニアスの目尻に涙が浮き出る。
引き止めたのを蹴った男に、こうまでしてくれることに。
「……でも、何で」
「君やディーには世話になっているから、恩返しをしたいと思っていたんだ。あの時は引き止めるようなことを言ってしまったが、未来のある子に少しでも援助が出来るなら年寄り冥利に尽きるというものさ」
彼もまた、ニアスの背を押す者の一人。
パッと視界が開けように、ニアスは感じる。
三人で、子供たちだけで生きてきた。そしてここで初めて、大人という存在が大きいということに気づかされる。
都市での生活は厳しいものになるだろう。入軍したてでは周囲に馴染めず、厳しい日々を送るだろう。それを予想しての資金。
「返すのはいつでもいいよ。病気にならないように気をつけて、あと、そうだね。精一杯、やれるだけのことはやってきなさい。ここいつでも君の帰りを待っているよ」
涙を決して見せぬよう我慢しながら服で目元をこすり、ニアスは満面の笑みを浮かべて言った。
「金貨にして返してやりますよ。待っててくださいね、院長。アイツらああ見えてそそっかしいこともありますし。ま、面倒みてやってください」
笑顔で託された言葉に、院長もまた柔和な微笑みで頷きを返す。
「ああ。うん。出来る限りは頑張ってみるよ」
そしてニアスはこの街から出て行く。別れは済ませた。それでも見送る影は二つ。
孤児院の外に出てリアとディーは声を出さずに手を大きく振る。
二人を背にしてハルゲンニアスは街の外へと飛び出す。
そして、彼は生涯忘れないだろう。宴を行なった日のことを、二人と語り合った日のことを。院長から鉄貨を貰った日のことを。
決して。
そして、二年が過ぎた。
「ったく。……一年で終わらせりゃ格好もついたんだがなぁ」
軍へ入り、怒涛の勢いで訓練を終わらせた風雲児。若手の中で最も期待される少年。
また南部でも最年少で指揮官として任命された男としてニアスは有名になっていた。
王国最年少と呼ばれないのは王領に居るリーゼ・アランダムという少年とユーファ・ネルカネルラという少女が居たためだが。
しかしそれでも、ニアスは約束よりも、いや予定よりも三年早く都市に戻ることが出来た。
軍としてはきな臭いことになっていた帝国への警戒を行なうために首都に居てほしかったのだが。ニアスの強い希望と、他の都市への面目を立てるために送られることとなったのだ。
「二年ぶりか。この道を歩くの懐かしいね」
時はすでに深夜。前の村からわざわざ全速力で走ってきたためだ。子供のように高鳴る鼓動。それはあの二人に再会できるだけではない。孤児院の子供たち、そして院長への礼。
全てを行なうためにというのも理由であり。
何より、故郷だ。遠めから復興具合はだいたい理解することが出来る。
暗視を可能する術式と遠距離を見るための術式を使えば、城壁はすでに形も大分取り戻している。
「アイツら驚くだろうなぁ」
手紙には、三日後が予定日と書いていたが悪戯心を出してニアスはそれよりもかなり早く到着してみた。道中でかなりの無茶を行なったものの疲労の色は全く見えない。
それだけで戻ってくることをどれだけ楽しみにしていたのかがわかるというものだ。
最初はゆっくりとした歩みだった足取りも次第に気持ちが抑えきれなくなったのか駆け足に。最後には術式を使ってまで疾走するほどとなり。
城壁に到着した時には肩で息をするほどとなっていた。
「……な、なんだ? こんな夜更けに?」
番をしていた兵が怪訝そうにニアスへと剣を突きつける。盗賊にしては無防備。獣から逃げてきたには緊張感の無い顔。
不審がられるのも当然と言えば当然か。
「はぁ、はぁ。俺は、アレだ。ここの、五番孤児院の、ハルゲンニアス・ワーク、だ。つーかアンタ俺のこと知ってるだろ?」
「……あぁ、ディーが居るところの、お前か。……二年で大分成長したなぁ。それでどうしたんだ? 軍を辞めたのか?」
僅か二年で指揮官として抜擢されたとは考えられなかったのだろう。
誇らしげに首元の階級を見せ付けると番をしていた兵は驚き、眼をこすり、もう一度見た。
「……お前凄かったんだなぁ。ああ、入るなら勝手に入れ。お前を拒否する兵なんか、新人くらいだしな。……というか一応上官になるのか……? お前に敬語を使うのは気が乗らんなぁ」
「別に気にしねぇって。俺とアンタらの仲だしな。んじゃ、中入るぜ。あいつらに早く会いてぇんだ」
「ああ、まぁ孤児院の方が寝てると思うがな。ルコリアスちゃんも大分可愛くなってなぁ。俺らにとっちゃ娘みたいなもんだが、若い連中はあの子にお熱だよ。どうにか諦めさせてやってくれ」
「俺に言われてもねぇ」
笑いながら、二人の成長に胸を躍らせてニアスは駆ける。道が作られるほど整備された北側。すでに小さいながらも店が建ち並んでいる。
南側はおそらくまだ瓦礫はあるだろうが二年で復興作業が急いで進められたのだと言うことがわかった。
記憶の中にある地図と今の道を照らし合わせ、おそらく近道だろう路地に足を踏み入れう。
軽い足取り。歓迎を開くだろうから、金は全て出そうと考えながら進む。
持ってきた荷物の中には酒やツマミ、子供たちが喜びそうな菓子や玩具など。軍に居る間に貯めた金でなるべく多く買った。
「……ディーはまだ、全然進んでねぇのかねぇ」
月に一度だけ出して返ってくる手紙には全員の近況が書かれていたものの二人の仲について言及しているものは一つもなかった。
ならば二人の仲は全く進展していないか、完全に恋人となっているかのどちらかだろう。
驚かせるつもりで言わないならそれもよく、まだ進んでいないのならばそれでもいい。
まだなら後押しをしてやろうと抑えきれない笑顔を見せて歩んだ路地裏を歩んだニアスは、気づかない。
暗い道に倒れている障害に気づかない。
だから足をかけて転び、手に何かがつく。いや、何かというのはわかる。軍の生活で、進行の後で、進行の最中で見慣れて嗅ぎなれたものだ。
「……あ?」
血の臭い。流れて冷たくなった血の臭いだ。
何なのかを確認しようと術式を使い暗闇を、足に引っかかった何かを見る。
「…………あ?」
思考は冷静にそれがなんなのかを告げる。
狐族の、青年の死体だ。いや、幼さが残る顔からして少年と形容してもいいかもしれない。
「………………あ?」
髪の色は白。伸ばしているのか、背中までの長さだ。意識外から攻撃されたのか、抵抗しようとした痕跡は見られない。
初撃で胸と頭を同時に刺されたのだろう。額には短剣が一本。胸には長剣が一本突き刺さっている。
的確な手際で、まるで刺されることなど予期していなかったように顔は驚愕に彩られいた。
倒れている人物が誰なのかをニアスは知っている。とてもよく知っている。
七年も共に居たのだ。たった二年を会わなかっただけで忘れるはずがない。笑顔も声も戦い方も何もかもを思い出せる。
近寄って、触る。身体は僅かに冷たい。それでもまだほんのりと暖かさは残っている。生きているのかもしれない、と混乱した頭で掠れた笑いを漏らし。
「おい、ディー。何してんだよ」
冷静な頭は、すでに死んでいると結論を出した。




