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大陸記~王国騒乱~  作者: 龍太
二章 道化師団
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番外 彼女たちが酒を呑むようです

内容は本編とは関係ありません

「死ぬの?」

「私は自然な流れを伝えただけなのだけれどね、やりあうのなら容赦はしないわよ」

「せ、聖将軍様! と、止めてください!」

「大丈夫ですよ。師匠たちが喧嘩した時みたいに、地形が変わることはないでしょ?」

「……そろそろお開きにするべきじゃないかしら……?」


 不肖、双子の妹にしてリーゼ隊長の護衛をやってる私です。

 こうなった経緯を簡単に言いますと。

 副将軍であるユーファ様にリーゼ隊長が私の指揮について訓練させようとする。互いに親睦を深めるためにお酒を呑むことになる。聖将軍様がリベイラさんやダラングさんを連れてこいと言う。

 結果、現状に繋がったわけです。

 ちなみに兄の方は六軍に訓練へ行かされました。隊長のコネは本当よくわからないです。


「いいでしょう。私が結婚できないと言うのなら、その証拠を見せなさい」


 顔を真っ赤にしてるユーファ様は、怒りなのか酒なのか凄いわからないです。いつもは凛々しいのに、何でこうなっているんですか。


「証拠も何も。五軍で男と出会えるのかって話もあるし、そもそも副将軍だと厳しいでしょう? なら隊長さんが手ごろでいいと思うけど貴女は自然に彼を嫌っているほうでしょうしね」


 論理的と言うか。納得は出来ますね……。だから私も親衛隊に居た身ですし。

 あー。というかユーファ様は気にしていたんですね。貴族位もあるらしいですし、仕方ないのかもしれませんけど。

 その点私なんかは楽ですねぇ。あと十年ぐらい軍で暮らして、後は村にでも帰って……。


「あの、リベイラさんー。八軍って結婚とかしてもいいんでしょうか?」

「そうね。軍内部ならいいんじゃないかしら。一般人とは認められないと思うわよ。機密もあるし」

「結婚するんですか?」


 聖将軍様可愛いです。顔を赤くしてるところとか抱きしめたいです。軍でも一、二位を争うほどの人気なのも納得ですよ!

 ただ、一緒の部屋に居るだけで緊張が凄いですけど。


「い、いいえー。出来るのかなーって気になって」

「何? 貴女も私に結婚が無理だって言うの?」


 ユーファ様、お願いです。お願いですから据わった目で私を見ないで下さい。


「ひ、一言も言ってないです! それに、ユーファ様なら美人だし憧れてる人も多いですよ!」


 顔の怪我とかはありますけど、私から見たらそれでも十分なぐらい格好いい美人です。

 男の人からも人気高いと思うんですけど。前に居た親衛隊でも『聖将軍か、蒼騎士か、覇壁か。彼女に出来るなら誰にする』みたいなことやってましたし。

 あの時にいた人たちもう居ませんが。


「自然に厳しいでしょう。……聖将軍は無理ではないでしょうけど、体型としてみると厳しいんじゃない?」

「そうですねぇ。私はあまり、そういう意味で男性に好意的に見られるとは思いませんね。やっぱり女性は胸と背がないと。リベイラさんは大きいですけどどうなんですか? 触ってもいいですか?」


 聖将軍、聞く前に触ってます。……柔らかそうだなー。どのくらいあるんだろう。

 下着とか特注なんだろうなぁ。


「……何? ユーファさんも触る?」

「何を食べればそこまで大きくなるんですか?」


 真顔で何を言ってるんですかユーファ様ぁ……。いつもの凛々しい姿はどうしたって言うんですか……。


「胸を大きくするには揉むと良いというけど。……身体変化で大きくすればいいんじゃないかしら?」

「そこまでして大きくするのはどうかと思いますけど。……それに、バレますし」


 その手があったかって顔をしたユーファ様を止めるために言う。

 ……ていうか落ち込まないで下さいよ。それに身体変化まで使って大きくしてもどうせ戦闘には邪魔にしかならないでしょうしどこから余剰分の肉を用意するつもりですか……。

 突っ込みどころしかない場所です。でもまだ、まだ大丈夫。私頑張れ。

 全員がまだ少ししか酔ってない状態でこれだけど頑張れ私。


「ああ。そういえば商店街に出たときなんだけど」

「え。出てもいいんですか?」

「隊長の許可が降りればね。貴女たち双子もそろそろ平気じゃないかしら。それで、いい医療器具がおいてある店があったわ。武具屋だけど短剣とかも良質のが揃ってたわよ」


 え。あ、いえ。確かに軍人ならそういう話が普通ですけど。あれ。でも前に女仲間と飲んだ時はもうちょっと服とかの話になったような。


「それなら歓楽街にもいい店があったわ。自然と見つかり難い場所だけど。狂獣の革鎧を上手く作ってる店があったわね。陣を刻めば使いやすいと思うわ」

「ですが、エーリカル商店以上ではないんじゃないですか? あそこはやはり大手というのもあって品質がよいですよ」

「けれど値段を考えると高いですからね。ユシナ様は武器が武器ですからあまり気にしないと思いますが、手入の手間を考えると個人商店の方が楽ではありますよ?」


 ……華のない話ですね。いえ、ですがこれが普通なら、なるべく私も。


「手入と言えば肌の手入はどうしているの? 二人とも術式を使っているにしてはやけに綺麗だけれど?」

「不自然なほどにね。連日仕事をしている割には肌触りもいいわね」


 ん? あれ? んん? あ、でも女性的といえば女性的な話題転換かなぁ?


「私は代謝を活性化させる系統を使ってますよー」

「え、そっちを使っているんですか? やめた方がいいですよ。アレは将来的に肌が荒れる要因になりますし」

「ですね。私は、夜の間は光術で明るくして、眠るときに身体系と精神系で休息を取るようにしているわ」


 他の人も頷いてますし、もしかして私は少数派ですか? いえ、でも眠りながら術式を使うって普通はできませんよ。……これが一流と二流の差ですか!


「あ。ちなみに私は征剣の効果で自動再生するので余り気を遣ったことがないです」


 ……マネできないですね、それ。

 流石に肌のためだけに欲しいとは思いませんし、持ったほうが心労溜まりそうですけど。


「蛇の槍に術力でも流し続ければ同じ効果を得られそうだけど、そこまでする意味は自然にないわね」

「私もそこまでして肌を保ちたくはないわ。しかも肌を保つのは男のためでないのがね」


 リベイラさんが苦笑気味に言いますが、確かにそれは納得ですね。

 五軍も同じなのかお二人が頷いた。五軍は、顕著でしょうね。基本的には用でもない限り男子禁制らしいですし。

 いえ、用がないから禁制に見えるだけなんですっけ。


「うーん。皆さんは誰かいい人は居ますか? 私はそういう人が居ないんですが」


 すると、皆さん顔を突き合わせて難しい顔になりました。

 ……いえ、言いたいことはわかりますけどね。


「……ディルは、自然と子供みたいでダメね。顔は見れないことはないけど」

「ハルもそうかしら。というより彼は普段からだらしないのよね。家事はするけど仕事はしない男よアレ」

「リーゼは……まだ考えられる方だけど女よりも仕事を取る男だから無理でしょうね」

「そう、ですね。ヒロムテルンさんは、なんか子供みたいで可愛らしいですよね。私はお付き合いする気になれませんけれど」


 容赦ないですねこの人たち。


「シルベスト将軍は、顔はいいですよね。最初見た時は女の人とか思っちゃいました。お付き合いとかは考えられませんけど」


 いい意味でも悪い意味でも。将軍位まで登った人は常人と感性違いそうですし。ヒロムテルンさんとかは格好いいと思うんですけど、やっぱり性格が受け付けませんねー。


「特務の男は皆性格に問題がもの、仕方がないわ。けれど他の部隊や軍とも関わりがないのが厳しいわね。……それ以前に私たちも少しばかり性格に問題はあるし」

「いや、私はないわよ?」

「思うのだけれど、副将軍になれる人物がまともだったら自然に王国はおかしいという結論が出てしまうのではないかしら……?」


 直球ですねダラングさん。私もすごい同感ですけど。


「いいえ。ユーファさんはまともです。可愛いですし」


 あ、この人大分酔ってますね。


「ええ。私はまともよ? ユシナ様もそう言ってるし」

「……まぁ、そうならいいんじゃないかしら」

「自然な成り行きね。……あら、樽が空だわ。そこのもう一つ取ってくれない?」

「あ、はーい。……でもこれで四樽目ですけど。大丈夫ですか?」


 私は全然飲んでませんけど。ええと。この人たち平均して一人一樽開けてますよ。

 一流の術士は酒に強いものなんですかね……。


「とりあえず、思うのだけれど。ダラングは女が好きなの?」

「男も女も大丈夫なだけよ。ああ、貴女も私は受け入れるわよ?」

「私は普通に男が好きです」


 …………あ。ダメだこれ。よく見るとダラングさん、頬が少し赤い。リベイラさんも微妙に目が胡乱だ。


「女同士ってあまり居ないわよね。あ、でも大隊長はこの間、なんか連れ込んでたわね」

「あ、そうなんですか? 確かに私も『女性に興味がありますか?』って聞かれたことあります」


 怖いのはこの人たち、酔ってるのに平然と会話できてることですね。……できてるのかなぁ。話半分で言いたいこと言ってるだけな気がしてくるよぉ。


「下手な男に手を出して変な病気を貰うのを考えると女性同士の方がまだマシだと思うわ。医術士的にはね」


 いらない知識を仕入れてしまいそうです。

 リーゼ隊長助けてくれないかなぁ。……無理だろうなぁ……。

 うーん。朝が開けるまでに皆寝てくれないかなぁ。



 そんな願いも空しく。朝が開けても、というより太陽が中天に昇るまで女性陣たちの飲み会は密かに騒がしく、男たちへの愚痴と文句を肴に進んでいくのであった。


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